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今回すごく短いです。
「そ、そんなぁ!!」
「無理なものは無理なの!!」
それから五分ほど尾崎君と戦ったけれど、両者譲らず、お互い叫んでいるに等しい状態になり、息が切れ始めていた。もしかしたら話していることが近くの部活に聞こえているかもしれない。そんなことを心配する余裕がなかった。何が何でも譲れなかった。
「ん〜、じゃあこうしよう!」
「「は?」」
私達の様子を尾崎君の隣に座って見ていた誠が、突然手を叩いた。その突然の行動が理解できず、尾崎君と一緒に誠を見る。そして、私達の様子に何故か満足そうな顔をした誠は、席を立つと、長い袖のせいで見えない腕を上に伸ばし、まるで宣誓するかに言い放つ。
「僕はこれから、夕ちゃんと花ちゃんセンパイの前でしか本性を見せません!」
「「はぁぁぁ〜!?」」
何を言っているのだこいつは。それと、私には本性を見せなくていいです。いつもの可愛い誠でいてください。それに、そんなことで変な特別扱いをされても嬉しくありません。
「誠、もしかして……」
尾崎君は私と違って誠の言いたいことが分かるらしく、恐る恐る誠に声をかける。しかしその内容を認めたくないのか、否定してほしそうな様子だ。
「ふっふふ〜ん♪聞いて驚け!夕ちゃんは僕が気に入った人全員に本性見せてたから大変だったんでしょ?でもね、もう大丈夫!だって、一番のお気に入りが見つかったから!」
なんでそんなに自慢げなんだ。……ん?一番のお気に入り?今まで尾崎君以外にも本性を見せていたということは、一番は尾崎君ではないということで……。
「ま、まさか……!!」
私が思わず出してしまった声に、誠がニヤリと笑って応えた。
「そう、花ちゃんセンパイのことだよ」
「やめてぇぇぇぇっ!!」
私は思わず叫んでいた。尾崎君は私のことをものすごく可哀想な人を見る目で見ている。そんな顔をする前に助けてください。お願いだから。
そんな私達のことを見て笑っている誠の表情は、まさしく悪魔だった。
短くてごめんなさい…。




