誰だよ、このオークに負けそうな金髪くっころ女騎士は!?
数分後、俺は『収納』から戻ってくる。辺りはまるで魔王が攻め込んできたかのような惨状だった。
城は崩壊し、その瓦礫は街にまで広がっている。なんてことだ、いったい誰がこんなことを。
いや、俺だよ。
そんなことを一人突っ込みを入れていると
「あ、この変態、無事だったのね」
メインヒロインのアリスちゃんが駆け寄ってくる。
……ちょっと待て、この崩壊で生きていたのか、この子。
「無事だったみたいだな。この変態」
サブヒロインのミアも無事かよ。
お前も生きてるのかよ!
「貴様は私が倒すと言ったはずだ。これくらいで死なれては困るぞ、この変態」
誰だお前!?
気が付けば、見覚えのない女騎士まで混ざっていた。
多分、もっと後半で、仲間になるキャラだろうな。
「ふふ、やっぱり私が見込んだ男ね。この変態」
うお、出た。ギルドの受付嬢!
実はこの人、世界が恐れる魔女で最強クラスの戦力という設定だったな。
で、なに、この状態。全員が集まってまるでエンディングみたいな……。
『Thank you For Playing』
エンディングじゃねえかよ!? 終わりかよ!!?
なにこれRTAか何かか!?
画面が暗転し、何もない空間へと戻される。
「……はぁ~」
思わず大きなため息が漏れる。
俺はすぐに涼太へ電話をかけた。
『おう、健一か。どうした? まさか俺の小説の良さが分かって電話してきたな?』
「クリアした」
『ん?』
一瞬の沈黙。
『……なんて?』
どうやら一回では理解できなかったらしい。
「だから、クリアしたんだって」
『はあぁっ!?』
電話越しに絶叫が響く。
『クリアしたって、お前まだ始めて一時間くらいしか経ってねえだろ!?』
そんなこと言われてもな。
クリアしちまったもんは仕方ない。
『イセノベのプレイ時間ってのは、基本的に小説の文字数に比例するんだよ! 俺の作品、50万文字はあったんだぞ!? どう考えても不可能だろ!』
「いや、城があった場所に城を落としたらクリア扱いになった」
『ごめん。何言ってるのか分からない』
そりゃそうだ。
俺だって説明なしで聞かされたら意味不明だと思う。
仕方なく俺は、『収納』スキルを使って城をいったん収納させ、そのまま元の場所へ落下させた結果、なぜかクリア扱いになった経緯を説明した。
そういえば、この小説のラスボスって王様に憑依した何かじゃなかったっけ、忘れたけど。
つまり憑依する前に倒しちゃったからクリア扱いになったてわけだな。
『『収納』って普通そういう使い方するか?』
「え? むしろ何でしないんだ?」
『俺がおかしいのか……?』
電話の向こうで涼太が本気で悩み始めた。
だが、終わったものは仕方ない。
涼太の世界はあっという間にクリアしてしまったが、このゲームには無数の異世界が存在する。
次はどんな世界だろう。
そう思うと自然と胸が高鳴った。
「そういえばさ、このゲーム、主人公の名前自由に決められるんだな」
『そりゃそうだろ。やっぱ自分の名前入れて没入感を高めたり、ハーレム作ったりするための機能だしな』
「へぇ」
『お前は何て名前にしたんだ?』
「『この変態』」
『…………は?』
電話越しでもドン引きしているのが伝わってきた。
『お前、異世界行って何してんだよ……』
「いや、考えてみろよ」
『何をだ』
「ヒロインたちが満面の笑みで『この変態♪』って呼んでくれるんだぞ?」
『…………』
一瞬の沈黙。
そして。
『それは……ちょっとアリかもしれん』
「だろ!?」
『だな!』
やっぱり。
だから俺たちは親友なんだよ。
「逆に全裸の兵士のおっさんにこの変態って言われた時は引いたけどな」
『いや、何でそんな状況になってんだよ!?』
「とにかくさ、このゲームヤバいな。ハマるわ」
俺はこの異世界ノベルオンラインの凄さを改めて実感した。
これはフルダイブ型VRで異世界に行けるだけじゃない。このゲームの真の凄さは、ネット小説そのものの世界に入り込めることだ。
完結済み作品はもちろん、連載が止まっている作品の続きだって遊べる。
さらには「もし主人公が別の選択をしていたら?」みたいなIFルートまで体験可能。
もはや異世界好きにとっては夢のようなゲームだった。
まあ、まだ一部バグやらAIが追いついていないけどな。
「さて、次はどんな異世界を冒険しようかな」
『ははは、それじゃあスローライフなんかやってみたらどうだ? あれなら長いだろ?』
スローライフか、確かにほのぼのしてて悪くないよな。確か凄いヒットしたスローライフとかもあったよな。
よし検索してみるか。
いやあ、検索したら出てくるわ出てくるわ。
ある程度スクロールしていくと目的のタイトルを見つけた。
「あった、こいつだ。スキルは『作業台』で。ええと、タイトルは『追放されたから辺境で一人のんびり暮らそうと思っただけなのに、ハズレスキル【作業台】が万能すぎた~家を建てたら城になり、畑を作ったら国家の食料庫になり、趣味で作ったゴーレムが伝説の守護神になった結果、無自覚のまま世界最強勢力の主になっていた~』 か」
いや、長いよ! クッソ長いよ!! なんだこれ、罰ゲームか何かか!?
だが、こいつはなかなかヒットした作品だ。もちろん、俺も読んだことがある。
よし、今度はこいつをやってみるか……!
俺は小説をダウンロードしてネット小説の世界へと入っていった。




