4、静かな怒り
☆
しかしまあどうしようもねぇ奴だな山﨑は。
そう思いながら俺は缶コーヒーを飲みながら空を見上げた。
それから俺は黄昏ていると七瀬が「先輩」と声をかけてきた。
俺は「?」を浮かべて七瀬を見る。
「どうした」
「...先輩って優しすぎだと思うんです。...何でそんなに優しいんですか?」
「...優しいって訳じゃ無いけどな。...ただ...」
「お家の問題ですか」
「...」
「...優しいですもんね。先輩」
そう言われて何も言い返せなくなる。
確かに家の問題だ。
家の問題すぎて...言ったかどうか知らないが。
俺は親父との仲が悪いのだ。
というのもきっかけがあるが...。
半分は成績の問題だ。
「先輩は良い人なのに...成績と関係無いですよ」
「...成績は関係無くても俺の人柄だろうな。多分だけど」
「妹さんとは仲が良いですよね」
「まあな。八鹿は味方だ。あと母親だけはな」
「...お家では居場所は有りますか?」
「お前専門家みたいな事を聞くね。...まあ...有るよ。親父の居る時は外に出ているけど」
七瀬は「...ですか」となってから汁粉を飲む。
本当に汁粉を飲むとはな。
そう思いながら俺は七瀬を見てから前を見る。
すると「先輩。私はどうあってもやっぱり許せないです」と話した。
「...」
「...だから私は...」
「駄目だ。お前が犯罪者になるのは許せん」
「どうしてそう言ってくれるんですか?」
「当たり前だ。俺はお前も可愛がっている。...一宮はクソとしても」
「...先輩は変わらずですね」
そして七瀬は一歩俺に歩み寄って来る。
俺は「...?」となりながら見ていると七瀬がいきなり俺の肩を掴んだ。
それからそのまま頬にキスをしてくる。
「は!?」
「...先輩に感謝の気持ちです」
「アホかお前は!表現はもっと有るだろ!」
「無いですね。私にとってはこれが最高の表現です」
「...!」
「...先輩。私、根暗でした」
「...イラスト描いていたよな。...それで?」
「そんな私をこうして人気者にしてくれたのは貴方でした。...だから貴方の周りの事を本気で...考えたいんです。そして悪いものにはノーを突きつけたいんです」
「!」
俺は静かに七瀬を見る。
七瀬は俺を見ながら「...」となってから汁粉を飲む。
そして缶を捨てた。
それから「だからこそ先輩。私は私なりの...復讐をします。...だけどそれはあの女と話してからにします」と言ってきた。
「...七瀬...」
「...じゃあ戻りましょうか」
「まだ話は終わってないぞ」
「いや。終わりですよ。戻りましょう。時間も無いです」
そして俺の話を一方的に切った七瀬。
それから俺達は教室に戻る。
俺は最後まで七瀬の気持ちを考える事が出来なかった。
というか何を考えているんだ。
☆
教室に帰ると友人の桜野夢香が声をかけてきた。
私に「で。どうだった!?」と声をかけてくる。
その言葉に私は苦笑しながら胸を張る。
「...一応話はできた」
「そうなんだ!良かった。憧れの先輩だしね」
「いや。...憧れなんてもので表現出来ない。...私にとっては巨大すぎる」
「...え?」
「私にとってはデカすぎるんだ。...全てが」
私はそう言いながら頬を朱に染める。
それから悶える。
キスしてしまった。
頬とはいえ...。
そう思いながら居ると「何があったのかなぁ?」とニヤニヤする夢香。
そして私の頬をムニムニ触ってくる。
「夢香...えっちー」
「えっちーで触っているんだもん」
「もー」
そして夢香は少しだけ顔を顰める。
私はその顔を見ながら「浮気って最低だよね」と口をへの字にする。
その言葉に「だね」と返事をしながら夢香を見る。
それから夢香は先生の声に慌てて手を振ってから席に戻った。
「...」
根本から考えると私は絶対に山﨑雪香に絶対に復讐したい。
だけど先輩に止められる。
これはジレンマだと思うけど。
だけど私は絶対に絶対に許せない。
山﨑雪香はこの世から社会的に抹殺してやる。
私が...好きな人を奪った挙句。
そんな事を考えながら私は自分が今日の一文一句の問題の担当だったので答えてから。
そのまま外を見上げる。
そして私は冷徹な目で外を見遣った。
だけど利点もあったな。
何がってそれは...先輩と付き合えるチャンスだ。
「...まあその点を考えると相殺かな。...だけど」
私はそんな事を呟きながら外を見上げる。
それから私はノートに目線を落とす。
そして教科書を見てからまた勉強に集中した。
私は実は...将来の夢がある。
それは...相談員という夢が、だ。
だからだろうけど、そう。
人の心理が知りたいのもあるのだ。




