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虹の架け橋  作者: 藤井桜
新婚編
87/732

杜の都に響く音楽を届けて

 特定のアーティスト名出てきます。ご注意を。



 九月の第二土曜日と日曜日の仙台の街は音楽一色になる。仙台の専門学校に進学した、(あん)にとっては、初めてのジャズフェスだ。定禅寺ストリートジャズフェスティバルが正式名称だ。ジャズフェスといっても、ジャズだけではなく、色々な音楽が仙台市内に響き渡る。

 その、ジャズフェスに兄たちが出るという。そういえば、詳しいバンド名聞いていなかったので、聞いたら『農家とその仲間たち』いやいや、他に何かなかったの?! 間違ってはいないけれど! そのままだけれど! 漁師と、にしようとしたら、渡辺さんに遠慮されたらしい、他のメンバーからもそうだったらしい。仕方がないか。

 その『農家とその仲間たち』が出るらしい。稲刈りはまだ先だし、悠兄、杏に会いたいからという理由で、咲子(さきこ)さん、盛大なため息付いていた。私も姪っ子大好きだけど、悠兄も娘大好きだよね。

 時間によっては行こうと決めていた。聞くと時間がちょうど昼過ぎだったので、日帰り出来そうな日程が取れる。杏に会いたい、が最重要任務だと言ったら、(よし)くんに笑われた。流石に、変装必須だねと言われたけれど、それは嘉くんだけです。

 遥くんは都合が付かなかった。実家の手伝いを頼まれたようです。九月は実家の方で、色々と忙しい様です。お土産買って行くね、と言ったら、うちのお菓子取っておくよと言われた。遥くんも楽しみにしているよ、と返してもらいました。あれ、でもこの流れ、やっぱり、古川家に何か買っていく流れだよね。



 九月に入ってもまだ、暑い。去年の夏の屋外イベントで倒れた前科があるので、嘉くんは、過保護だ。涼しげな黒のノースリーブのワンピースにカーディガン、素材はサラサラした生地なので、暑苦しさはない、帽子と足元は踵の低いスニーカー。日焼け止めはしっかり。水分補給もしっかり。あと、兄から虫除けも勧められた。嘉くんは黒は避けて、ベージュのシャツに、ダークグレーの少し派手目の柄のゆったりしたズボンを履いている。シャツは涼しげな素材だ。それに、帽子とサングラス、バレるかバレないか微妙なラインだ。ここ、木々が太陽の日差しを遮っているので、少し薄暗いから大丈夫か?


 野外音楽堂は、木々に囲まれて若干、涼しかった。人も結構、多い。他の場所は、更に人が多い、ここまで来るまでにその人の多さに驚いた。

 杏は見に来ていたのだと思っていたが、違った。杏も兄と一緒に出るようだ。時間よりも早く来て良かった。最前列を確保出来たのだ。周りは気にしないつもりでいたが、ちらちらと周りを見ると、見た事ある人たちがいる。誰かわかる、兄たちのファンだ。

 トントンと肩を叩かれて、後ろを振り向くと、咲子さんだった。今回は、キーボードは担当しないようだ。子供達は、って聞いたけど、あまり興味なかったので、連れてこなかったらしい。実家で、お父さんとお母さんが蓮と愛奈を見ていてくれるらしい。彼方は部活だって言ってた。嘉くんが場所変わろうとしてくれたけれど、咲子さんは断ってた。



「もしかして、私たちの格好、バレてる?」

「いや、大丈夫だと思うよ。周りみんな悠くんのファンだから、嘉隆くんの事は、気にしていないと思う」

「咲子さん…」



 仮にも嘉くん、芸能人です、と私は思ったが、咲子さんの発言に特に気にしていないようだった。嘉くんも、ここにいても、ばれる心配ない、そう思っていたらしい。女性だけかと思ったが、若い男の子たちの姿も見える。何故かと聞いたら、杏がSNSで発信していたらしい。若いってすごいな。



「ジャズフェスって、ジャズだけじゃないんだね」

「うん、今日と明日、色んなジャンルの音楽が仙台市内で、流れるよ。私も見に来るのは、初めてですごく楽しみ」

「悠兄は何を歌うの?」

「パンフの説明だけ見ると、ジャンルがロックになっていて、『気仙沼(けせんぬま)市から来ました、邦楽、洋楽ごちゃまぜ。一つでも好きな曲がありますように』ってなってる。多分ね、杏が居るから、レーゲンボーゲンとビビバスの曲は確定だと思う。あと、洋楽はビートルズじゃないかな」

「麻衣の歌は?」

「どうかなぁ、私の歌を歌うくらいなら、悠兄は十八番に走ると思う。でも、持ち時間三十分あるから、もう、一曲くらい行けるかな?」



 さらりと、嘉くん、悠兄と呼んでいる。ちなみに遥くんも、そう呼んでいるの知っている。咲子さんは、私たちよりも下なので、咲子さんのままです。悠兄と咲子さんは六歳違うのよね。どこで、こんな若い子引っ掛けたって、悠兄、結婚式当時、突っ込まれていた。



 始まる少し前、悠兄はスタッフの人と話している様だった。何かトラブルでもあったのだろうか。咲子さんが気になって、悠兄の元に向かう。咲子さんはこっちを見て、驚いたような表情をしている。その後、戻って来た咲子さんに告げられた。最後の二曲に飛び入りで参加しないかと言うものだった。さっき、もう一曲、私の曲なんじゃないかと言う予想が当たってしまった。


 悠兄たちの私の予想通りの曲が終わり、メンバー紹介が終わり、私と嘉くんの方に手を差し出された。嘉くん表情はすごく楽しそうだ。こう言うサプライズ大好きだものね。ギター担当の郵便局員の佐野さんからギターを借りて、調整を始めた。掛けていたサングラスを外すと、観客席からどよめきが起きた。あ、レーゲンボーゲンだってバレた。

 仕方がないので、私も舞台に立つ。悠兄が妹夫婦と私たちを紹介してくれた。キーボード担当の阪下先生の流れる音が、こないだ、動画配信された『八月六日』を奏でて、そして、嘉くんのギターに繋がる。仙台で歌うならこの曲しかないだろう。まぁ、まだシングル化もされていなくて、発売はまだ、先なんだけど、最初に動画サイトで配信されているからね。でも、メンバーの人たち、何故弾ける。


 その後に、メンバー全員でレーゲンボーゲンの『夢のカタチ』が演奏され、悠兄たちの時間は終了した。最後に、「募金宜しく、お礼はイケメン二人のスマイルでお返しします」いや、イケメン二人って誰だよ。私、今日ワンピース姿だよ? 悠兄のファン多かったので、三人のイケメンになったけれど、イケメンって、嘉くんだけだと思います。ここの、募金所、かなり、募金額多かったみたい。



『八月六日』は八月六日に動画サイトで先行配信されて、話題になりました。シングル化はまだ先の予定。

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