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Assassin  作者: 兎鈴
2章 怒りの具現
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14話 残酷な運命

 辺りには、村の警備隊にいた男たちの肉片が転がっていた。血が地面を紅く染め上げ、月明かりに反射して妖しげな雰囲気を作りだしている。


「麓城封鬼、とか言ったな。俺に何の用だ」


 エピは剣を上段に構えた。


「お主の剣を奪いに来たと言っただろう。我はその剣さえ受け取ればお前などどうでもいい。スキルを持たぬただの弱者と戦う気にはなれん」

「笑わせんなよ。弱者だと?少なくとも、見た目で決めるもんじゃ、ねぇよな」


 瞬間、エピの体が掻き消えるように動いた。

 シュッ!という空気が切り裂かれる音と共に、剣が封鬼がいた場所を右から左へと通過する。


「雑魚が」


 後ろから殺気。エピは剣を振った時の遠心力を利用してそのまま前方に跳んだ。距離を取ってから、もう一度封鬼に斬りかかる。

 ガキィンッ!

 火花が飛び散る。エピの斬撃を、属性で強化された短剣がいとも容易く受け止める。


「……一筋縄じゃいかないな。さすが28位」

「黙れ無能が。お主は痛めつけて殺してやろう」


 タンッ!という音がした。その時、エピの持っていた剣が落ちた。力を入れていたエピ本人は当然、前に倒れ込む。


「しまっ」


 ドゴォン!

 強烈な銃声と共に、エピは目を見開いた。背中から下腹部に向けて、熱くなるような感覚がしたと思うと、凄まじい激痛に襲われた。


「さて、お主の剣を奪うことが出来たのだが、残念ながら我は忙しくてな。お主の連れ、吉樹浩二を抹殺スなければならないのだ」

「……ざ…け………んじゃ……ねぇ………ぞッ!」

「さて、そこに隠れてる吉樹浩二よ。出てくるがいい。さもなくば、こいつが死ぬぞ?」


 封鬼は銃を収めると、エピが落とした剣をエピの背中に突き立てた。

 紅剣を持った浩二が物陰から出てくる。それが浩二だと確認した封鬼は、突き立てた剣を思いっきり刺した。

 ザクッ!という音と、月明かりに反射して輝きながら噴き出す鮮血。浩二は目を見開いて、その場で立ち止まった。


「何で……」

「エピ、と言ったな。しばしこの剣に別れを告げるがいい。胸を貫かれたお主にはもう無意味なことだがな」


 そして、封鬼は笑った。

 大声で、腹を抱えながら笑った。

 だが敵の気配を感じ取ったらしく、腰から銃を抜くと、右にある建物の方へ向けて、発砲した。

 あの建物は、ソルとレイが見張ってる場所だ。おそらく彼らが撃たれたのだろうか。


「……さて、吉樹浩二。お主はここで死んで」

「何でだよッ!」


 封鬼の言葉を遮って、浩二は叫ぶ。


「殺す必要のない奴を殺して何が楽しい?お前はァ!!」

「黙れ弱者が!」

「弱者はお前だろうが!」


 その浩二の言葉が、封鬼を怒らせたのかどうかは定かではない。ただ、属性が先ほどより、強くなっているのを見て感じ取れた。


「我に弱者だと?笑わせるな最弱が!この世界の最上部にいる我らの洗礼を受けるがいい!!」


 この時、浩二はスキルを発動させていた。頭の中にあるのは、紅く鋭い剣。だがそれは怒りの感情が混じり、より一層鋭く輝く光となっている。

 そして、浩二はスキルを解放した。

 五感は研ぎ澄まされ、全身に力が漲る。ただ前と違うのは、頭の中に業火が宿っているような感覚がした。それが怒りだと言うことを、浩二は知らなかった。だが、もうどうでもいい。

 ただ目の前の敵を、殺せれば―――。

 紅剣に属性が宿る。白銀の粒子がどこからともなく現れ、荒れ狂うようにして纏わる。


「さぁ、殺るぞ」


 覚悟が決まったその時、封鬼の猛烈な一撃が背後から迫っていた。浩二はそれを知りながらも、冷酷な笑みを浮かべたまま立っていた。

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