61. 仲間
良い天気だ。潮の風も心地よい。わたくしは船の甲板へ立ち、小さくなっていくペチェア島を眺めていた。ふと、この島へ来た時のことを思い出す。王都から追放されたけど開放感に満ち溢れていたあの時を。
でも、今は逆だ。何故王都へ行かなければならないのか理由が分からない。不安しかなかった。
「アニエス、何も心配はない」
「監視官殿。教えてはくれないのですね」
「殿下が何とかするさ」
ジェラール様は一足先に緊急の専用船で出航していた。滅多にないことらしい。
よっぽどの事態だと予測されるけど、わたくしがそれにどう関わってるのか、誰も教えてくれない。
「ところで……何でお前も居るんだ?」
「えっ?僕ですか?」
「バルナバ、それにコリンヌ」
「い、いやあ。僕はアニエス様の監視役なんで。あ、コリンヌは使用人ですから」
「ったく、屋敷にはソフィアしか居ないじゃないか。無用心だろう」
「ソフィアも誘ったけど牧場があるからって。あ、それでべロムや女将や院長にも頼んでおいたから大丈夫かと」
「ふん。まあ仕方ない。アニエスは不安だろうから側に居てやれ」
「監視殿。どうしてアニエス様が……」
「だから、心配するなって!形だけだ。宮廷のゲストルームから出ることはない!」
「き、宮廷!?」
「バルナバ、頼んだぞ。次官の配下が護衛してるから彼らと連携するんだ。島へ戻るタイミングも教えてもらえ」
「……は?連携って?一体何が始まるのですか?」
「知らんでいい。それとベルティーユ、細々とした用事を頼む。お前は王都に詳しいからな」
「かしこまりました、ブリス様」
──と、そんな会話が聞こえたけど不安が増すばかり。でも「知らなくてもいい」というのは彼の優しさだと感じていた。
「僕は一度しか王都へ行ったことがない。だから右も左も分からないな。コリンヌもだろう?」
「私は初めてです。お役に立つか……」
「大丈夫よ。側に居てくれるだけで、わたくしは安心するの」
ほんとにそう思った。先日のカリーヌを見たことが頭をよぎる。ケヴィン様の冷酷な眼差しを思い出す。悲しみに打ちひしがれたお母様、落胆したお父様。罪人で勘当されたわたくしは辛い思い出しかない王都へ、たった一人で放り込まれる自信はなかった。
わたくしは一人じゃない……!
そう自分に言い聞かせ鼓舞した。
やがて、定期船は大きな港へ着船する。三ヶ月ぶりの王都だ。
「うわーー!」
「すっごーい!大都会ねー!」
バルナバさんとコリンヌはわたくしに引っ付いて、キョロキョロと落ち着きがない。そんな姿を薄唇さんが嗜める。
「お、おい、観光じゃないぞ。ったく!」
まあ、いいじゃない……。
思わずココロの中で笑顔になった。複雑な心境だけど、わたくしも久しぶりの王都に何故か不安より懐かしさが止まらない。
何が起こるか分からないけど、わたくしには信頼できる仲間が居る。頑張らなくては!




