074話:訓練
「ほ、本当に大丈夫なんだな?」
「絶対だよな?」
「勘違いとかでも無いよな?」
(うっさい!とっととやれヘタレ王子が。)
セカンドゲーム解放よりも手っ取り早く戦力になりそうなミコトの能力検証に付き合っているのだが、こいつがなんとも・・・。
とりあえずハリラビ(村周辺の個体よりちょっと黒っぽい)を見つけたのでバインドで拘束してるんだけど、一向に攻撃しようとしない。
「ウダウダしてるとバインド解けるぞ。」
なんか、開始早々だけど投げる用にサジでも作りたい気分だ。
「わ、わかったよ・・・。」
と言いつつなかなか動かない。
しょうがないな、もっかいバインドかけるか。
「セ、セットアップ・・・レイオンギアオープン。」
ミコトがそう言うと、左手の派手な手甲が光り出した。
手甲の外側がパカッと左右に開き、さらに、開いた部分の上にぼんやりと光るカードのようなものが数枚浮かび上がった。
「ゴ、ゴブリンソルジャー召喚。」
ミコトはカードのうち一枚を引き抜くと、正面に掲げて宣言した。
カードが光の粒になって消えていくと同時に、ミコトの前方に錆びついた鎧を着こんだゴブリンの兵士が現れた。
「ほ、本当に出た・・・すげぇ。」
身長1mくらい、ズングリしていて、俺やユーキ、この世界のゴブリンたちと比べると、やっぱり毛色が違う。
「前試した時は反応もしなかったのに・・・。」
「だから、敵が存在しないところでやってたから機能しなかったんじゃないかって言ったろ。」
これも何度言ったことか・・・。
マジこいつ、実践で使えるようになるのか?
「スキルセット、強化連撃。」
さらにカードを引き抜いて、正面に掲げて宣言、すると、カードが消えると同時にゴブリンソルジャーの剣が赤く光った。
「行動セット、ターゲットオン、ダブルスラッシュ。」
あ~確か、召喚、スキル、行動宣言で1ターンなんだっけ?
ゴブリンソルジャーが黒ハリラビに向けて駆けだし、剣で2連撃を放つ。
拘束された状態のハリラビはあっけなく3等分されて決着。
ゴブリンが光の粒になって消えると、黒ハリラビの上に光るカードのようなものが現れた。
マジモンでいう光の玉、みたいなことか?
「あ~、ハズレだ。」
カードを取ったミコト。
ハズレってわりには、さして残念そうでもないようだけど。
「ジェムだったよ。当りだとスキルやアイテムが、大当たりだと倒したモンスターのカードが手に入るんだけどね。」
って、ついさっきまでビビりまくってたくせに急に態度が変わったな、こいつ。
「まぁ、ジェムは貯めればガチャが回せるから無駄にはならないさ。」
またガチャかよ。
ホント好きだよな、ゲーム開発者は。
ってか、それだけ優秀な課金誘発コンテンツってことなんだろう。
「それはいいけど、魔石取って次行こう。」
時間が無いんだ、こんなことでモタモタしてられん。
「え?魔石取る?・・・これから?俺が?」
こいつ・・・
「無理むりムリ!だって、スプラッタじゃん、見るのも無理なのに!」
「俺は取らんぞ、お前が仕留めたんだからお前が取れ、それに、獲らなきゃお前の収入はゼロだからな。」
ハリラビの魔石程度は俺もいらんしな。
こいつに慣れさせるためにもやらせときたかったんだけど・・・結局触ることもできずワーギャー騒ぎまくるので断念。
も~やだこいつ。
何処のおぼっちゃまだよ。
これは、ショウワスタイルで行かないと間に合いそうも無いな。
そう決意した俺。
数時間後には、ミコトからは怨嗟の叫びが発せられ続けることになった。
何やったって?
簡単さ、こいつを逃げられないように、1m位の長さのワイヤーで腰と石の像とで縛り付けて、手当たり次第に魔物をけしかけてやったのさ。
バインドで安全確保なんて必要無い無い。
ノスサンザ大森林じゃないんだ、それほど危険な魔物はいないし、ポーションもたくさんあるから怪我しても即死しなければ直せるからねぇ~。
「し、しし召喚!ブルームベア。」
カードも順調に集まっているようだ。
ガチャで手に入るカードには、ライジングレイオンのモンスターも含まれる。
SSRとかURとかのモンスターが手に入れば一気に戦力アップできそうだけれど・・・今のところはRランクのブルームベアが最高レア度、戦闘を見た感じリルベア位の強さかな。
リルベアほど固くないけど、その分動きは速い。
対戦中敵からの攻撃は全て召喚したモンスターが引き受ける。
たとえ、ミコト本人を直接狙おうとしても、謎パワーが攻撃を逸らせてモンスターに当たるのだ。
つまり、召喚したモンスターが一体でも場にいればミコトは傷つく心配がない。
召喚、スキル選択か強化カードの使用、行動の3ステップが1ターンに設定されているので、戦闘時間が長くなればそれだけ多くのモンスターを召喚できる(召喚カードを持っていればだけど)ってことだ。
問題なのは、選択できるカードは10枚まで、で、完全にランダムなのだ。
1枚消費すると1枚追加されるが、これもランダム。
最悪召喚できるモンスターカードが選択肢に無い可能性もあるので、敵の攻撃を自力で回避しなければならない場面も想定される。
選択肢に召喚カードがあったとしても、CやUCといった雑魚が出る可能性もあるわけだしね。
と言うことで、初日は徹底的に検証を繰り返した。
そうそう、魔石一個につき10分休憩をやるって言ったら、泣きながら解体してたよ。
あっという間に慣れたみたいだけどさ。
パワハラだって?
ショウワスタイルにそんな言葉は存在しないのだ。
俺の学生時代なんて、教師が見せしめにと生徒にビンタかますなんて当たり前だったからね。
イベント事の全体練習とかになると、まず最初にやられるんだよ。
ちょっとしたミスを口実にね。
特にひ弱そうなのが狙われたもんだ。
俺もその一人だったけど。
とにかく、わずか3日の特訓でミコトは無事成長(?)して自立したのでした。
メデタシメデタシ。
でもなかった。
変に自信をつけちゃって、ウザさが上がってしまった。
**
ミコトに目途が付いたので、他の人たちの進展を確認に出向くことにした。
元々戦える二人は良いとして、セカンドゲーム組の進展次第では戦いの行方も大きく変わってくるだろう。
初日にキャラデザインをやり直せる鏡台を貸し出して、それぞれ利用させた。
まぁ、人の姿が多かったけど、本来の姿や理想とかけ離れていて悩んでいる人もいたし。
特にピンクの恐竜とか・・・。
しかしだね・・・。
ハーフデビルで顔の入れ墨がいやだったって言っていたカタシナは入れ墨だけ消すのに利用したみたいだからまぁいいとして、ワーフォックスのキチセは人に近い姿になっていた・・・あとシレっと身長伸ばしてたな。
他にも、利用者がみんなかなり美化しいるのがちょっと気がかりだった。
療養中のこの世界の住人50人、復帰したら大混乱になりそうだけど・・・。
俺知~らない。
**
桃鬼伝の開放を目指していたエグチは、俺が貸し出したカタナを使って早々にセカンドゲームを開放していた。
日本刀系の武器はエイルヴァーンには無かったんだけれど、MODで大量に出回っていた。
俺も良く使っていたけれど、この世界では諦めた。
そもそも日本刀の使い方って難しいよね。
直刃の剣は、剣自身の重量で叩く武器。
ぶんぶん振り回してって感じで、鈍器に近い挙動で良い。
サーベルとかの曲刀は斬る目的で、剣そのものは比較的軽く薄い作り。
剣を回転させるように扱えばいい。
どちらも1つの挙動で済むんだよね。
でも、日本刀って、叩きつけてから引くっていう2つの挙動が必要になる。
直刀と曲刀の両方の性質を持った剣ともいえるけど、その分扱いは難しくなる。
居合みたいに鞘から抜きざまに速度重視で斬るなんて使い方もすれば突くこともできるし、使いこなせればすごい武器なんだろうけどねぇ・・・俺には無理だった。
そんな器用に使いこなせなくて早々にリタイヤ。
なので使いこなせる可能性のあるエグチに、まずはお試しレンタル中だ。
鏡台を使ったエグチは、野性味のあふれる姿だったのだがすっかり美少女化されていた。
一応桃鬼伝の女性版キャラ(男女選べる仕様)を参考にしたと言っていたけど。
服装も、俺の貯蔵庫内に眠っていた羽織袴に変え、恐ろしいほどの熱心さで剣の習熟に励んでいる。
ゲーム中でも二刀流のスキルがあったそうで、心配したキタガワ氏が休息をとるよう指示しないといけないくらい、朝も夜も無く二刀での立ち回りや、ダンジョンで魔物相手の実践を積んでいるそうだ。
お供のほうは、やっぱり仙桃の果汁実入りキビ団子がキーになっているようで、入手困難な現状では難しい。
不可能かもしれないことに時間を費やすよりも、今は少しでも強くなるべきだと、早々に見切りをつけてひたすら剣技を磨いている。
**
猟銃タイプのライフルを貸し出したトノウチだったけど、それだけでは開放できなかったようだ。
ゲームの肝ともいうべきターゲットの追跡や罠なども重要だったようで、ウシオの手を借りてチュートリアルをなぞって行動したことでようやく開放されたと言っていた。
程なく装備品も入手できるようになって、貸し出したライフルは俺の元に帰ってきた。
戦闘に役立つわけではないけれど、弾丸や装備品を充実させるためにも狩りを続けてポイントを稼がないといけないってことで、ウシオと一緒に近隣の狩猟場に籠っていて戻ってきていない。
だから様子が分からん。
・・・無事だよな?
ウシオも付いてるし大丈夫だと思いたい。
夜くらいは戻ってきてもいいと思うんだがなぁ。
**
クボタはかなり苦戦中。
というか、何をやったら開放されるのかが分からない。
ゲームでは、要人警護中の主人公が悪鬼の襲撃で重傷を負い、あわや、ってところで浪人だった若き剣士に助けられる、と言うところから始まるらしい。
ということで、とりあえずは村の要人、キタガワの警護をしているそうだけどうまくいっていないようだ。
ワザと魔物に襲われたりしてるみたいだけどさ、兆しすらないって言ってガッカリしていた。
ガッカリって・・・目的はイケメンか?
イケメンだろ?
イケメンだよな?
動機が不純なんでアドバイスしません。
初期から5人、以後ガチャとかでわんさかと・・・ハーレム系な女性向けゲームらしいからねぇ。
まぁ、ゲーム初期を踏襲するとなると、やっぱりアレの状態にならないとダメなんじゃないかなって思うんだよね。
でもまぁ、そればっかりは本人の気持ち一つだし。
やっぱり大けがはしようと思ってしたくないよね?
とりあえずガンバレ。
アドバイスはしないけどな。
5人の剣士は戦力としてほしいけどな。
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で、最大の問題児、ピンクの恐竜モキュルなアラキは・・・ってオイ!
誰だよお前・・・。
アラキって男じゃなかったっけ?
あ、男なの?
クールビューティーな女性に見えるんですけど?
マジ男なのね。
中性的な外見が理想だったんだと?
ワンダーランドのワンダさんはガッチリガテン系だったと思うんですけど。
いや、良いけどね。
鳶感ゼロなお姿ですけど、ちゃんと訓練に励んでいるみたいだし。
ピンクな恐竜よりはずっといいですよ。
アラキのセカンドゲームは、鉄パイプで魔物を殴ったら簡単に解放されたらしい。
横スクロールアクションゲームの定番ともいえるありえないようなジャンプ力や、さらに頂点でもう一度ジャンプできる2段ジャンプの感覚に手こずっているようだけど、まぁ間に合うだろう。
鉄パイプは、ユーコのトゲトゲと同じような仕様で、使うときに出現するタイプ。
投げたりぶん回したり組み立てたりしてるけど、いつの間にか歪んだジャングルジムのような建造物がいくつもできていた。
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カタオカのダンジョンには、カタシナとキチセが付き添って、セカンドゲーム解放組の訓練がてらアタックを続けている。
発掘ダンジョン王国では、仲間にしたモンスターは遠征やあふれたモンスターへの防衛戦力、冒険者のパートナーとして活用される。
そして、仲間のモンスターはダンジョンから発掘される魔石(ややこしいけれど、この世界の魔物から採れる魔石とは別物)を使うことで、種族ごとレベルアップする仕様。
二人はダンジョンの拡大と仲間モンスターの増員、レベルアップに、ダンジョン産魔石の確保のため、ゴブリンとコボルドを1体ずつパートナーにして解放組とともに探検している。
確か、モンスターは種族進化もできたはずだけれど、それを可能にする施設は30階まで攻略しなければダメだったはずだし、強いモンスターは15階以下にならないと出てこないから、とにかく増員をメインに頑張ってもらっている。
4日目からは解放組も増え始め、ミコトにエグチ、アラキも加わって攻略を進めたことで地下10階まで攻略が進み、モンスターも80体まで増員できた。
カタオカはその間、ダンジョン内に攻略に有利になる施設を建設してゆく。
ゲームでは設置ボタンをタップして、雇っている作業員が建設するのを待つわけだけれど、作業員である現地の住人は療養中。
ってことで、戦闘能力の無いメンバーが作業を手伝って建設を進めた。
建材とかは指定すると同時に全て用意されて、後は組み立てるだけ・・・みどり村と同じような仕様みたいだ。
ダンジョン内に畑や造林所、砕石所と言った設備も建設可能になるはずだから、将来的には資源確保の要所になるかも・・・まぁ、ずっと先の話だ。
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こうして、短い期間ではあるし数的に圧倒的不利ではあるものの、一応戦いの準備は確実に進められていった。
俺も終盤はエースやチュンたーずに乗って空から偵察をしたりとかなり忙しく動き回った。
規則的な移動で魔導地図の空白を潰し、詳細な周辺図が完成したら区分けと敵の動向を調査して作戦を練り、キタガワ氏を連れ出してここぞと思う場所に建造物を設置してもらう。
一応できる限りのことはやった。
何とか間に合いそうでよかったよ。




