表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時魔導士ネネユノの探しもの。~理不尽にパーティーを追放された回復役の私、実は最強でした!?~  作者: 伊賀海栗
故郷探し!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/58

11.初めてのキスまっず!


 バルバーソの手にある赤い玉は黒い闇を纏わりつかせながら、徐々に大きくなっていく。

 あれはマズイ。ネネユノでさえそう直感した。


「ユノ、クロー、ヨナス!」


 壁に叩き付けられたファヴが口の中の血液を吐き出して3人の名を呼ぶ。

 3人の共通点は魔法使いであるということ。


 バルバーソは宙に浮かんでおり、いかに高く飛んだとしても剣や斧であの詠唱を邪魔することは不可能だ。弓使いは既に攻撃を仕掛けているが、バルバーソの身体はそれを弾く。


 この状況でファヴがユノに求めることと言えば。

 間違ってたらごめんけど、と心の中で謝って、ネネユノは再び懐中時計を目の高さへと掲げた。


「“止まれ(ミ・グヌティ)”――えっ」


 バルバーソの足元に青い魔法陣が浮かびかけて、途中で消える。


 赤い玉の詠唱を止めようと試みたが、うまくいかないようだ。いや、この手応えは恐らく、魔法に込めた魔力量が不足しているのだろう。


「魔法耐性高すぎぃ……っ。でも、もう少しうまくできると思う。ええと、2秒!」

「助かるぜぇ、ユノちゃん」

「その2秒、無駄にはしません!」


 体内の残魔力を全て乗せれば、2秒程度はバルバーソを止められるであろうと予測する。


 ネネユノの考えが正しければ、クローとヨナスは仲間全員に防御壁を展開するはずだ。時間をかけて丁寧に魔力を練り上げるほど、その壁は強度を増す。


 残り全部の魔力を使っても得られる猶予が2秒だけなんて最悪だと思う。強すぎるし、時魔導士としてのプライドも傷ついた。


 だけど、ここを乗り越えないと全員が死んでしまう。

 お姉ちゃんみたいなシャロンも、お兄ちゃんみたいなクローも、相棒のファヴも。


「“止まれっ(ミ・グヌティ)”」


 青い魔法陣がキラキラ輝きながら、再びバルバーソの足元に描かれていく。


「お願い、止まって……!」


 完成した魔法陣はひと際強く輝くと、パリンと弾けてバルバーソを包んだ。成功だ。彼の手にある赤い玉の成長が止まる。


 魔力を絞り尽くした身体は重く、指一本だって動かせる気がしない。崩れるようにその場に倒れ込み、霞む視界の中でクローとヨナスの成功を祈った。


 と、そのとき。

 時間停止から戻ったバルバーソの山羊によく似た瞳がコロンと転がって、ネネユノを捉える。ニタリと笑うバルバーソにおぞけが走るも、動くことはできない。


「なかなか見どころのある時魔導士ですね。あなただけは殺さないであげましょう」


 ああ、そうか。バルバーソは「体内魔力の総量を知りたい」って言ってたっけと、うすぼんやりした思考が浮かぶ。


 意図せず敵の欲っする情報を与えてしまったことは悔しいが、だからといってどうすることもできない。


 バルバーソの赤い玉はぐんと大きくなって、そろそろネネユノたちが落ちて来た穴を埋めてしまいそうだ。


 あんなの、さすがに耐えられないかな。諦めにも似た気持ちでネネユノが目を閉じ……ようとして、できなかった。大きな影がネネユノの身体を飛び越えて行ったからだ。


「ふんぬぁぁーっ!」


 聞き覚えのある唸り声。

 その影はどう見ても、大きな戦槌を持っている。


「トルヴァルド!」


 ファヴがトルヴァルドに向かって瓶様の物体を投げた。


 トルヴァルドはそれを受け取ると器用に片手で蓋を開け、大きく開けた口に中身を流し込む。そのまま駆け抜け、ファヴの肩を足場にして大きく跳躍。


「な、」


 困惑したバルバーソの声が漏れ聞こえた。

 高く飛んだトルヴァルドはその頂点で戦槌を振り下ろす。


 赤い玉は、言わば魔力の塊だ。魔力をぶつければ何かしらの影響も与えられようが、物理的に殴ったとてどうにも――。


「えっ……?」


 ネネユノの予想に反し、バルバーソの作り上げた赤い玉は戦槌によって大きなひび割れを起こしていた。


 全く意味がわからない。魔術師にとっての常識に反する。脳筋は魔術法則を無視できてしまうのか?


「うぉぉおおりゃああああっ」


 戦槌だけでは足りないと考えたのか、トルヴァルドは咆哮をあげながら全体重をもって戦槌を押し込んでいく。


 赤い玉のひびはどんどんと大きくなって、ついには弾けてしまった。


 粉々になった、バルバーソのおぞましい魔力塊が洞窟の中に降り注ぐ。が、それより一瞬早くクローとヨナスの防御魔法が仲間の身体を包んでいた。


 これなら耐えられるだろうか? 動けないまま全員の無事を祈っていると、不意にネネユノの身体が抱き起された。


「ユノ」

「……ファヴ。私、がんばった」

「ああ。よくやった。が、もうひと踏ん張りだ」


 もう魔力ないのに?

 そう伝えようと開いた口に、柔らかな感触。ファヴの唇である。


 が、真に驚くのはその次だった。口移しで口腔に流し込まれた液体は、トカゲと土と各種薬草を煮込んだところにブドウと蜂蜜を足したみたいな味がした。そう、魔力ポーションである。


 ファーストキスがどうのとか言ってる場合じゃない。すこぶる味が悪い。本当に酷い味だ。


「まっずー!」

「起きたな」

「そりゃ起きるよ!」

「よし。ではトルヴァルドを死なせないでくれ」


 ファヴの言葉にハッとして、赤い玉に飛び込んだはずの脳筋を探す。


 ……と、ゴリラがいた。

 正しくは、ゴリラ型の魔物へと転化したトルヴァルドが。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ