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 どことなく浮き足立った話し合いが終わり、それぞれが帰りの支度を始めた頃、私は勇気を出して誠に話しかけてみることにした。話し合いの間も表情が変わらなかったのを見ていて、私の中の不安も大きくなる。

 

 「誠、ちょっといいかな」

 

 「花ちゃんセンパイ?」

 

 「この後……時間ある?」

 

 「センパイのためなら時間なんていくらでも作るよ〜」

 

 誠からの返事に少し緊張をときながら、二人で部室をあとにする。悟からの視線は感じていたけど、峰川が連れていってくれたのでひとまず邪魔されることはないと思う。

 時間もちょうど良かったので、晩御飯もいっしょに済ませるためにファミレスに入る。

 

 「何食べよ〜。センパイはどうする?」

 

 メニュー表をキラキラした目で見ている誠の表情はいつも通りだった。さっきまでの表情は見間違いだったのではないかと思ってしまうほどだけど、気のせいじゃないはず。

 それぞれ頼んだ料理を食べながら、最近の学校生活で楽しかったことや愚痴を話す。私の愚痴の内容はほとんど峰川だけど。

 

 「せ、誠!」

 

 お互いメインを食べ終わり、残すは飲み物だけになった頃、私はやっと本題に入る勇気が出せた。いつも通りすぎる誠の様子になかなか切り出すことができなかったのだ。

 

 「んー?」

 

 「最近何か悩んでる……?」

 

 出だしは勢いよくいけたのに、最終的には恐る恐るになってしまった。勇気のない自分が本当に嫌になる。

 

 「最近?どうして?」

 

 「えっと……、なんか今日機嫌悪そうだったし、悩んでた感じがしたから……?」

 

 「ははっ、センパイが疑問形になっちゃってどうするの」

 

 「うっ」

 

 どうしたらいいのか分からなくて、焦り出してしまう。前世では悩みを聞いてもらう側だったし、今世では勉強一本で友達なんてほとんどいなかった。こういう時にどう言ったら相手に気持ちが伝わるのか分からない。

 

 「……へへっ、実は悩んでるんだよね、結構」

 

 「──え?」

 

 私が悩んでいる間に誠はサラッと自分の気持ちを言ってしまった。頭の中に浮かんでいた、私がどれだけ誠を心配しているか、今までの感謝の気持ちを込めてお礼をしたいこととか、色々な言葉が浮かんでいたのに、全てが霧散した。

 

 「ほっ、本当に……?」

 

 「うん」

 

 影のある笑顔ではっきりと頷く誠。

 

 「センパイ、聞いてくれる?」

 

 「も、もちろん!」

 

 そこからは一方的に誠が話すだけになった。飲み物だけで長時間居座るのもあれだと思ったので、つまめるようにフライドポテトを追加で注文し、そのフライドポテトを誠が凄い勢いで食べながら。

 

 「ボクだって何か手伝いたいんだよ。でもさ、まだ一年なわけでしょ?ツテなんてあるわけないじゃん。赤原先輩みたいに女の子がほいほい寄ってくるわけでもないし、金剛先輩みたいに頭使うことだってできないよ。新しく入った是澤先輩だっけ?あの人も明らかに頭良さそうだよね。ボクだけだよ?何もできないの。……え?一人忘れてるって?センパイはいいんだよ。センパイが入っただけで部員増えたし。もう一人?……あぁ、いたね。あの女は別に関係ないよ。役に立たなさそうだし。それに部活に大してのやる気も無さそう。それに比べてボクはやる気だってあるよ?でもさ、あとから入ってきた人達がどんどん動いてるの見てると、もどかしくてしょうがないんだよね……」

 

 早口で話す誠の間になんとか入り込むことができたが、呆気なくかわされてしまった。しかもさりげなく峰川に対して酷いことを言ってる。

 私が思っていた以上に、誠の悩みは深刻だったらしい。こんな思いつめたような、どこか拗ねた感じもさせる誠は初めて見た。

 

 「センパイ、何をやったらボクは皆の役に立てる?」

 

 「う、うーん……」

 

 私は少しの間、本気で悩むこととなった。

花愛に「早く何か言えよ!」って思う人が多いかもしれませんが、花愛は色々考えてまだ何も言っていません。何を考えているのかはまた次回に。

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