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27. 報告

 ※ジェラール視点


 似合うかな……。


 アニエスの編んだセーターを着て、鏡に写る自分を見ていた。心なしか笑顔になってるのに気がつき、慌てて目を逸らす。


 コン、コン。


 いかん、バルナバだ。脱いで隠す時間はないぞ。


 仕方なくサッと上着を羽織り、何事もない素振りでチェアーに座る。


「どうぞ」


 ガチャっと扉が開く。


「あ、殿下!セーター着てるう!」

「はっ?」


 な、何だこいつ。一番突かれたくないことを第一声で言うか?しかも声高らかにっ!?


「上着を着ても胸元から丸見えですからねー」


 全く、デリカシーのないヤツだ。くそっ、スルーしよう。


「……で、報告か?」

「はい。アニエス牧場の件です」

「牧場?確かにニワトリと羊を飼ってるよな」

「ええ、そう言う名称になりまして。それで放羊犬にコーギーを連れて行こうと思いますが」

「まあ、良いだろう。子供が喜ぶ」

「流石は殿下!良く分かってらっしゃる!」


 いやにニコニコしてるな。何かおねだりの雰囲気を感じるぞ。


「そこで、殿下にお願いがございます」


 やはりきたか。


「何だ」

「はい。アニエス牧場は、孤児院の課外授業の場でもあります。しかしながら人手が少々足りません」

「なるほど」

「今後、畑を開拓する予定もあり、使用人をもう一名お付けしたいのです」

「ふむ」


 クルッとチェアーを反転させ、私は考察する。


「つまり、牧場専用の使用人が欲しいと?」

「そう……ですね。アニエス様はコリンヌと漁港や食堂に行きますから。普段、牧場や畑の世話をする人が望ましいです」


 私はあることを思い出した。


「バルナバ。この前、良いこと言ったな」

「何の話ですか?」

「囚人との面談だ。そろそろ出獄する囚人で、牧場や農場の才のある人をピックアップしたらどうだ?勿論、私も面談しよう」

「あ……そっか。でも良い人いますかね?」

「ビソンに聞いといてやる」

「はい。では、使用人の増員はオッケーですね?」

「良いだろう」

「ありがとうございます!あ、殿下、セーター着てること、アニエス様に報告しときますからね!」

「い、いや、それは言わなくてもよい」

「いいえ!絶対に言います!絶対に!はい!」


 やれやれ、困ったヤツだ。


「……で、他に報告は?」

「いえ。特に」


 ん?そういえば今日はブリスの悪口言わないな。気になる。聞きたくはないが一応……。


「監視官はどうだ?」

「あ、薄唇殿ですか。アイツ、やっとこの島の魅力が分かってきたって言うか、まあ、勿論偉そうで腹立ちますけどね。牧場に関しては協力的で助かってますよ」

「そうか。なら、上手くやれそうだな」

「いやー、どうですかねえ。ヤツの心境の変化は島の魅力だけなのかな……暇人だからってのもあるし、やっぱりアニエス様に特別な感情があるのかなあ」


 な、なに!?それは、いかん!


「殿下、一度くらい様子を伺いにいらした方が宜しいのでは?あ、そうだ。ついでにアニエス様とも面談されてはいかがでしょう?」


 私は再びクルッとチェアーを反転させた。顔面を手で覆う。


「バルナバ、すまないが一人にさせてくれ……」


 私だってアニエスと面談したいさ。だが、それにはココロの準備が必要だ。今の自分には、まだムリだろう。


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