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104/105

104. 悪役令嬢

 ※バルナバ視点


「ひっ……」


 リーダーたちから小さな悲鳴の声が聞こえる。


 醜く腫れ上がり、無数の傷跡が残る痛々しいグレース様のご尊顔に僕は言葉が出なかった。だけど彼女が仮面を被ってる理由はこれだったのかと、分かった気がした。


「久しぶりね、カリーヌ」

「ふん。どこへ消えたかと思ってたら」

「島流しになったことは知ってるでしょう」

「まあね。でもまさか監獄に居たなんてね」

「十年ぶりに会えて嬉しいわ」

「あの頃より相当強くなってるでしょ?」

「あら、手加減してるって言いましたけど?」

「くっ……だからあ、そんなの無用だってばーー!」


 カリーヌはふらついた足で正面から突撃していく。


「仕方ないわね」


 あ、いかん。もう勝負あった!やめろーー!


『ゴキィィィィィーーッ!!』


「うげえぇぇっ!」


 グレース様の回し蹴りが見事に決まった。カリーヌの鳩尾(みぞおち)に食い込んでいる。カッっと見開いた彼女の目からは、うっすら悔し涙が滲んでいた。


 そして、そのまま崩れ落ちていくーー。



 *



 数日後、僕はカリーヌの怪我が癒えて元気になったことを報告した。


「殿下、囚人棟の体制を変えることにしました」

「そうか。……で?」

「グレース様とご相談して不在だった一階のボスにカリーヌを。二階はリンダ、三階にライラを配置しました。階の抗争もなくなった様で良かったです」

「それでカリーヌは大人しく過ごしてるのか?」

「はい。連日、グレース様の道場に通って腕を磨いてます。彼女は王女様の言うことは素直に聞く様ですよ。流石は元師匠ですね」

「更生は我が姉に任せば上手くいきそうだな」

「はい。あ、それと昨日……」

「うん、どうした?」

「僕の注意も足りなかったのですが、ブリスの護送中にカリーヌと鉢合わせしちゃいまして……」

「な、なに!?」



 …

 …

 …



 ブリスを連れて独房へ向かう途中のこと。廊下の窓から中庭でランニングしてるカリーヌの姿を見てしまった。


「あ……」


 一瞬、マズいと思ったけど彼は「ふふん」と、鼻で笑ってやり過ごそうとした。でも彼女の方が気づき、物凄い勢いで突進して来た。


「ブリスーー!よくも私の人生を無茶苦茶にしたわねえ!許さないからあ!」

「お、おい、カリーヌ、まあ落ち着け」

「うるさいバルナバ!何でケヴィンを殺したのよ!アンタのせいで王妃になれなかったじゃない!」


 慌てて警護の者が割って入る。ブリスは後ろ手を縄で括られ無防備なのだ。


「ふん。相変わらずおめでたいオンナだ」

「なっ!?どう言う意味よお?」

「死ぬ前に教えといてやる。ケヴィンはお前を捨てようとした。俺に殺すか島で監禁しろと命じたんだ。まあ、殺すのは面倒だからやらなかったがな」

「う、うそよ。馬鹿なこと言わないで!」

「本当の話だ」

「信じるものですか!」

「お前はどっちみち捨てられる運命だった。殿下は知ってるぞ……いつか聞いてみるがいい。じゃあな。悪役令嬢さん」

「う そ だ」


 途方に暮れる彼女を置いてブリスと独房へ向かった。僕は途中、気になって振り返ってみたら……。


「うわーーーーーーん!!」


 と、カリーヌはその場で泣き崩れていた。



 …

 …

 …



「あ、あのな。何も私の名を出さなくても……凄く巻き込まれた気がしてならないが?」

「殿下、彼女はグレース様の元で改心しつつあります。どうか丁寧なご説明をなさってくださいね」

「う、うむ……そうだな。バルナバ、すまないが……」

「はいはい、『一人にしてくれ』ですね。では頼みましたよー!」


 殿下はもう王都へ帰らないといけない。僕がしっかりしなきゃって思うけど、これが最後の甘えだから許してください。……ね!


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