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虹の架け橋  作者: 藤井桜
新婚編
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嬉しくない邂逅と、嫉妬する君の甘さ



 私たちは、その日は、普段はあまり、行かない場所に出掛けていた。多くのレコードショップが集まるイベントがあった。それに、用事があったのだ。

 兄から、向こうでは欲しいものが手に入らないという事で、中古市のようなものが開催中なので、足を運んでいた。目的は、ビートルズのレコードだ。レコードプレーヤーは、持っていなかったが、これを見ると欲しくなる。(よし)くんと顔を見合わせて、どうしようか、と呟く。嘉くんも興味を惹かれた様で、プレーヤーの入手は後にして、自分たち様にも買おうか、と言う事になった。

 こう言った、イベントは遥くんも好きそうなので、誘った、でも、用事を済ませてから来る事になったので、少し遅れるらしい。誘って自発的に来たいって言うのは、珍しいので、私たちは顔を見合わせて笑った。



「欲しいの、分かってるの?」

「欲しいものリスト、貰った。それと、今、おすすめ聞いてる」

「見せて、俺も探すよ」

「ありがとう、嘉くんも、好きなの、見ていいからね」

「うん」



 平日なのか人はそれほど、多くはない。本当に、レコード好きが集まっているようだ。中には、CDもちらほらあって、面白い。兄のメモを見ながら、レコードを探して行く。ふと、視線の先にどこかで、見た様な長身を見つけて、表情が嫌なものに変わる。変装しているが、広大(こうだい)くんだ。

 うん、彼もビートルズとか洋楽が好きだ、居てもおかしくない。明らかに油断した。気付かれない様に、通り過ぎようとした。しかし、そう言う時こそ、見つかりやすいものだ。彼は、長い金髪の美女と腕を組んで歩いている。新しい彼女だろうか。


 今日の私は、ワンピースではなく、ベージュのシャツに黒の膨らみのあるスカートに、底の薄いスニーカー姿だ。薄く化粧もしている、なのに、私とバレてすれ違い様に、声を掛けられた。やっぱり、バレるか。帽子も、被ってくるんだった。眼鏡もしていないので、バレれば一瞬だ。



「麻衣じゃん、久し振り、可愛い格好だね」



 隣りの女性は私にあまり嬉しくない視線を送る。ほっといて先に行きたい様子だ。行ってくれて構わないのに。今日の格好では、この女性に営業スマイルと言う訳には行かなそうだ。どうしたものか、思案していると、続けて声を掛けられた。



「俺の事、忘れちゃった? 寂しいなぁ」

城咲(しろさき)さん、お久し振りです。お元気そうですね」



 当たり障りのない台詞にした。あえて、苗字で呼んで、それも、本名の苗字ではなく、芸名の苗字だ。広大くんの城咲と言う苗字は芸名で名前だけ本名だ、もう貴方とは関係ありませんアピールをするが。きっと無理なんだろうな、この人は、空気が読めない。

 今カノの前で、元カノに声掛けるか普通。彼女じゃなくて、妻だったけど。私の頭は冴えている、きっと、嘉くんだったら激昂していただろう。こないだ、歌番組での一幕は聞いている。あの話を聞いて、私怒ったばかりなので、尚更、頭が冷えているんだと思う。



「名前呼びで良いのに、何で、戻ったの、ああ、浅生(あそう)さんがそう言ったのか。昔から、麻衣は素直だったからね」

「ありがとうございます、ついでに言うと、私も浅生なんですけどね」



 不意に後ろから引き寄せられた。こっちも見つかった。元々、人の多くない時間帯なので、言い合いでもしていれば、すぐに気付く。肩に腕を回されて、視線を向けると、やっぱり、怒ってる。今日、ストッパーの遥くん、まだ来ないんだよね。遥くんが来るまで、この状況、落ち着かせたままでいられるかな。

 しかし、予想外の事が起こった。広大くんの彼女、嘉くん見て、嬉しそうな声を上げた。好きになった欲目とかあるのかもしれないけれど、私には広大くんよりも嘉くんの方がカッコいいと思う。

 こんな会話しているし、彼女さんも見た事はないけれど、芸能関係の人なのだろう、私やレーゲンボーゲンを見ても普通の反応だ。ケセラセラのメンバーと付き合ってるんだものね。当たり前か。



「こうちゃんの知り合い? あたしにも紹介してよ」



 ああ、この人ダメなタイプの人だ。嘉くんの好みじゃないのは、見た目で分かる。それでいて、なにより、綾香さんの方が断然、可愛い。派手目なギャルっぽい服は、露出が多めで、胸元が深く開いている。スカートも短い。きらきらしたメイク、吊り目なのは、きっと遥くんの好みじゃない。

 嘉くんの私に回った腕が強くなる。完全に怒ってる。一瞬だけ、その彼女さんを見て、視線を逸らした。その体型も好みじゃないのがよく分かる。



「嘉くん?」

「そう呼ぶんだ、仲良いね」



 それでいて、なんで、煽る事が上手いんだ。私の手が嘉くんの肩に回っている手とは反対の手を握る。少しでも落ち着いて欲しい、そう思っての行動だ。嘉くん、握り返してくれる。言葉が見つからない。そして、嘉くんも分かっているはずだ。ここで、騒ぐ事が迷惑になる事に。だったら、ここから出た方が、良いのかもしれない。



「城咲さん、どうも。俺らぶち仲良しじゃけぇ、愛しい奥さんやからね」

「よ、嘉くん?!」



 完全に怒っているのは、嘉くんが、人前で、広島弁をしゃべり、頬にキスしたからだ。怒鳴る方じゃなくて、いちゃいちゃを見せつける方に移行したらしい。それ、最近、遥くんの前でもそうする事多いから。私は、赤面したまま、動けない。

 広大くんもその彼女さんも驚いた様に固まった。初めて見る私の顔を見て、広大くんは悔しそうに目を逸らした。こんな顔、絶対に広大くんに見せた事ない、そんな顔してると思う。



「おう、こんなところで目立ってどうするんだ」



 遥くんの登場に、みんなの視線がそっちに向けられた。また、おまえかと言う、表情の広大くんと目がハートマークになる彼女さん、男なら誰でも良いのか。嘉くんは、私を離してくれないので、彼女さんは、広大くんから、遥くんにターゲットを変えた様だが、貴女、遥くんの好みでもありません。



「悠兄の買い物、頼まれたんじゃないのか。おつかい、出来なくてどうする」

「そうでした、城咲さん、では」



 また、とは言わなかった。もう、会いたくなかったから。そして、最後に嘉くんが「いね」って呟いた。帰れって意味の広島弁。遥くんは、完全に広大くんたちを無視する事にしたようだ。下手に、反撃すると、無意味な時間だけが過ぎると、こないだ学んだからのようだ。嘉くんの腕が私の肩に回されたままなので、頭を下げる事も出来なかった、それわざとですよね。



「麻衣ちゃんさ、最近、ちゃんと、三食食べて、散歩もしっかり、しているから、ガリガリじゃなくなったじゃん。男装の時は、良いけど、女の子の格好している時は、ちゃんと、女の子していて、きっと、城咲、また君を欲しくなったんじゃない?」

「そうなの?」

「付き合ってた頃ってどうだったの」

「長い髪が邪魔だったので、後ろで縛っていて、普通にTシャツにジーンズかな」



 男装じゃない。仕事では、きちんと可愛らしい恰好をさせられていた。鏡を見る度に違和感あったけれど。でも、プライベートは、化粧もせずに男の子っぽい服装だった。今の方がきちんと女性らしい格好して、お化粧して、多分、あの日、嘉くんがたばこをやめる時にした約束のワンピースを着る事がきっかけだったと思う。

 その前も、変装を意識しての、ワンピースで、全部、莉子さんやスタイリストの美月さん任せだった。でも、あの時を境に全部自分でする。選ぶ服も、化粧も。でも、最近は、嘉くんが選んでくれる事もある。ほら、私、結構、優柔不断だから。でも、家では、昔と変わらないかな。嘉くんも遥くんも何も言わないし。遥くんが来た時は、一応、軽くだけど、化粧はしている。その前までは、化粧水と乳液で終わりだった私がだ。



「それで、何も言われなかったんだ」

「服装はお互い気にしていないね。趣味に全力で…あった!」



 悠兄に頼まれた、レコードをようやく見つけた。それで、なんだっけ? ああ、服装の話だ。ちなみに今日のスカートは嘉くんが選んでくれた。ふんわりして、かわいいのだが、似合っているみたいで良かった。



「それじゃあ、今の麻衣ちゃんと昔の麻衣ちゃん、全然、見た目違うじゃん。仕事用じゃなくて、プライベートの方も」

「そうなるかなぁ。相変わらず、何を着たら良いのか分からなくて、他人任せなのよね」

「今日のは、嘉チョイス?」

「そうだね、こないだ、一緒に買い物しに行った時に選んでもらった」



 私と遥くん、しゃべりながら探しているのに、対して、嘉くんは、黙々と探してくれている。ふと、気付いたんだけど、それを遥くんに確認する、やはり、そうだった。



「あのさ、嘉くんて探し物得意な方?」

「昔から得意だったかもしれない。興味のあるものに対して、全力じゃん」

「探し物も興味の対象?!」



 私たちよりも早く、目的のレコードを探し出してくれたらしい。ただ、一枚だけ見つからなかったようで、お店の人に確認してくれた。店にあるかもしれないって事で、その辺も手配してくれた。それと、お店から纏めて送ってくれるらしい。いつのまに! 悠兄のおすすめと、店長さんのおすすめもちゃんと、手にしていた。それと。



「これ、どうする?」



 差し出されたのは、ジョン・レノンのイマジンだった。思い出の曲、これはぜひ入手したい。そう言うと、そう言うと思ったって言われた。ちなみに、遥くんは最初から探す気は無かったようで、嘉くんが探してくれるのが、分かっていたらしい。自分の欲しいものを持っていました。おおう、さすが、遥くんだ。私は一枚だけゲットできましたが、他は全部、嘉くんが見つけてくれました。


 嘉くんの新たな一面を見つけてしまいました。その後、レコードプレーヤーは購入しました。



 誰もヴィランにしたくない、その思いはあります。でも、どうしても受け入れ難い存在、それが広大くんだったりします。不快な方いらっしゃったら申し訳ありません。そして、広大くんのファンの方もいらっしゃったらすみません。これからもこんな感じの子になると思います。

 そして、嘉隆くんに新たな属性追加(笑)。探し物が上手です。

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