089話:研究
ついに待ち望んでいた魔導印が届いた。
未だに練習用の簡単な魔導印ですら縮小に成功していないけど、これからはこの届いた印で完成を目指す。
とはいえ、この魔導印、クズ魔石では練習にすらならない。
なんせ、直径1mもあるのだ。
こんなにデカいんじゃあ、確かに実用的じゃないな。
印が描かれている紙だって、これだけのサイズはこの世界の技術では簡単に作れないだろう。
まさに特注一点物の超贅沢品ってやつだ。
お高かったはずだな。
しかし、こいつを縮小コピー、1/20サイズにしたとしても直径5cmか。
肌身離さず身につけるにはそれくらいが限界だろうからギリセーフだけどさ。
それでも、そのサイズが描ける魔石って、そうそう無いんだよな。
つまり、いきなり本番である。
術式杖みたいに魔石をガラスに埋め込んでって方法だと、チャージできる量に限りがあるし効率も大幅に落ちるからね。
使えそうな魔石は3つ。
なに、一筆入魂を延々続ければいいだけさ。
・・・
・・
・
魔石、ラス1です。
用意した針も使いつくして追加で作成。
現在10本目です。
ちくそ〜。
ちなみにあの後2回ほど強制連行されました。
集中すると忘れるよね~、食事と睡眠って。
当然毎回セパ粥しか出してもらえず、いまだにトリカラ(魔鳥肉)は食せていませぬ。
俺が悪いんだけどね。
うん、まぁ、うまくいかない時って何やってもだめだよね。
完全に行き詰ってしまった。
残り1個の魔石を無駄にはできない。
とはいえ、成功する気配すらない。
(いいかげん、この方法は諦めるしかないか。)
なんて思ってたところにだ、
「「それは残念ですね。」」
と不快極まりない声が聞こえた。
無視だ。
(久しぶりに掃除でもしようかな、気分転換にもなるだろう。)
練習したクズ魔石やらなにやらが一面に散乱していて、さすがに足の踏み場も無くなってきていた。
(ほうきとちり取りどこやったかな。)
「「あ~、そのね。無視はいけないと思うんですよ。とても傷ついてしまいます。」」
(あ、あった。)
ほうきとちり取りを手に、床のクズ魔石を掃く。
「「ふぅ・・・契約しましょう、ね?ヒントを差し上げますから。
対価は完成品を一つでどうです?凄く貴重で有効なヒントですよ。」」
(完成品?・・・なるほど、ガイゼルベルグもとうとう限界が来たか。
対価として完成品を指定してきたってことは、この魔道具で魔物化を防ぐって考え方は正解ってことだな。
後は製法か・・・ヒント程度で解決するなら対価はもったいなさすぎる。)
ちり取りいっぱいになったクズ魔石をゴミ箱に放り込む。
思った以上に多いな。
「「あぁ~もう!なにをお支払いすればいいんで?」」
勝った。
読まれてるかもしれないけれど、つい心のなかでニヤついてしまう。
「こちらの質問に可能な限り迅速に、嘘偽りなく正確に答えろ、期限は対価が完成するまで。」
本心では永久に、ってしたかったけど、欲張りすぎるのは良くない。
クソ悪魔を見もせずに告げた。
さて、どんな返しで来るかな。
「「・・・承知しました、契約成立でございます。」」
意外にも即答でOKしやがった。
(くそ、もっと要求すればよかった。)
なんて俺の後悔を知ってか知らずか、悪魔の前には紙のようなものが浮かび上がっていた。
と、次の瞬間黒い靄が紙の端から噴き出す。
その黒い靄が紙を覆いつくすと、次の瞬間には紙ごと霧散した。
契約の儀式?
ま、いいか。
「こっちで死んだら向こうも死ぬ、ってことは知ってるけど、じゃあ向こうで死んだらこっちはどうなる?」
いい機会だし、さっそく質問攻めにしてやろう。
「「・・・え?・・・なんでそれなんです?製法のヒントとかじゃぁ無いんで?」」
さすがにあっけにとられたようだが、そんなことは知ったことでは無い。
っていうか、コイツ、質問の内容を魔導印に関してだけだとか思ってたのか?
あぁ、だから即答で受け入れたのか。
ヒントどころか根掘り葉掘り聞き出す程度だとでも思っていたな?
甘いわ。
砂糖山盛りの練乳のごとく甘いわ!
先に気になってることは全部聞いちゃろっと。
「どうせ、こっちがそこら辺の仕組みをある程度は把握してるだろうって気づいてるだろ?
だったら胡麻化さずにちゃっちゃと答えろよ、気になるだろうが。
こっちで死んだら向こうでも死ぬ。
なら、向こうで死んだ場合、こっちも死ぬはずだろ?
でも、そうなると不老の意味が無いじゃあないか。
だから、向こうで死んだ場合は何かしらの対策がされてると思うわけだけど、そこんとこどうなの?」
もう、昔見た刑事ドラマの取調室な心境です。
もちろん俺が刑事役ね。
「「はぁ・・・不老のことまで気づいてるんですね・・・。
予測されているとおりです。
向こうでお亡くなりになった場合でも、こちらの皆様に影響はございません。
その差は、こちらには魔素があり、向こうには無い、ということでございます。」」
「魔素が魂の不足分を補うってことなのか?」
「「少々違います。
現状は向こうの世界での生存を確保するためにこちらの魂と向こうの魂がつながった状態にあります。
そのため、こちらでお亡くなりになれば向こうでも、という状態なのですが、向こうでお亡くなりになられた場合は魂をこちらに引き込んだうえで、移動によるロスは魔素で補います。
もちろん、引き込むのには魔素の力が必要ですので、逆はできないのです。」」
なるほど、若干魔素だよりで言いくるめられた感もあるけど納得はできた。
そう言えば俺たちの体も魔素でできているんだったっけ。
・・・あれ?
「あ~、それだと、俺たちは今作ってるものを持ってない方がいいのかな。」
体内の魔素を吸収してしまう魔道具を身に着けていたら、体が魔素でできている俺たちに悪影響が出るかもしれない。
「「問題ありませんよ。
まぁ、皆様は魔物化しないのでそれは必要は無いですがね。
最初、実体を形成するために魔素を利用しましたが、その後この世界の食物を摂られたことで肉体も完全に定着しております。
ですので、たとえ魔素が完全に無くなってしまったとしても、ゲーム依存の能力が使えなくなるだけです。
あ、あと、不老でもなくなりますね。」」
なるほど、ダンジョン産の魔獣と同じ理屈か。
「そういえば、魂を殺した相手の中に保管してるって話だけど、なんで拡散させたくないんだ?それも魔素が関係してるのか?」
「「ええ、私としては拡散しちゃっても問題無かったんですが、魂に含まれる魔素は膨大ですので、放置した場合は王との契約に反してしまうのですよ。
まぁ、この世界の生物や病、事故などで無くなった場合は保管場所が無いので拡散してしまいますので、それを防ぐために死との境界を作ったのです。」」
「それがあの丸悪魔のいた場所ってことか。」
「「はい、苦し紛れの対処ではありますが、蘇生という副産物もできたので結果としては良かったと思っております。」」
(俺が生き返れたのって、苦し紛れの副産物だったんだ・・・。)
なんか、ちょっとショック。
「あ、そうそう、俺たちって、元の世界の自分となんか違う感じがしてるんだけど。」
つい忘れそうになったけれど、これもモヤモヤしている大問題だ、ちゃんと聞きださなきゃ。
「「残念ながら、あなたが推測しておられるレベルと同程度の確認しか取れておりません。
我々にとっても想定外の事態でして、この件について認識できたのも、あなたのおかげという状態でした。」」
困っているような様子・・・は微塵も感じられないのがなんだか嘘くさいけど、契約した以上は嘘ではなさそうだ。
「どういうこと?」
「「元の世界の自分を救おうとされましたね。
まったく、想定外にも程がある行為ですが、その結果、あちらの世界のあなたにも変化があったことを確認できたのです。」」
「おいおい、洒落じゃすまないぞ。」
さらっととんでもないことを言いやがったぞ。
「「変化があった、というよりは、元に戻ったと言った方がいいかもしれません。
個人差が激しいので確実なことは言えませんが、魂を分割したことで、それまでの興味や活力などが薄らいだ可能性があります。
それが、あなたの悪だくみによって魂の総量が元に戻り、結果として分割前の精神状態に戻った、と推測しています。
で、その件があって改めてログを確認したのです。」」
「ログってお前、染まりすぎだろ。」
「「まぁ、それは良いじゃないですか。
ここから先は、かなり精度の悪い推測になります。
おそらく、ゲームで操作していたキャラクターの設定や性格が影響を与えているという可能性があります。
ただ、これはキャラクターのバックボーンともいえる設定によって影響を受けているというわけではないようなのです。
プレイしていた皆様の入れ込み具合によって影響の強さにも違いが出てきていると思うのですが、様々な影響が複雑に絡み合ってしまっておりまして。」」
聞かなきゃよかったかな・・・余計ややこしくなってしまった気がする。
「あれ?俺、この世界に来てからレベルアップへのモチベーションがダダ下がりなんだけど?
10年以上も入れ込んでるのに。」
「「・・・あなた、本気でそう思ってます?」」
なんか、急に呆れられたぞ?
・・・
・・
・
(あ!)
「そうか・・・レベル150に到達してからはほとんどレベルアップに励んでなかった。」
ここ1~2年は、入手不可能では?と思われるアイテムの入手法や、不可能とされていたモンスターのテイムを検証することにばかり熱中していた。
魔道具に関する興味とかも、そういった最近のプレイスタイルが影響してるってことか。
シングルプレイのゲームだから、他人を気にせずやりたいことだけやっていたし。
妙に納得してしまった。
「「まぁ、あくまでも推測ですし、今後この世界での環境などでも変化していくことでしょう。」」
う〜ん、変に不安がったりする必要は無さそうってことかな?
ただ、初めて出会う相手には向こうの世界の倫理観を元に考えを押し付けない方がいいってことも忘れないようにしないとな。
転生村で戦闘前に話したことが見当違いでなかったから良かった。
よし、そろそろ本題といくか。
「で、ガイゼルベルグは今やばいってことでいいの?」
一応想像はできてるけど、確認はしておこう。
「「そうですね。すでに意識も混濁し始めております。」」
なんてケラケラと笑いだすクソ悪魔。
「もっと早く言えよ!アホ王が狂っちゃったら反省させられないじゃないか。」
俺の想像よりずっとヤバい状態のようだ。
いつ魔物化してもおかしくないレベルってことかよ。
「「すると思いますか?」」
「するわけないだろ、だからいいんじゃないか。」
(反省しないんだから、今までの犠牲者の分永遠に苦しんでもらわなきゃな。
それがこのクソ悪魔を喜ばせることになるとしてもだ・・・う~ん、それもなんか嫌だな。)
「「そう言っていただけると思っておりました、やはりあなたにしてよかった。」」
なんかうれしそうなのが分かってしまってトリハダ!
しかも後半はしっかり無視してるし。
「「そんな奴どうなろうと知らねぇ!なんて言われてしまうのではないかと不安で不安で。」」
まぁ、そう言う考えもあるよね。
今すぐ殺せ!なんて言い出す直情型とか、事実を暴いて真実を世界に、なんてジャーナリスト型とかいそうだ。
俺はね、死後の世界なんて信じてないから死刑ってのは否定派なんだ。
死刑相当の犯罪者にはね、終身でもう死にたいって思うくらいの重労働を課して苦しみと後悔を死ぬまで味わってもらうべきだってね。
ま、被害者より加害者の人権を尊重するおかしな時代だからただの妄想だったけど。
この世界と俺たちを滅茶苦茶にしたガイゼルベルグには最低でも千年は苦しんでいただきたいと思っている。
しかしなぁ・・・ちょっとした疑問が浮かんだ。
「なんで自分で作らないんだ?」
こいつらならちょちょいと作れそうだけどな。
「「我々は、魔石に触れられないのです。」」
そう言って、クソ悪魔は床のクズ魔石を拾う。
魔石は見る間に色が薄くなっていき、透明になってしまった。
と思うと、そのまま無くなってしまった。
「なるほどね、吸収し尽くしちゃった感じか?
じゃあ次の質問だけど、ソンチョーの仕入れとか、ガチャとかうぃきネットとか、金が必要っての嘘だよね。」
「「・・・ここでその質問です? 本当に? 」」
ムフフ、してやったりだ。
あの流れなら次はいよいよヒントを聞いてくると思っただろう。
ざまぁだ。
そんな簡単に思い通りにはならないのだよ。
「魔素を消費するのがアホ王との契約なら、全部魔素で片付ければ良いはずだろ?向こうの世界から現物を召喚ってわけではなさそうだから、魔素で実体化してるんだろうし。
魔素を使ってほしいなんて言っておいて一気にたくさんは使わせたくないって理由は想像がつくけど、ぶっちゃけそこまで影響が出るほどなのか?」
正直、金を消費し続けるのはこの先大きな問題になる可能性があるんだよ。
貨幣なんて有限なんだし、サンザ王国の貨幣を食わせまくったら、経済に大きな打撃を与えることになるかもしれない。
「「はぁ・・・全く面倒な方ですねぇ。
ネットに関しては、あなたのおっしゃる通りですよ。
こちらでお亡くなりになった方が、連動するように向こうでも無くなられた記事などを見せたくないからでした。
うぃきネットでも、自由に検索出来てしまえばそれほど時間を置かずにたどり着くだろうと思いましたので大きな制限をかけさせていただきました。
すべて禁止にしてしまえば楽だったんですがね、その場合あなたはもっと面倒を起こす可能性もありましたから。」」
「じゃぁ、ネット解禁でいいんじゃね? どうせみんなにバラすし。」
「「・・・うぃきネットだけ解禁にします。
動画を流され続けられでもしたら困りますので。」」
「だから、その程度でそんなに影響出るのか?」
「「でません。」」
この野郎・・・言い切りやがった。
「「今は、という意味ですが。
みどり村が発展した後や、その話題が広まって他の方も、ということになると問題になるのです。
私の見込みでは、問題無いレベルまで魔素が薄れるのにおよそ500年と見込んでおりましたが、すでに想定外の問題も多く、現状のままでいきますと480年ほどで魔素は尽きます。
おわかりですか?皆さんをお呼びしてまだ1年もたってないのに、20年も縮んじゃったんですよ!
この上さらにあれやこれやを解禁してしまったら、最悪100年程度で終わっちゃうじゃあ無いですか!」」
「ないですか!ぢゃねぇだろ。」
想像の斜め上をいくほど下らない理由だった。
「融通しろ。」
「「はい?」」
「要するに、お前の望みは魔素を減らしつつ、できる限り引き延ばしたいんだろ?でも、契約があるから大っぴらに引き延ばそうとはできない。そうだな?」
クソ悪魔は答えない。
嘘はつかない契約だからな、かといって肯定するとアホ王との契約に違反するんだろう。
つまり、否定しないってことは肯定したってことだ。
「魔素をこの世界に引き込んだのはお前だろ?だったら、さらに引き込むことはできるのか?で、引き込んだらそっちの世界で異変があるのか?」
と言った俺の言葉に、一瞬奴の動きが止まった。
「「引き込むことは可能です。
ただ、契約上新たに引き込むとなると、魔素を無くすという契約に違反してしまうので難しいですね。
この世界にさらなる異変を引き起こすことにもなるのでやるべきではありませんね。
引き込んだとしてもあちらの世界への影響は・・・あの世界にはすでに何もありませんので問題なしです。
物質もエネルギーも、あらゆる存在が魔素に分解されてしまった後。
いわゆる、終焉後の世界ですので。」」
最後の一言を告げた悪魔に、なぜか哀愁のようなものを感じた。
どうでもいいけど。
「じゃあ、ソンチョーの能力で購入する製品とかをさ、そっちの世界からの魔素で作ることはできるのか?
それなら、この世界には魔素ではなく物質が持ち込まれるわけだから、魔素を増やすことなく、減らすことも無い。
だろ?」
「「・・・あなた、ずいぶんと酷いことを考えつきますね。」」
「お前に言われたくないぞ。で、できるのか?」
聞くまでも無いけどね。
できないならあんな言い方してこないし、俺の頭の中を勝手に覗けるんだから俺の思惑を知った上でこの言い回しだ。
マジムカつく。
「「可能でございます。」」
恭しく一礼するクソ悪魔。
「なら契約だ。
対価は今回渡す完成品と同じ物。
ガイゼルベルグが魔物化しそうになったら、その都度無償で、俺か奴が死ぬか、この世界から魔素が消滅するまでまで用意し続ける。
こちらが求めるのは、
一、ガチャを無くして種や調味料を普通に仕入れられるようにしろ。
種類も増やしてくれ、麹菌とかイースト菌とかの菌類も欲しいし、他にもほしいものはいろいろあるから内容は都度応相談で。
実体化させるための魔素の出どころは”問わない”。
二、みどり村で消費する通貨ベルを実体のある貨幣にするから、みどり村の仕入れは全てそれでも使えるようにしてくれ。
もちろん、村の中だけで通用する通貨として両替商を作ってちゃんと機能させる。」
これならこの世界の貨幣を消してしまうことが無くなる。
金銭に対する”欲”がまとわりついた物質、要するに貨幣が悪魔にとっての嗜好品って話が嘘じゃなければだけれど、将来的に価値が高まる可能性の高い、新しい通貨だ。
価値が高くなればそれだけ欲望の対象になるはずだ。
数秒の沈黙の後、悪魔は条件を受け入れた。
まぁ、奴にとって悪い条件じゃないはずだからね。
じゃ、お待ちかねの時間だ。
「で、どうやったらいい?ヒントくれ。」
「「ようやくですね・・・はい、いくつか行程が必要なのですが、まずこちらの印を・・・
こうして三日後、ついに完成した魔道具の試作品。
魔石に刻まれた印が魔素を吸収して魔石にため込むもの。
印を体に密着させることで、体内の魔素を吸収する。
極微弱の魔力で起動するように、と、印が何かに密着していないと魔素を吸収しないように、魔導印そのものを改良することで誤作動防止にも成功した。
誤作動防止機能をつける前は、魔素をより吸収しやすい空気中から吸収しようと、魔道具がかってに動こうとして体から離れて(浮いて)しまうという問題が起こったのだ。
魔素の吸収量は、人が生存できるギリギリの魔素濃度の中で吸収してしまう最大量より若干多い程度まで高めることができた。
これならどんな場所で生活していても生きていける限りは魔素をため込んでしまうことは無いだろう。
しかも、一般的な人の生活圏ならばすでにため込んだ分も少しずつ減らしていける。
それは、ひときわ魔素の薄い中で暮らしているアホ王なら特に効果的だろう。
まぁ、当然奴に渡すのは試作品なので効果はかなり弱めである。
当分楽にはさせないぞ。
ん?
ひどいって?
奴のしてきたことに比べたら何てことは無いさ。
さらにはこのクソ悪魔もな。
いつか償ってもらう。
いつになるか分からないけど。
それが見つかるまでは利用させてもらうだけさ。
ちなみに悪魔からのヒントは、魔導印に関する研究資料と魔石の加工方法の提供だった。
資料のおかげで魔導印の改良もできた。
魔石は粉末状にして、高温で加熱することで成形できることが分かった。
ただ、粉末にする際に発火、破裂する危険があるため、空に近い状態の魔石しか使えない。
そりゃもう、ちょっとしたクズ魔石でも大変なことになるくらいの大爆発だ。
はい、試してみました。
貧乏性のコレクターだった俺でも3つしか持っていなかった貴重なアイテム、身代わりペンダントを一つ失ってしまった。
うん、また死にました。
アイテムのおかげで本当に死ぬギリギリで生き残れたけど。
ちょっとした好奇心だったんだけど、気をつけなきゃね。
しかし、切ったり砕いたりした時は何でもないのに、臼で擂ると大爆発ってなんなのこれ。
衝撃でもないしなぁ・・・いくつかの要素が重なると?
検証しとかないといつか大事故になりそうだな。
うん、いつか検証しよう。
いつかね。
さて、問題はスルーして、急いで魔道具で使い切ったクズ魔石を回収しないと。
魔石の加工技術を得たことで、熱に強く加工しやすいミスリルで反転させた魔導印を浮き上がらせた金型を作り、粉末状の魔石を入れて過熱成形すれば同じものがいくつでも作れる。
つまり、量産が可能になるのだ。
クソ悪魔に試作品を渡して契約も無事完了。
とっととお引き取り願って、現状でできるちゃんとした魔道具を作り始めた。
魔素への抵抗が高く、魔物化するほど長生きもしないヒトにはあまり必要性は無さそうだけど。
首輪か何かに加工すれば牛や羊にも使えるだろう。
魔道具は鶏には大きすぎるので、鶏舎そのものを魔素の無い空間にすることにした。
一度諦めた道ではあるけれど、クソ悪魔の”ヒント”で新しい道がうっすらと見えてきたのだ。
魔導印の一種で、印同士を連結させて巨大な印に仕立てていく鎖印という技法がある。
これを使って、鶏舎の外壁中に模様のように印を連鎖させていけばたぶん可能だ。
窓には魔素を吸収する魔道具を設置して、換気のため窓を開けたときに魔素が入り込むのを防ぐ。
出入口には、外へ2mくらいの通路を増設、両端には魔道具付きのドアを2セット設置して、出入りの時の魔素流入もガッチリガード。
うん、完璧だ。
頭の中ではね。
実際の作業だけど・・・手順だけ説明してトウリョー達に丸投げしよう。
俺は魔素吸収の魔道具を大量に生産、ドカドカ設置して中に残った魔素をしっかり抜き取ればOK。
同様の方法で食料の魔素抜き場も整備できるし、効率化もはたせるだろう。
牛や羊用の魔道具を作り、ようやくこれで長いひきこもり生活から解放・・・はされない。
これからノエルさん用の特別版を作るのだ!




