今です、フィリー様!
聖女、ガンバる。
「貴方達は誰ですか?」
「Dランク冒険者のゼロだ。」
「ゼロ様の奴隷リンです。」
「メンバーのCランク冒険者のキサラよ。」
……うん。
警戒心剥き出しだな。
どう切り出そうかと考えていると、実戦経験の無い、多分神官が緊張感に耐えきれず飛び出した。
「わあああーーー!」
「あ、待て……」
……均衡が崩れた。
最初に飛び出した神官は、途中で足が絡まり転けて、そのまま気絶していて、同じ神官が戦線離脱させている。
そして、神官に流される形で、神殿騎士は俺に対して集中豪雨な攻撃を繰り広げている。
勿論、俺は全て躱しながら当て身を入れて気絶させ、その時に無詠唱で「刻心掌握」を掛ける。
この刻心掌握は闇系魔法の一種で俺のオリジナルだ。
効果は、対象に触れている状態で使い、魔法に掛かった者は俺が魔法を解除しない限り、物理的にも魔法的にも目覚める事が出来ない、という魔法だ。
正直、ゾンビアタックは面倒だからな。
……神殿騎士が半数になった時に、物陰から出てくる集団が現れ、別口の聖女と神殿騎士8人が俺達を囲む。
リンとキサラには付かず離れずに俺の周りに居て貰って、一定以上を離れて、人質にされない様に動いて貰った。
それに、集団心理が働き、後ろからブスりは嫌だしな。
そして、残った最初から居た神殿騎士と後から現れた神殿騎士で魔法陣を描き、予め詠唱をしていたのか、直ぐに魔法を発動させた。
「今です、フィリー様!」
「聖術、聖眼破邪!」
わざと動かず、魔法陣の真ん中で、俺達は向こうが発動させた、対悪魔用の「聖術」を受けた。
「やりました!」
「やりましたね、聖女フィリー様。」
「ありがとう、これも皆のお陰です。」
聖女フィリーという少女の聖術で光り輝いていた魔法陣も鎮まり光が消えると、無傷の俺達が居た。
「ふははは! この程度で大悪魔たる我を滅ぼせるものか!」
「……そんな!」
バコン!
「おう。」
「ゼロ様。悪質な冗談を最悪のタイミングでしないでください!」
「リンも、ツッコミだけは遠慮が無いよな?」
「恐れ入ります。」
「いや、誉めてないから。」
「ゼロ。流石に今のは、アタイもリンと同じ意見だよ。」
「まあ、前回は反応無しでいたからな、今回は、ちょっとヤってみようかと……」
バコン、バコン!
「おう、おう。」
「ゼロ様!」
「ゼロ!」
「ごめんなさい。」
「ぷ、あははは!」
「……はっ! 大聖女ティマ様!」
「皆、大丈夫よ。警戒を解いて。神官の方々も装備は重かったでしょう。外して通常の業務を始めてください。それと、ゼロ様。」
「はい。」
「そろそろ、魔法で眠らせた者達を解放して頂けますか?」
「分かったのか?」
「はい。目の前で見ましたから。」
「それは凄いな。」
パチン!
「……気絶していたのか?」
「大聖女ティマ様!」
「ご無事でしたか。」
刻心掌握で眠らせた神殿騎士は目覚めると最初に大聖女ティマの安否を確認をした。
うんうん。騎士の鏡だね。
この後は、戦場になった参拝の間を通常通りに戻して、奥に隠れていた聖女見習いに任せて、俺達と大聖女ティマに聖女フィリーとそれぞれの神殿騎士達が奥の聖女の間に移動した。
俺達は遅れた理由を話し、大聖女ティリスからの手紙を渡す。
「……そういう事でしたか。」
「理由は何であれ、遅れてしまい、すまなかった。」
「いえ、良いのです。それに、ゼロ様の働きで悲しむ者が出なかったのですから。」
「そう言って貰えると助かる。」
俺はチラっと、小さくなっているもう1人の聖女フィリーを見る。
「フィリー。」
「先ほどは、申し訳ありませんでした。」
「良いよ。大聖女でさえ、警戒心剥き出しになる存在が現れたら仕方ないよ。」
「……ありがとうございます。」
「改めて自己紹介しなさい、フィリー。」
「はい、大聖女ティマ様。私は聖女フィリーです。そして、大聖女ティマ様の後継者です。」
「それは凄いな。」
「いえ、今回の事で急拵えだったので、正式な襲名は当分、先ですね。」
「そんな~。」
そして、大聖女ティマは、俺達に対して、姿勢を正し表情を固くして深く頭を下げた。
「あの件では大変申し訳ありませんでした。」
「何の事だ?」
「ゼロ様を襲った騎士達の事です。」
そして、大聖女ティマの説明が始まった。
何時まで経っても帰って来ないモグル達を迎えに行った神殿騎士達は現場の無造作に置かれた首級だけの状態に恐怖し、鎧に書かれたメッセージに驚愕したらしい。
その報告を聞いた大聖女ティマは信頼していた心の拠り所を失い寝込んでしまい、数ヶ月、寝たきりだった時に大聖女ティリスからの手紙を受け取った。
そして、手紙を読むと信じられない内容に再び寝込み、やっと回復すると、手紙の内容を調査した結果、手紙の通りだった事が判明した。
大聖女ティマは大聖女ティリスに手紙を送り、俺達に直接謝罪したいと手紙でお願いした。
……というのが、一連の流れだった。
「謝罪を受け取ろう。」
「ありがとうございます。」
「リンはどうする?」
「憎しみが無いと言えば嘘になりますが、今更、謝罪されても喪った人達は還ってきません。」
「……ごめんなさい。」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




