彼らのデビュー前の話と、似たもの同士(saidレーゲンボーゲン)*
過去話です。レーゲンボーゲンのデビュー前のお話です。
今日のライブハウスでの出演は終わったところで、メンバーは楽器を片付けている途中だった。
「取材っすか」
「うん、最近、お世話になっている、TVが、うちにも来てね。ライブハウスで活躍している人たちを特集したいらしい。君たち、歌も上手いし、どうかなって思ってね」
嘉隆と遥が出会ったのが、二十歳の時、一緒に行動するようになってすぐに、嘉隆の見た目の華やかさが目を引いたのか、ライブハウスのオーナーに声を掛けられた。
遥は、高校を卒業して、大学に入学してから、このライブハウスを拠点にしてから三年、そんな事は今まで、一度もなかった。一緒にバンドを組んでいたメンバーは嘉隆の見た目で、取材のオファーが来た事を、マイナスではなく、プラスと考えた様で、それを喜んだ。
「チャンスなのかもしれない」
「いいのか」
「何がだ?」
「俺ら、今まで、それなりに見に来る人たちがいた。最近、お前の加入で更に増えた。しかし、はっきり言う、お前の見た目の良さだ。それが、集客に繋がっている。嫉妬してるとかじゃない。それでいいのか、って思ってる」
「それなら、尚更だね、それが、俺の見た目で巡って来たのなら、幸運だな。そのチャンス、掴まなくてどうする」
「真っ直ぐだな、きっと後悔する事になるかもしれない。俺はな、アイドルになりたいんじゃない。純粋に歌が歌いたいんだ」
「俺もだよ、でもさ、どこでも、歌は歌える。ここだって、路上だって。もっと、多くの人に俺たちの歌を聞いてもらいたい。この、チャンスで、俺たちの夢が叶うかもしれないなら、俺はこの顔に生まれて来た事に感謝するよ。つうか、デビュー決まったとかじゃないんだろ。これは、まだ、夢の一歩にしか過ぎない」
「だな、考え過ぎた、すまん」
TV取材後、数ヶ月後に嘉隆と遥はデビューする。バンドは解散してはいない。バンドはレーゲンボーゲンのサポートメンバーとなり、メンバーはそれを了承した。バンドメンバーにとって、これからも一緒に活動出来る事の方が嬉しかったのだ。事務所としては、話題性を狙えるデュオでデビューさせたかった。その頃の芸能界は多くのバンドが活躍しており、違った方向性の歌手が欲しかったようだ。
その配慮に遥は納得していない、そして、嘉隆もまた、遥とバンドメンバーは一体のはずだった。それを壊した様で忍びなかった。だったら、ずっと、このメンバーで活動して行こうと思った。
* * *
麻衣も自分の顔が売れる事を分かっている。ただし、嘉隆とは反対の意味で。嘉隆は自分の顔の良さを理解して、それを利用するそして、麻衣は、少し違う。周りがそうだと言うので、その顔の良さを最大限に利用する。
「お前ら、似ていてちょっと違うのな。育った環境か、それとも性格か」
「どっちかというと、その融通の効かないところ、お前の方が麻衣に似ているんじゃないか。で、何が似ていて、何が似ていないんだ?」
「お前さ、顔の良さ、今でも最大限に利用するよな。それ、麻衣ちゃんも一緒で、ただ、お前の場合、それを理解して、利用している。そんで、自分に自信のない、麻衣ちゃんは、仕事を意識して、自分の本性を隠す様に立ち回って、それを、利用する様になった。そこが違うなって、思ってさ」
「利用出来るものしちゃった方が良いでしょ」
「お前のその考えが腹黒いんだよ、それ、麻衣ちゃん、知ってんのかよ」
「前に言われた。俺の『爽やかイケメン』の前に着いてた『影』要素、分かった気がするって、言われた」
「なら、いいんだ。騙したままじゃ、申し訳ない」
「ならって、なんだ、騙してないって、言ってなかっただけで」
それが、悪いと言わた。まぁ、でも、もう彼女に隠し事はしない。
デビューの一躍を買ったのは嘉隆くんの顔の良さという話。




