91.二回目の石化
「それじゃあ、文化祭の出し物はバカッコいいに決まりで」
「なんだかバカッコいいが出た時点でそんな気がしましたわ」
「うん、前回と同じだよ」
僕がそう言うとノエルは納得した様子で頷く。
「先の事は教えてくれないんですの?」
「先を知ってたら面白くないでしょ?」
「それもそうですわ」
ノエルはそう言って笑う。
その笑顔には一切の穢れが入っていないように感じた。
そしていつも通りになってきているグループで昼休みを過ごし学校を終える。
「それじゃあ、また明日な出雲」
「うん、また明日。部活頑張ってね山門君」
「おう」
「二人共また明日」
「また明日美優」
僕達はそんな会話をして解散する。
「ねえ大成、今日の帰り道って何か起きまして?」
「え?」
これまた唐突に言われて顔に出る。
「やっぱり起こるのね」
「……記憶は残ってないんだよね?」
「残ってたらいいけど多分無理だと思いますわ。私が記憶を封印出来るのはせいぜい二、三時間が限界ですわ。それなら感情を封印した方がいい」
ノエルは少し寂しそうにそう口にする。
「……ごめん」
僕は思わずそう口にする。
「謝らないでくださいまし。私は感謝していますわ」
「そう言ってもらえるとありがたいよ。僕も出来るだけリセットしないように努力するね」
僕がそう言うとノエルは嬉しそうに笑う。
それから他愛のない話をしながら歩いているとマントを羽織った結月を見つける。
「……見覚えがありますわ。誰だっけ?」
「げぇっ」
ノエルが記憶を探るように頭を押さえていると結月がこっちに気づく。
「な、何で一人じゃないの!」
「知り合い?」
「うん。昨日会ったんだ」
僕がそう言うとノエルは眉をひそめる。
「昨日?」
「この人誰?」
ノエルが何か言いたそうだが結月に意識を向ける。
「私はノエル・ヴィクティーナ、大成の友達よ。あなたは?」
「私は結月ゆづき、えっと……」
「何か用かな結月?」
「遊んでほしいの大成」
僕がそう聞くと嬉しそうに持っていたプラスチックのバッグを差し出す。
前回は突っかかりにいったノエルだが今回は落ち着いた様子だ。
「……昨日会った小学生位の女の子に遊ぶように言われるって何をしたんですの?」
急に表情が変わったノエルはジッとした目を向けながらそう口にする。
「ノエルに言ってない、大成に言ってるの!」
「まあ、暇だし遊ぼうか」
「本当!」
僕が承諾するとノエルはわざとらしく驚いた顔をする。
「しょ、正気ですの?明らかに怪しいですわ」
「大丈夫だと思うよ」
「ふっふっふ、そういう事だから大成は借りていくよー」
「ま、待ちなさい!」
「何で待たないといけないの?」
「わ、私もついて行きますわ」
「ダメ」
「見てるだけだから」
「いーや!」
「まあまあ、ノエルも一緒じゃダメかな?」
僕がそう提案すると思った通り首を横に振られる。
「明日学校に行きたいなら今すぐ家に帰って」
「私を脅すつもりでして?」
今回のノエルは前回と違って真剣な表情をしている。
それを見て僕は敢えて制止しない。
「よし、これで邪魔者はいなく――」
「……誰が邪魔者ですって?」
ノエルは石化を解除した後少し表情を曇らせからそう口にする。
「な、何で解除できるの!能力は何!」
「私の能力は〈封印の勇者〉。石化した結果を封印しましたわ」
ノエルがそう言うと結月は不満気に頬を膨らませる。
「ノエルも一緒じゃダメかな?」
「……しょうがないな」
結月は渋々という顔でそう言うと歩き始める。
「相変わらず生意気ですわ」
ノエルはそう言うと驚いた顔で口を押さえる。
その表情から察するに自分でも理解できないことを思わず口走ったのだろう。
「……これからが少し楽しみになりましたわ」
ノエルは楽しそうにそう言った。
それからの日々は前回と明確に違う所はなかった。
強いて言えば結月のシュートをノエルが鎖で弾かなかったことだろう。
そして人生ゲームをする為に結月の家に行くことになる。




