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5、切り捨て


山﨑が裏切ってからの放課後となった。

俺は帰宅の為に準備をしていると教室に七瀬が来た。

七瀬は俺を見てからニコッとする。

それから「先輩。帰りましょう」と笑顔になる。

そしてその言葉に赤面して「お、おう」と返事をしていると。


「ぁ?」

「あぁ?」

「アン?」


クラスメイト達が全員、ぶち殺し確定ね、的な感じで見てくる。

俺は苦笑いでその気配を感じながら七瀬を見る。

七瀬はニコニコしながら俺の腕に自らの腕を絡ませる。

それから俺を引っ張った。

俺は慌てて智和に向いてから叫ぶ。


「す、すまん。智和。どうにかしておいてくれ。クラスを」

「あー...貸しだぞクソッタレが。お前は死ぬ運命だからな」


そして智和は俺の側に回ってから襲い掛かる亡者どもを抑え込む様に走って行った。

まるで敵に立ち向かう勇者の如く。

俺はその姿に苦笑いを浮かべながら七瀬を見る。

七瀬は構わず走っている。


「おい!七瀬!俺は運動不足人間だ!そんなに走れない!」

「先輩。そんなんじゃ女の子は守れませんよ」

「お前と構造が...オイ?!話を聞け!」


それから俺達は下駄箱から靴を出してからそのまま神社の前まで走って来る。

七瀬は「あはは」と言いながら汗を流す。

俺は息切れしながら七瀬を見る。

そして膝に手を添えながら盛大に息を整える為に息を吐く。


「お前マジにふざけんなよ...」

「...ねえ。先輩」

「あ?何だよ。七瀬」

「私、先輩に出会えて良かった」

「いきなりなんだ...」

「楽しいって事ですよ。全てが」


七瀬は息切れしながら汗を拭ってから俺を見る。

汗だくになってしまった。

もう直ぐ夏だというのに全く。

そう思いながら俺は汗を拭っていると七瀬は自らの胸元を拭き始めた。

胸がデカいので目のやり場に困る。


「...な、七瀬。そういうのは家でやれ」

「ベトベトで気持ち悪いですもん」

「お前な...男が居るんだぞ。外だぞ」

「私は気にしないですもん」

「気にしろって...」


俺は盛大に溜息をまた吐く。

それから俺は額に手を添える。

すると七瀬は俺を見てからニヤッとした。

そして俺にハンカチを渡してくる。

な、何だ。


「先輩。背中を拭いて下さい」

「どうやって!?」

「そりゃ勿論、首筋から手を突っ込んで」

「...お前アホか?出来る訳ないだろ」


そして俺はハンカチを返す。

すると七瀬は「やれやれ」と言いたそうな顔でハンカチを仕舞う。

何だよ...男子にさせる事じゃないだろ。

考えながら俺はそのまま居ると「何をしているの?」と声がした。

背後を見るとそこに...山﨑雪香が居た。


「?...その子誰?」

「...この子は後輩...というか誰でも良いだろう。雪香」

「そうなんだね。もー。彼女居るのに。女性と一緒なんて...」

「...」


七瀬の目が冷徹になる。

俺はその顔を見ながら「落ち着け」と声をかける。

それから俺は山﨑を見る。

山﨑は「?」という感じで俺を見ている。


「...すまないが俺は今、お前とは付き合えない」

「付き合えないって?せっかく迎えに...」

「...自分が何をしたか心に手を当てて考えた事はあるか?」

「...え?」

「お前自身が何をしたか考えろ」


そして俺は曇っていく空を見る。

俺は七瀬の手を引いてから歩き出した。

山﨑は「...」となっていたがハッとしてから俺を見た。

それから何か恐怖に怯える様な顔をする。


「...ま、待って。そういうつもりじゃない。...一回だけだったから」

「お前は最低最悪の行為をした。...一回でも何回でも許されない行為をした。...俺は決してお前を許さないしこの場で言わせてもらう。...お前とは別れる」


山﨑は「あ...」と言いながら俺の言葉に何も言えなくなる感じで黙る。

それから俯いてから顔を覆う。

俺はその姿を確認してから大雨が降り始めたのでコンビニで傘を七瀬に買ってやった。

七瀬は俺から傘を受け取ってからそのまま笑みを浮かべる。


「先輩。とても格好良かったですよ」

「...アホか。何も格好良くない。全てに決着をつけただけだよ。...過去にもそうだけど」

「...いや。先輩の決断は素晴らしいと思います。だから何もかもが格好良いです」

「あー...何か買うか?フライドチキンとか」

「私、からあげさんが食べたいです」

「じゃあそれ買うか」


俺は七瀬にそう言いながらそのままホットスナックを買う。

それから七瀬と一緒にコンビニの自動ドアの側で並んで食べる。

七瀬は俺の買ったホットスナックを美味しそうに頬張って食べている。

俺はその姿を和かに見つつ空を見上げる。


土砂降りだ。

何というかまあ俺の気持ちも土砂降りになるかって思ったんだがな。

コイツ、七瀬のインパクト本当にデカいよな。

マジに心が癒されるっていうか。

否定にならない感情になったから、だ。

正直...本当に全てがいかれると思っていたんだが。


「...七瀬。有難うな」

「何がですか?」

「...全てにおいて有難うな」

「何もしてないですよ。変な先輩ですね」


七瀬は苦笑しながらチキンを食べる。

俺は前を見ながら土砂降りを見ていた。

これが晴れるまでは。

そう思いながら...。

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