領地経営に興味が有るかね?
貴族は体面や面子を気にしますからね。
「さて、のんびりと過ごしたし、此所を離れるか。」
「そうですね。」
「そうだね。アタイ的には少し退屈だったわ。」
ソニア達が帰ってから、1時間くらいのんびりした。
普通はゴブリンとかの襲撃を警戒しないといけないが、俺の存在のお陰でその心配が無い為にゆっくり過ごす事が出来た。
そういえば、何故、ファングタイガーがこんな森の浅い所に出たんだ?
(ゼロ。そういうのを、『フラグが立つ』と言うのだろう?)
(馬鹿!)
(どうした?)
(ツッコミを入れたら、フラグが確定するだろうが!)
「GAAAーーー!」
……ほらな。
「先程のファングタイガーより強いモンスターが出るかもしれないから注意するんだ!」
「はい!」
「分かったわ!」
「……来たぞ!」
出て来たのは、サイクロプス。
あ~あ。倒すのが面倒臭い巨大なモンスターの代名詞の奴か。
モンスターも、こんな奴が暴れたら逃げるよな。
「湖が汚れるのは嫌だな。」
「どうされますか、ゼロ様。」
「キサラ!」
「分かったわ。」
最低でも、Aランク冒険者パーティーが1つ以上居ないと討伐出来ないモンスター「サイクロプス」が、持っていたこん棒を振り下ろした所を躱して、俺は鬼神刀であるキサラを振るい首を一刀両断で仕留めて、異空間収納に仕舞う。
「お疲れ様です、ゼロ様。」
「まあ、『お疲れ様』と言われる程の事じゃないけどな。けど、ありがとう、リン。」
「やっぱり、武器として使われると気分良いわ!」
こうして、俺達は湖を後にしたのだが、次の俺的なトラブルイベントが待っていた。
冒険者ギルドで、仕方なくファングタイガーを売った。
何故なら、ギルドが街とかの外に制定した危険度ランクが有るけど、そこにランク以上のモンスターが出現した場合は冒険者は報告する義務が有る訳で、あの4人が報告している筈だから、俺達が何らかの証拠を出さないと最悪はギルドを敵に回す事になる。
だから、俺達がファングタイガーを持っている事がバレていて、受付嬢の冷たい目に負けて売る事になった。
まあ、大銀貨2枚で売れたし、Cランクのキサラが居るから何とか誤魔化す事が出来た。
そして、ギルドを出ると、俺達をドナドナする為の御一行が待っていた。
「お待ちしておりました。」
優しげな笑顔とは裏腹な「絶対逃がさない」という気迫を漲らせたメイドさん達に囲まれ、上等な馬車に乗せられた俺達が到着した場所は領主館だった。
そうだよなぁ。
領主の娘、しかも、次期後継者を救ったのに招かない訳ないか。
……本人も言ってたしな。
そして、応接室に通され、出された紅茶を飲みながら待っていると領主と多分奥さんにソニアとあの4人が入って来た。
「ソニア。この人達かい?」
「はい。」
「そうか。君達がソニアを助けてくれたんだね。ありがとう。」
「いえ、代価を頂きましたから。」
「それは命を救った護衛からの代価だろう?」
「……」
「護衛から聞いたよ。確かにソニアの裸体は国宝級の価値は当然有るが……」
「お父様!?」
「だからと言って、それは偶然であり、事故だから代価になり得ない。因ってきちんとした代価を払う必要がある。」
「はあ。」
「ゼロ君、だったかな?」
「はい。」
「領地経営に興味が有るかね?」
「……は!?」
「お父様ー!?」
「それ程の強さを持ちながら、頭の回転も悪くないし、何処で習ったかは分からないが、紅茶を飲む時の美しい所作。」
「何処で見たのですか?」
「勿論、隣の……ぶぎゃ!」
俺達に言ってはいけない事を吐露しそうになった領主は、隣に座っていた多分奥さんに肩の回転を生かしたエルボーをコメカミに喰らい沈黙した。
「……え~と!?」
「おほほほ、主人が失礼しました。そういえば、自己紹介がまだでしたわね。」
(惚れ惚れする肘撃だったな。)
(ああ。こういう女性に逆らわない事は男(雄)の運命だな。)
(ああ。同感だ。)
「そうでしたね。俺はDランク冒険者のゼロ。仲間のリンとキサラです。」
「リンです。」
「キサラよ。」
「ファスラの街の領主『カリブア=シチリ=ファスラ』の第1夫人『エレザード=シチリ=ファスラ』よ。」
……自己紹介するべき人物が後1人居るのだが、先程、不幸にもコメカミに綺麗に入った肘撃で眠っている。
「……まあ、この人が『何故か』眠っていても大丈夫なので、話を進めたいと思うのだけど、よろしいかしら?」
「ええ。大丈夫ですので進めてください。」
「それで、主人が寝てしまう前の質問だけど、領地経営に興味が有るかしら?」
「お母様ー!?」
「ソニアは黙っていなさい。ねえ、どうかしら?」
「申し訳ありませんが、お断りします。」
「ゼロ様。」
「何故かしら?」
「俺は冒険者です。辞めるつもりはありません。」
「そう。残念だわ。」
「それに。」
「それに?」
「母親が娘の不幸を願ったら駄目ですよ。」
「あら、知っているの?」
「偶然ですが。」
「仕方ないわね。ソニア。そういう訳だからきちんと堕とすのよ。」
「お、お母様、私とレザックは……」
「あら、私はレザックなんて一言も言ってないわよ。」
「……うー。」
見事な貴族の夫人らしいクスクス笑いにソニアは沈黙する。
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