だから、言ったのに!
作中の経過時間が、合計時間で1時間も過ぎていない。
流石は、領主の娘。
門の検査が簡略で終わり、盗賊討伐の処理を終わらせて、今、領主館の応接室にて領主ガルバンと話している。
「本当にその様な事で良いのか?」
「はい。それが目的で来たので。」
「分かった。それなら、書状を用意しよう。この街に限定すれば大抵は何とかなるだろう。」
「ありがとうございます。」
これで、この街で自由行動がしやすくなる。
俺達の用事は終わったと言えるが、実はファラの用事の相手が領主だった。
でも、盗賊に捕まった時に、領主に渡す物が有っても没収されたんじゃ、と思ったら、異空間収納系スキルを持っていて、時間停止は無いけど、一辺2mの倉庫分くらいの容量を持っていた。
だから、今、ファラが着ている服はファラの自前だ。
それと、書状の内容は政治的な事なので、俺達は隣の部屋に移動した。
更に言うなら、今回が初めてのお使いだったりする。
ファラのお使いデビューだ!
「しかし、護衛も出来る侍女ですか。」
「いや。逆だ。専属護衛をしていた所に、侍女も兼任する事になった。」
「ああ、そうか。両方出来れば、ランルーダ嬢を表裏で守る事が出来るし。もし、万が一、暗殺者等が迫って来ても、マリナさんという侍女だけなら、油断を誘えるからか。」
「そういう事だ。」
「マリナ、言葉使い。」
「失礼いたしました、ランルーダお嬢様。」
因みに今、マリナはメイド服を着ている。
「次は私の番よ。」
「質問ですか、ランルーダ嬢。」
「ええ。貴方達はどういう関係なのかしら?」
「俺とティアとルシアが幼馴染みで、リンは命を助けた事が切っ掛けで、キサラは勝負に勝ったら懐かれた。」
「……出来ればもっと詳しく。」
「冒険者限定の不文律はご存じですか?」
「いいえ。」
「冒険者の過去は、基本は探らない。これは、一国の王も遵守している。」
「つまり、これ以上は聞くな、って事ね。残念だわ。肩の奴隷紋について聞きたいのに。」
「そういう事だ。」
「ゼロ君も言葉使い。」
「おっと。失礼いたしました、ランルーダ嬢。」
「構わないわ。命の恩人だもの。それに、そういう事を気にしない相手が居るのも悪くないわ。」
「分かった。それで、何故、盗賊に襲われるかもしれないのに、外に出たんだ?」
「私もゼロ君と同じで気になるわ。あ、勿論、話したくない内容なら話さなくても良いわ。」
「そうね。」
話の内容は、このドラドルーエ近辺が原産の華があり、冒険者ギルド等に依頼すれば良いのに、自分で採りに行った帰りに盗賊に遭遇したとの事だ。
マリナさんが、「だから言ったのに!」と愚痴った。
そして、その『華』は、怪我で動けない母親の贈り物で、ちょっと前に酷い事故で怪我を追い、魔法もポーションでも治り切らず、後遺症が残っているらしい。
そこで、俺が気休め程度で良ければ、魔法で治療しようかと尋ねた。
ランルーダ嬢も、気休め程度でしかないと諦めているのか、アッサリと承諾が出た。
部屋を出て、ランルーダ嬢の母親の部屋に向かい許可を得て中に入る。
「この様な格好で失礼します。ランルーダの母親『アンリーナ=パトル=ドラドルーエ』です。」
「俺は、冒険者で星屑の翼でリーダーのゼロです。」
「お母様。此方のゼロ様が回復魔法を使えるという事で来て頂きました。」
「まあ、わざわざありがとうございます。」
あ! こりゃあ、アンリーナさんの方も諦めているな。
「少しでも良くなるように頑張ります。」
「ええ。お願いします。」
俺は許可を貰った上で、アンリーナさんの手を握り、魔力を流す。
俺は、魔力を流す事でそれなりの精度で対象者の身体をスキャン出来る。
……わあ。
本当に酷い事故だったんだな。
治療に関わった人達の必死の努力が伝わるよ。
全身複雑骨折に、何ヵ所かの神経損傷、命が助かった代償と言わんばかりに、これまた何ヵ所かの骨の歪みに、包帯で隠しきれてない裂傷の跡。
この街で一番安全に生きられる筈の女性であるアンリーナさんがどうしてだ?
……まあ、過去はもう良いか。
さて、スキャンも済んだし治療するか。
しかし、無詠唱で完全回復が出来るけど、「え!? 終わった?」みたいなツッコミが入りそうだから、ちょっと演出するか。
1分くらい小さく唸った後、他人が見える様に俺の身体を緑色の魔力で覆って、それを少し貯め、アンリーナさんに移してから詠唱する。
「復元再生!」
また少し間を置いて、アンリーナさんに問い掛ける。
「どうですか?」
「え!? ……嘘!? 痛みも無いし、身体が軽く感じるわ。」
アンリーナさんは不安を隠しきれないまま、自力でベッドから起き上がり、立ち上がり歩いた。
「今までの痛みや息苦しさが嘘の様だわ。」
「……お、お母様ーーー!」
ちょっとランルーダ嬢の声が大きかったみたいで、ガルバンさんとファラが此方に来た。
「どうした! 何が有った!?」
「夫……」
「……アン!? 駄目じゃないか。起きたりしたら、身体が痛いだろう。」
「違うのよ。治ったのよ。」
「……え!?」
「もう、何処にも痛みも無いし、息苦しさも無いの。」
「ほ、本当なの、か?」
「はい。」
「アン!」
ガルバンさんが娘のランルーダ嬢ごと、2人をまとめで抱き締めた。
「良かった。本当に良かった。」
「夫、ご迷惑をお掛けしました。」
「良いだ。そんな事はどうでも良いんだ。アンの身体が治って、笑顔が再び見られるのなら、それで充分だ。」
「良かったね、お父様。」
「ああ。」
俺達は空気を読み、退室した。
廊下で10分程待っていると、部屋の中に入って欲しいと言われて中に入った。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




