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魔界を制覇した鬼畜だもんな。

同年代の少年、少女の鼻をへし折るゼロ。

「まさか、講師として通う事になるとはなぁ。」

「何か言った、ゼロ。」

「いいや。」

「ゼロ様。時間が迫っています。」

「分かった。」


 俺達は今、王立学園に向かっている。

 学園長レビィナの依頼で2週間、実技担当の講師として通う事になった。

 簡単に言えば、全生徒を倒せ、だ。

 まあ、ティアやルシアが居ないから良いか。

 ……そう言えば、第3王女のフェリシア様やあの時に助けた子もいたな。

 名前、忘れたけど。

 適当な時にでも名簿を確認すれば良いか。

 一応は、国法で王立学園内での身分に因る示威行為は許されないとなっているが、教師という管理者が居ない所では意味無いけどな。


 学園に到着して案内の人に付いて行き、学園長室にノックして返事を貰ってから入る。


「あら、きちんと礼儀を持っているのね。」

「それなりの知識と経験を持っている方に教わったのでね。」

「そうなの。さて、ゼロ。此方(こちら)の方が貴方の担当のクラーチェ=フラン=オキジーです。」

「貴方の担当で質問等は私に聞いてください。それと、クラーチェと呼んでください。」

「Dランク冒険者のゼロです。此方はパーティーメンバーのCランク冒険者のキサラと、俺の奴隷リンです。」

「何故、奴隷を?」

「冒険者としては普通ですよ。後、俺も男なんで自炊、洗濯が、ね。」

「そうですか。その割には身嗜みもしっかりしてますし、肌の艶も良いですわね。」

「恩人から託されたのでね。」


 勿論、嘘だが、こう言えばゴマかされるだろう。

 この事はリンやキサラにも言ってあるから大丈夫だ。


「そうだったのですか。」

「話はそれくらいにして、早速、次の授業からお願いするわ。」

「分かりました、レビィナ学園長。」


 目的地まで、軽く雑談しながら歩く。

 この学園内は身分に因る示威行為は禁止されているが、教師も同じで、このクラーチェさんも、実家が伯爵家らしい。

 後、既婚者で14才の長男と12才の次男と10才の長女がいると話してくれたが、そこまで話して良いのか?

 それとも、俺に対する大穴狙いの青田買いか!?

 ……多分、違うよな。

 きっと、クラーチェさんは、「素」で話してくれたのだろうな。


 さて、目的地である実技用の練武場に到着したのだが、生徒の視線が痛いな。

 それなら、身分と血統だけでは、越えられない壁を教えるとしますか。


「これから授業を始めますが、先に連絡した通り、今日より実技の講師をして頂く、冒険者のゼロさんです。後、パーティーメンバーのキサラさんとリンさんです。」

「クラーチェ先生。」

「はい。何でしょう、レンド君。」

「実技の講師といっても、ボク達と年齢が近い様に見えますが?」

「確かに年齢は近いかも知れませんが実力は確かです。」

「それじゅあ、試させて貰う。」

「良いですか、ゼロさん。」

「ああ、構わない。」

「それでは、レンド君に、アールブ君に、フェリシアさん。前に。」

「「「はい。」」」

「3連戦になりますがよろしいですか?」

「勿論。」


(穏やかな顔して、キツいな。)

(……そうだな。)

(どうした?)

(何か、思い出しそうというか、懐かしいというか。)

(とりあえず、目の前の問題を片付けようぜ。)

(ああ。)


「初めは、レンド君からです。」

「しっかりと講師として有用か確かめさせて貰う。」

「形式は?」

「格闘戦で。」

「分かった。」


 レンド君とやらが、そう言うと、見学の生徒が囁き始めた。


「レンド君も(したた)かだよね。自分の得意分野を持って来るんだから。」

「そうだよな。」

「確か、この都市に屋敷を購入してて、授業が終わったら、屋敷に行って雇った高名な武闘家に指導を受けているんだろ?」


 うわぁ。

 卑怯だよな。


(そうだな。幼気(いたいけ)な少年の相手が魔界を制覇した鬼畜だもんな。)

(ライオスはどちらの味方だ?)

(勿論、無知な少年だ!)

(ライオス~。)


「それでは準備は良いですね?……始め!」

「レンド君……だったかな? 其方からどうぞ。」

「では、お言葉に甘えて。」


 レンド君の猛攻が始まったけど、何時、気付くかな?


「この! せい! はあ! やあ!」

「おい。何か可笑しくないか?」

「ああ。何か変だ。」

「あ!?」

「どうした?」

「新しく来た講師の足が殆ど動いてないわ!」

「本当だ!」

「……ふざけるな!」


 あらら、バレたか。

 そうなんだよな。

 全くは流石に無理だけど、意識の中で重心地を中心にして30cmの円を引いてその円から足が出て無いんだよね。

 しかも……


「おい。見ろよ!」

「どうした?」

「レンドの腕や足や首とかの肌が露出している所が!」

「あ、赤い線が付いているわ。」

「本当だ!」

「つまり、避けるだけじゃなく、攻撃もしていたって事!」


 正解!


「それまで!」

「ハアハア……」

「鍛練を充分に積んでいるな。」

「くそっ!」


 おいおい、貴族がそんな言葉を使ってはいけないよ。


(そう思いながら、幼気な少年の高くなった鼻をへし折ったのだった。)

(おい、ライオス。)

(何だ、鬼畜悪魔ゼロ。)

(何か、ライオスに恨み買うような事をしたか?)

(いいや。単に昔もやってたなぁって、思い出しただけだ。)


「次、アールブ君。」

「はい。」

「アールブ君はどうする?」

「魔法戦で。」

「分かった。」



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