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俺の彼女は…  作者: イスカンダル
2章 青春かくれんぼ
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28/59

ようやく俺達は青春へと一歩踏み出せれる

 二月も半ば。約、五日間にも及んだテストも今日で終わり、教室の空気は疲労の溜息などで賑わっていた。

 

 「はぁ~。終わったね。ゆうちゃん。」


 「あ?あぁ。そうだな。」


 ようやく終わったテストに教室に残る生徒同様、伸びなんかをしていると桜木がやってきた。


 「どうだった?」


 「ん、まぁ。お陰様でボチボチってところだな。」


 そう。何を隠そう。俺はテストの三日前にも関わらず、課題すら終わっていなかった。それが全て終了できたのはそれも何を隠そう桜木のお陰である。

 部活の再起動を可能にし、家に帰るが早々、桜木は俺に机へと向かわせた。それまでの疲労。睡魔などに襲われていた俺の体は必死に桜木から逃れようと企てる。

 だが、しかし。俺が雇った(というよりも勝手に付いてきた)桜木先生はそんな事、許してくれる筈がない。

 無理にでも机に座らせ、トイレの中以外の徹底監視。(最初はトイレ内まで付いて来ようとしていたのだが‥)

 まぁ、そのお陰とも言いますか溜まっていた課題は見事に消費。次いでに分からない問題も教わりで諦めていたテストもいつも以上にできた。


 「さすがはゆうちゃんだね。やれば出来る子だ。よしよし。」


 「恥ずかしいからやめい。」


 頭に手を乗せ、撫で撫でしてきた桜木の手を叩き落とす。こんなとこ、見られたらまた変な噂が広まる。辺りをキョロキョロ。確認。

 よかった。皆、テスト終わりで疲れているのかこっちには目を向けていない。


 「それより、部活行くぞ。今日はHRもねぇんだ。」

 

 言うが早いか俺は机横に掛けた鞄を肩に掛ける。


 「あっ、うん。そうだね。待ってよ。ゆうちゃん。」


 俺の後を追うよう、桜木は急いで自分の席へと向かった。仕方なく俺は歩く歩調を緩める。


 「もう、二人共来てるかな?」


 「さぁな。」


 部活など俺には無関係のものだと思っていたのだが。よもやそんな会話を口にする日が来るとは。

 俺はそんな事を頭に浮かべ、部室へと向かった。かつて弁当を食べる為だけに訪れていた場所はもう立派な部室なのだ。


 *****************


 ガラーッ。


 音を発て、扉を横にスライド。


 「あっ、遅いわよ。あんた達!」


 「お、おぉ。悪ぃ。」


 中に入ると早々、大きな声を上げたのは金髪ツインテールの蔓実 香澄だった。


 「やっぱ、お前はそっちの方がいいわ。」


 「う、煩いわね。別にあんたに頼まれたからじゃないんだからね。これは私がしたいからしてるだけなんだから。」


 頬を赤色に染め、言う彼女に説得力など皆無。俺は「はいはい。」などと適当な返事を返してやった。


蔓実が元のキャラ?に戻ったのは何も俺だけの意見ではない。蔓実自身、前のキャラには慣れていなかったとの事だ。

 考えてみればいきなり変えろと言う方が無理な話。第一、俺も正直蔓実のあのキャラには違和感を感じていた。だから蔓実がツンデレキャラに戻ってくれたのは、ほっと胸を撫で下ろすようなものだった。


 「ところで、二人はテストの方どうだった?」


 ギャーギャーと何事かを言っている蔓実を宥めるように桜木が話題を振った。


 「う~ん。私はまぁまぁってところかな?」


 まず始めに答えたのは椅子に座って携帯を弄っていた波瀬。そして続いて蔓実も声を繋げた。


 「私も同じよ。あんた達とは受けたテスト違うけど。まぁ、まぁよ。」


 「って、おい。お前、学校来はじめたの最近だろ?勉強とかする暇あったのかよ?」


 実際、蔓実が受けたテスト問題は一年生の始め。基礎的な問題だ。だが、それでも数ヶ月、家に篭もりのニートをしていた彼女である。いきなり学校に来てテストは鬼畜すぎる。

 そう思って言ってはみたのだが。どうやら蔓実はどうとも思っていなかったらしい。


 「は?あんなの一夜漬けで十分でしょ?そんな難しい内容でもなかったし。」


 「あっ‥そう。」


 彼女も彼女でまた普通の人間ではなかったようだ。一夜漬けなど限られた人間が可能とするもの。一日で頭詰め込むとか普通、無理だから。

 凡人は努力あるのみ!

 まぁ、かと言って俺が努力してるかどうかは言わなくても分かろう。‥いや、してるけどね!毎日、生きる為の努力は欠かさずしてるけどね!


 「ところでさ~。この部屋、部室っぽくないんだけど?」


 「ん?あぁ、言われてみれば確かに。」


 言われてみれば机と椅子が並ぶだけの教室と何ら変わらない部屋。アニ研の面影もない。


 「でも、具体的にはどうするの?」


 首をキョトンと傾け、問いてきた桜木。アニメは見ていないわけではない桜木だが(俺が見せているだけなのだが)こう言った類の事に関しては疎い。


 「そんなの適当にポスター貼ったり、本棚とかどっかからかっぱらって来て漫画やらラノベやらを収納したり、色々だろ?」


 言ってはみたがそれが本当にそうなのかは分からない。所詮はそれっぽいアニメでの受け織りにすぎない。

 ソファーとかテレビとかパソコンやら後はなんと言っても茶菓子。それがあれば部室として成り立つ。(俺持論)


 「まぁ~、そういうのはどうでもいいとして取り敢えず、買い物行かない?どうせ、部活ってもやることなんてないでしょ?」


 「いや、まぁ。確かにないけども‥。」


 実際、アニ研なんていつやる事が出来るの?って話だ。アニメ研究して本でも出すんでしょうか?確かに最近、そういう本見ますけど‥。


 

 「じゃぁ、決まりね。ほら、麗華も行こっ!」


 「はいはい。」


 久し振りの学校でテンション上がってるのだろうか?いつしか見せていた陰気な表情など微塵も見えない。それが素なのか、はたまた仮面を被っての演技なのかは分からない。それでもまぁ、蔓実 香澄はこうである。付き合いもまだ一週間くらいの俺が何を言ってるのだか‥。

 そうは思うが思わずにはいられない。


 「じゃぁ、行くか。」


 「うん。何だか、楽しいね。ゆうちゃん。」


 「あ?そうか?」


 「うん!」 


 何が楽しいのか?結局、やってる事は何ら変わらない。学校帰りに寄り道して買い物するだけだ。それが人数増えただけ。

 

 「いつもと一緒だろ。」


 呟いた言葉はどうやら誰にも届かなかったらしい。もう既に皆は部屋から出ていた。別に聞かれたいとか思っていなかったのでいいのだが。


 「はぁ~ぁ。」


 溜め息を大きく吐き出し、俺も最後。扉をスライドさせ、皆の後を追った。

 何ら変わらない日常も何かは変わっているのかもしれない。だが、それでもあいつらが変わるのはもう少し先なのだろう。

 止まり、俺を待っているあいつらに迫りながらもそんな事を思ってしまった。

 

 *************


 ガヤガヤ。きゃきゃ。「毎度、ありがとうございました!」


 今日も今日とて賑わう商店街。平日の昼頃だってのに何でこんなに人はいるのだか・・。


 「んで?俺達はここに何しにきたわけ?」


 前の方できゃっきゃ。うふふ楽しそうにしている三人とは正反対。ジト目を両目に宿し、俺は三人へと声を掛けた。


 「は?あんた馬鹿?見れば分かるでしょ?」


 「いや、俺には普通に買い物を楽しんでる女子高校生にしか見えんのだが‥」


 何で唐揚げ片手に持ってんの?夏祭りじゃねぇんだから。


 「分かってんじゃない。」


 呆れたようにそう言う蔓実。だが、騙されるわけにはいかん。そんな女子高校生の学校帰りに付き合いに来たわけじゃないのだ。

 

 「いや、部室の物資購入が目的じゃなかったのかよ?何で普通にショッピング楽しんでるわけ?」


 なんていうかとても気まずい。疎外感が半端ない。てか、桜木もこっち側だよね?何で、お前もあっちサイドできゃっきゃ。うふふしてるんだよ。


 「まぁ。まぁ。楽しいからいいじゃん。ゆうちゃん。」


 「そうそう。新戸君にも上げるから。文句言わない。」


 宥める桜木。自身の唐揚げを一つ、俺に差し出す波瀬。

 え?俺が悪いの?


 「それよりも今度はゲーセン行こうよ。皆でプリでも撮らない?」


 「プリ?プリってプリクラのこと?僕、初めてだから緊張するよ。」


 「まぁ、記念って事でいいんじゃないの?」


 「いや、待て。待て。そういうことなら俺は帰るぞ。じゃぁ、また明日な。」


 このままではいかん。そう思い、早々の離脱を試みたのだが無理でした。


 「駄目だよ。ゆうちゃん。ゆうちゃんも一緒。」


 がしっと片腕掴まれ、逃げれない。相変わらず、見た目とは相反する力の強さ。この時だけはあの時の椚を同情する。


 「そうよ。あんたも部員の一員なんだから付き合いなさいよ。」


 「そうそう。一人だけ別行動は駄目だよ。」


 「あっ‥いや。俺は‥。」


 桜木に続いて残りの二人にも帰りを阻まれる。言葉など聞いてくれる筈もなく俺はそのままゲーセンへと共にする。いや、だから。何しに来たの?



 「に、しても皆、暇人かよ?」


 ゲーセンの中はまぁ、言う程に人はいなかったものの全くのゼロではないし、そこそこに人がいた。響く音楽やら人々の声やら、操作中の音やらが混雑して中はゲーセン特有の空間を作り出している。


 「まぁ、僕達もその中の一組みなんだけどね‥。」


 はは。と笑いを加えての発言。まぁ、はい。そうですね。


 「まぁ、何にせよサクッと済ませて早く帰ろうぜ。」


 どうせ、この後も買い物などする気がないのだろう。辺りをキョロキョロ。プリクラ機を捜す。


 「ほんと、あんたってつまんないわね。ゲーセン来て遊ばないなんてあんた本当に人間?」


 「いや、残念ながら人間やってますけども‥。」


 何?俺、変なこと言った?そんな思いを諸に出して蔓実へと返すとその当人は呆れたような溜め息を吐き出して首を振った。


 「はぁ~。分かってないわね。取り敢えずあれやるよ。」


 「は?」


 そう言って蔓実が指差したそこは一台の台。


 「エアホッケー?」


 ハテナと言わんばかりに俺がそう言うと蔓実は、はりきって首を縦に動かした。


 「そうよ。せっかく四人いるんだからやらなきゃ損でしょ?」


 「いや。俺達、アニ研であってエアホッケーとは無縁だろ‥。」


 何が損なの?逆にお金を取られるんだからやる方が損なんじゃないの?

 と、そんな俺の意見が採用されるわけなく‥。


 「じゃぁ、いいわね。これに負けた方がご飯奢りだからね。」


 嬉々とした。それでいて好戦的な声を発した蔓実は一つ。マレットもしくはスマッシャーと呼ばれる器具を掴む。

 

 「へいへい。てか、何で俺が‥」


 「もう、ゆうちゃん。ぶつくさ言わないの。せっかく蔓実さんと波瀬さんが学校に来てくれてこうして部員として僕達を迎えてくれたんだから。こんくらいの我が儘は聞いて上げようよ。」


 「お、おぉ。」


 横隣に立つ桜木はどうやら彼女達に合わせていたらしい。まぁ、確かにそれを言われれば何とも言えない。こうして笑顔を振舞っている彼女達も実は必死なのかもしれない。必死でこれまでで失った時間を取り戻そうとしているのかもしれない。そう思うとやはり俺には彼女達の我が儘及び、その他諸々に付き合わなければならない。


 「はぁ~。分かったよ。だが、やるからには本気でやるぞ。相手が女だからって手は抜かねぇからな。」


 「はは。ゆうちゃん。やる気だねぇ~。」


 「ったり前だ。飯、奢るとかもう無理だから。今月、生活できないから。」


 ほんと、今月。特に今週はお金掛かりすぎ。絶対に負けられない戦いがここにある。ってもんだ。


 「んじゃ、準備はいい?お金入れるから。」


 そう言うと蔓実はそれぞれから回収した百円玉を四枚。機械の中へと投じる。

 程なくして喧しい音楽が流れ、蔓実サイドの方にパック(プラスチックの円盤)が音を発て、現れる。


 「んじゃぁ、いくから。」


 言うが早いか蔓実はパックを思いっきりこっちへと打つ。

 カコンッ。と言った音を響かせ、パックは一直線。俺と桜木の真ん中へと向かってきた。


 「あっ‥」


 「おっ・・。」


 俺達は共にそれを見送る。


 「へへっ。私、こういうの得意だから。」


 向かいの蔓実は自慢気な表情を顔に浮かべていた。確かにコースといいスピードも言う程のことはあった。

 が、しかし。それでホイホイ負けを認める程、俺は甘くない。なんたって生活がかかってんだ。


 「は?たかだか一点、決めただけだろ?直ぐに取り返すっての。」


 「はいはい。そういうのは負ける奴が言う台詞だっての。」


 完全に余裕顔。その顔にイラっときたのは言うまでもなかろう。


 「へっ、スポーツは頭脳戦だってことを思い知らせてやるぜ。」


 言い、俺は取り出したパックを台の右サイドへと叩きつける。

 カコンッ。カコンッ。カコンッ‥。音を三回程。パックはイナズマ模様を描くような進行で彼女らのゴールへと向かった。


 よしっ!入れぇぇぇ。


 心中で叫び、早くの同点を頭に思い浮かべる。‥のだが。


 カコンッ。


 「え?」


予測不可能な動きをしていた筈のパックは俺達のゴールへと入っていた。


 「甘いっての。あれでスピードがあったら厄介だったけどそうでもなかったからね。」


 「・・・・・・・。」


 蔓実は俺が打ったパックを直ぐ。素早い動きで打ち返してきたのだ。それも一切の無駄なく、さっき同様。俺と桜木の中央を狙って。


 「ほら、次もあんた達の番よ。時間制限もあるんだから早くしてよね。」


 「くっ‥ここまでか。」


 本気で悔しい。こんなところでまたも生活費を犠牲にする羽目になろうとは‥。もう、削るべきものねぇぞ。

 などと本気で悔やんでいると。


 「ねぇ。ねぇ。これってどういうルールなの?」


 「へ?」


 袖を引っ張られた方を見るとそこには桜木がマレットを持って首を傾けていた。


 「まさかお前、ルール知らねぇのか?」


 「え?う‥うん。」


 恥ずかしそうに白状する桜木。てか、今までのやり取り見れば大体、分かるだろ。


 「はぁ~。そうか。まぁ、ゲーム始まってるし手短に言うとだな。ようはあいつらのゴール。つまりはこの空洞にコレを入れればいいんだ。」


 「それだけ?」


 「あぁ。まぁな。」


 本当に簡単に説明してやると桜木はふ~んと一言。こう言った。


 「なら、簡単だね。来たコレをただ打てばいいだけだもんね。」


 「あっ‥いや。まぁ、そうなんだが。」


 ルールを言えばそうなんだがこれが案外難しいのだ。以外に蔓実が強敵であるし。


 「じゃぁ、取り敢えずやってみるよ。真ん中きても僕が打つからゆうっちゃんは手、出さないでね。」


 「お、おぉ。」


 何か気のせいでしょうね。桜木の背後からみなぎる闘志的なものが見えるんですが‥。案外、コイツ。負けず嫌いだかんな。


 とかなんとかゲームは続行。俺からの攻撃でまたもパックはイナズマ模様の進行を描く。


 カコンッ。


 またも蔓実に高速で返される。一直線。コースもさっきと同様。桜木には手を出すなと言われたがどの道、手を出せれるようなスピードでがなかった。

 これは桜木も難しいんじゃ‥?

 とかなんとか思っていた時期も俺にはありました。ていうか本当に一瞬なんだけど。


 カコンッ。ガンッ。


 蔓実が打ち返してきたものを桜木は更に速いスピードで返した。これには相手さんも手が出せれなかったようだ。桜木が打ったモノは音を発て、相手サイドのゴールへと落ちていた。


 「へ‥へぇ。少しはやるようね。」


 「ん?あれでいいの?ゆうちゃん。僕達の方に点が入ったけど?」


 「いや、あぁ。おめでとさん。」


 どうやら桜木はまだルールに関して曖昧なようだ。ただ、まぁ。さっき打ち返したパック。俺も目で追えなかった。さすがは桜木さんだ。何でも難なくこなす。


 「ふふ。どうやら私も本気を出すしかないみたいね。」


 カンッ。ガコンッ。


 言うが早いか直ぐに打ってきた蔓実。そのスピードは言う程あってさっきよりも上がっている。


  「はは‥。ゆうちゃん。僕も少し燃えてきたよ。」


 「あっ‥いや。桜木?」


 何か蔓実と桜木が燃え出してる。たかだかゲーセンのエアーホッケーだよ。お二人さん?


 と、まぁ。その後のゲーム運びはご覧の通り。蔓実と桜木の一騎打ちみたくなっていた。そしてゲーム終わり。二人の超人的なゲーム観戦に集まってきたギャラリー。その人等から盛大な拍手を貰った。

 俺と波瀬はただ単純に居心地悪かった。目とか合って初めて人の心を読めた気がした。

 ほんと、百円返せよ。



 「はぁ~。楽しかった。」


 エアーホッケーが終わって、直ぐにプリクラたるものを撮るものだと思っていたのだが存外、そうではなかった。その後はUFキャッチャー。その後は格ゲー。その後は音ゲー。その後は‥。

 とまぁ、長きに渡るゲーセン巡りの最後に本命(俺にとってはそれもそうではないのだが)のプリクラを撮り終えた。


 「いや、待て。ほんと、何しに来たんだよ?」


 耳に響くようなゲーセンを出た俺は疲弊の状態を隠せず、苛立ちの心境も隠せずにそう言う。


 「何って?買い物でしょ?」


 「いやいや。何も買ってねぇだろ?買ったの唐揚げだけだろ?」


 俺はそれすら買ってないけどね。


 「新戸君。何、怒ってんの?楽しかったからいいじゃん。」


 「いや、だが‥。」


 楽しいという言葉を言われれば何とも言えない。彼女達は長らくその楽しいから掛け離れた生活を送ってきたのだ。だから、楽しいなどと面と向かって言われれば言葉に詰まる。


 「まぁ、いい。もう、遅いし帰るぞ。てか、俺は帰る。」


 時刻は早いもので黄昏時。帰る前に夕飯の買い物にでも行くか。

 そう思い、早くに背を向けたのだが。その背中を呼び戻すような声が響いた。


 「ちょっ、ちょっと。待った。」


 「は?まだ何かあんのかよ?エアーホッケーでの賭けは同点で時間切れたんだから無しになっただろ?生憎、俺は貧乏なんでね。これ以上、金を使ってる余裕はねぇんだわ。」


 意識などしていなかったのだが皮肉っぽい言い方になってしまった。だが、言い直すのも恥ずかしかったので俺はそのまま背を向ける。

 

 「ちがっ、違う。どうしても行きたい所があるのよ。少しでいいからあんたも来てよ。」


 「はい?」


  蔓実のキャラが元に戻ったか?ツンデレキャラに戻った彼女がこうも必死に俺なんかにお願い? 

 そんな思いで後ろに首を回す。

 するとそこには俯き、顔を赤らめた蔓実の姿が。


「はぁ~。分かったよ。だが、本当に少しだからな。後、本当に金は出さねぇぞ。」


 頭をポリポリ。俺は溜息と共にそう言った。


 *********************


 「って、嘘っ!桜木って男なの?」


 「うっ‥うん。まっ、まぁ。」


 目的の場所へと向う道中。何の会話の流れかは忘れたがそんな話題が上がった。


 「いや、言ってなかったか?てか、お前以外は多分、皆知ってるぞ。」


 俺も答え、賛同を求めるように波瀬の方へ目線を向ける。


 「うん。私も最初は半信半疑だったんだけどね。どうやら本当みたいよ。」


 「は‥ほぉ~。あんたが男ねぇ~。」


 親友からの証言を聞いたからかどうか素直に納得する蔓実。品定めするかのような目線を桜木へと向けていた。


 「そ、それはそうと蔓実さん、まだなの?」


 その目線に耐えられなかったのだろう。目線及び、その会話から逃げるように桜木が声を上げる。


 「う~ん。もうそろそろかな?あっ、見えてきた。」


 「はぁ~。やっぱりここか?」


 歩く道。その時点で俺達は予想していた。蔓実がどうしても俺達と行きたいという場所。そこは前にも来た場所である。


 「‥前の仲間はまぁ、アレだったけどさ。一応、仲間だったから‥。」


 これまで元気で明るい蔓実だったが今ではその声も雰囲気も少し暗い。


 「そうか。で、カメラは持ってんのか?」


 蔓実が全部言わなくとも分かる。ここに来た理由も。ここで遊んだ理由も。ここで写真を撮ろうと言う理由も。

 彼女達にとってここは最初で最後。アニ研の皆が楽しい思い出として残した場所なのだ。だから、彼女達はここで遊び、笑い、楽しんだ。あの日のように。


 「え?あぁ。うん。勿論。‥てか、何も訊かないんだね?あんたは?」


 一風。その場に風が舞う。誰もいないこの場。風が心なしか温度以上に冷たく感じた。

 

 「今更、訊くもんもねぇだろ。第一、お前もそんな言いたい事でもねぇだろ?」


 「うっ‥うん。」


 蔓実を見て、そして波瀬の方にも視線を向ける。


 「はぁ~。さみぃしさっさと済ませんぞ。早くタイマーセットしろよ。」


 蔓実がこの場所で写真を撮る理由。それはきっと、忘れない為だ。あの時の写真は俺が破いてしまったからもう無い。だから、彼女はもう一度、同じ場所で部活メンバーと写真を撮ろうと思ったのだ。この場所で映ったかつての仲間との笑顔も忘れない為に。


 「‥違うよ。それだけじゃないよ。」


 「は?」


 デジカメのタイマーを待ってる間。ふと隣りから声が伝わる。


 「蔓実さんも波瀬さんもここから一歩踏み出すんだよ。過去は忘れない。けど、それを踏まえて僕達を仲間と迎える。この写真は彼女達の決意なんだと僕は思うな。」


 決意。

 過去を背負い、現在(いま)を受け入れる。そう桜木は言うのだ。


 「‥そうかもな。」


 俺は静かな声音で桜木の意見に同意した。


 パシャッ。


 その日、映った写真。俺も最大限の笑顔を顔に刻んだ。それが偽ったものでもだ。

 彼女達の決意を俺一人の顔で台無しにはしたくはなかった。


 ただ。‥ただそれでも結局は俺達がやってることは青春の真似事なのだ。ゴッコ遊びと変わらない。

 そんな事、分かっていた筈なのに。俺はその時、それに気付けなかった。

 この世界は思ってる程に綺麗な世界ではないのだ。白があれば黒がある。当たり前のようなそれを俺達はまだ知らなかった。


 青春は普通の人間しか謳歌できないのだ。


 その日の風が冷たかったのはそんな予告状の一種だったのかもしれない。そう感じるのはもう少し先なのだが‥。

偽りの連鎖はやはり断ち切る事は出来ないようだ。

第二章 完結です。ここまで読んで頂いてる方には感謝の限りです。お気に入り登録してくださってる方もありがとうございます。

 次回の投稿は二週間後を予定しています。

 次回も目を止めて頂けると嬉しいです。

 では、では~。

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