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1話 腐女子が転生するようです

「俺達付き合わね?」


 それは、突然のことだった。

 金髪短髪のヤンチャ系男子。私にとってはみんな(男)に愛される大好きな推し。

 そんな黒木くんが日常会話のテンションで、帰り道にそう言った。


 冗談だろうと思った。でも、耳が赤くなっていることから、冗談ではないと理解する…いや、わかってしまう。


 え、告白された?誰が?誰に?

 え、私、私、は、え?


 涙腺が熱くなることわかる。それは抑えられない衝動だった。目の前が滲んで嗚咽が漏れる。


「っ…うっ…」


「実はずっと前から好きだったんだ…」


 そんな、嘘だ。

 嘘に決まってる。


 黒木くんは黙りこくる私を見つめ返事を待つ。

 その顔は幼馴染の私ですら、そうそう見ることのない『照れ顔』だ。


 そんな…駄目だよ…その顔は私に向けるものじゃないっ……………。

 推しに…推し「受け」に告白されるなんて……そんなの…


駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!

 

 その瞬間、頭の中…脳がブチブチと鳴ってはいけない音がした気がした。


 涙じゃない、視界が真っ白になっていく。


「も、萌!?」


 あぁ、神様次は推しカプを見守るモブA…いや推しカプを眺められる壁に生まれ変わらせてください。


◇◇◇◇


【BL】それは男性と男性同士の愛。所謂ボーイズラブである。


 それを底なしに愛す女を人は【腐女子】という。


 そして、異世界にも腐女子は存在する。いや……異世界でもその生命力で腐女子として生き残ってしまった存在がいる。


 これは、推していた受けに告白されてショック死した女の異世界譚である。


◇◇◇◇


「……………?」


 目を覚ましたら、そこにいた。


「は…………?」


 床も天井も木。勿論ベッドも扉も全てが木。

 異世界漫画のスローライフ系の家って感じで、スマホも無ければテレビも無い。


 まさか攫われたとか…?


 最初にそう思ったけれど、鏡に映る自分を見つけて、その考えが違うことに気づいた。


「ええ?夢…?」


 そこに写っていたのは薄い灰色の長髪の、男とも女とも取れない容姿の人間だった。

 髪は編み込まれていて、肩にかかっており、とても端正な顔立ちをしている。


 自分の動きに合わせて鏡の中で同じ動きをするそれを見て、私は頬を抓る。おかしな夢を見ていると思ったから。


「痛い…………」


 ……頭がおかしいと思われるかもしれないが、こんな状況一つしか思い浮かばない。


「転生…的な?」


 BL本でもよくある展開…死んで転生した先でイケメン達に愛されるやつ。

 まぁ、私の場合男じゃないからそんなことは起きないけど…。いや、まって、そんなこと考えている場合ではない。


 私は死んだの…?でも、普通転生するなら死ぬ必要があるはずじゃん。

 あ、もしかして推し受けに告白されてショック死した…?

 そう言えば告白された後の記憶がごっそりとない。


 告白した相手が死ぬなんて…と地獄絵図を考えてすぐに思考をとめる。

 ……うん、頭を整理するためにも、まずは家の中を探索することにしよう。

 もしかしたら痛みがある夢なのかもしれないし…案外そうやっているうちに目が覚めるかもしれない。






「夢じゃなかった………」


 夕日が見えた時、やっと私は観念した。

 多分、私は全くの別の人間に変わってしまった。


 もしかしたら、転生というよりかは入れ替わりかもしれないし、ここは日本かもしれない。それはよく分からない。


 いや、日本ではないか……


 部屋を探索してすぐ手紙を見つけたけど、それに書かれた文字は全然知らない文字だった。


「やっぱ異世界?魔法が使えたりとかあるかな………ウォーター!」


 ……………………。


 はい、知ってました。出る訳ありませんよね。異世界舐めんなって感じですね、はは。


 元いたベッドに座り込むと、項垂れる。

 状況は最悪だ。

 一応衣食住は揃ってるみたいだけど、冷蔵庫っぽいのもコンロっぽいのも魔法必須そうだし……。


 そして、そんなことよりもここには気難しそうな本しか無かった。つまり、BL本がない。


 ちょっと酷すぎない?私はさ、BLを楽しめればいいだけの慎ましい腐女子だったんだよ?こんなことってある?


「あーー!!!もう!ステータス!!!!」


 もうヤケクソだ。異世界漫画お決まりの言葉を叫んでみた。


「…………はぁ、知ってますよ、意味ないんですもんね…………え?」



= = = = = = = = =


個体名 人間

名前 ???

状態異常 無し


レベル | 1

魔力  | 無

攻撃力 | F

体力  | F

知力  | F


特殊スキル

【秘密の書庫】


装備スキル

【鑑定】レベルMax【防護障壁】レベルMax【不老】


= = = = = = = = = 



「なにこれ……基本ステータスクソ雑魚…じゃなくて!」


 これは、間違いない!異世界の王道…ステータス!


 興奮する身体を抑えて、目の前に現れたステータスをガン見する。

 取り敢えずクソ弱いことしか分からないが、何も分からなかった私からすれば大きな進歩である。


 それに【秘密の書庫】という、何か本が読めそうなスキルも持っているっぽい。


「じゃあ…まずは…この【秘密の書庫】を鑑定っと」


 念じてみると、案外簡単に電子版のような物が目の前に現れた。



= = = = = = = = =


【秘密の書庫】


転生者が入手した特殊スキル。


この世の全ての本が収納されているが、中身はスキル保有者のみしか読むことができない。スキル使用時は全ての言語が解読出来る。


= = = = = = = = =



「…………最高か?」


 まて、これって、つまり、つまりさ?


「BL本…見放題では…?」


 お母さん、お父さん、今までありがとうございました。私は永遠にここで暮らそうと思います。

最後まで見てくださりありがとうございます!

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