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狂愛の魔王  作者: ラー油
4章:天敵

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89.理仁の道

 「それじゃあ、俺は行くよ」

 俺は長いこと涙を流した後そう言って大成と別れる。

 「“また"ね」

 「……あぁ、またな」

 俺はそう返事をして歩き始める。

 これから先のことを考えるために適当に歩き回る。

 そして辺りが真っ暗になって街灯の光が目立つ頃に決心する。

 「やっぱりここに来ましたわ」

 「……何か用か?」

 「ええ、殺そうと思って。あなたは知りすぎてますわ」

 ノエルはそう言うと鎖を無数に生み出す。

 「大成はどうするつもりなんだ?」

 「今日で確信したでしょう?大成は〈強奪の勇者(魔王)〉、拉致しますわ」

 ノエルは昨日と同じようなことを口にする。

 〈封印の勇者〉に敗北した俺はタイミングを作るから大成に攻撃するように命じられた。

 「それだけは止めないとだな」

 俺はそう言って拳に力を入れると赤い煙を纏う。

 「鬼門ね。それならこっちも相応のものを出さないわけにはいきませんわ」

 ノエルはそう言って右こぶしに白紋を刻む。

 「せめて入れ替えか操作に伝える」

 俺はそう誓うと全身に背景の色を投影して四足歩行で走り出す。

 普段より投影の精度も足のスピードも比にならない程高いがそれ以上に鎖が速い。

 「クソ!」

 追いつかれることを確信した俺は高く飛んで舌を何重にも折り畳み放つ。

 「いいスピードね」

 ノエルは楽しそうにそう呟くと目にも止まらぬ早業で俺を縛りあげる。

 「クソ!クッソ!」

 能力が封じられて全く動けない俺はそう叫ぶことしかできない。

 せっかく認めてもらったのに何も返すことが出来ずに死んでしまう。

 「鬼門を開いたなら十分ですわ」

 ノエルはそう言うと鎖を解く。

 「これからどうするんですの?」

 「……お前には関係ないだろ」

 「言わないなら大成を拉致しますわ」

 そう言われると言い返せずに正直に話す。

 「死ぬつもりだったさ。お前が言った通り俺は知りすぎたし関わりすぎた。一ヶ月も逃げ切れるわけない、つまり記憶を見られるのだけは防がないといけないからな」

 「本来ならそれを見届けようと思いましたわ。でも少し状況が変わったんですの」

 ノエルはそう言うと俺の頭に触れる。

 「今からさっきの記憶を読めないように封印しますわ。これを解けるのは〈記憶の勇者〉ぐらいでしょうね」

 「……どういうことだ?」

 「分からないんですの?生かしてあげるんですわ」

 ノエルはため息をつきながらそう答える。

 「少なくとも大成はあなたが死ぬことを望んでませんわ。それに私も望まないらしいですわ」

 「本気で言ってるのか?」

 「ええ、この感情は本物ですわ。間違いなく私のもの」

 ノエルは胸に手をあてながらそう答える。

 「せいぜいお達者で、いつか生かして良かったって思わせてくださいまし」

 「あぁ……ありがとな」

 俺は少し間をおいてお礼を言う。

 「どういたしまして」

 ノエルはそう言うと俺を殺さずに立ち去る。

 「……醜いって思ったのは反省しますわ」

 ノエルは立ち去りながらそう口にした。


 「ふう、今日は疲れたな」

 家に帰ってきた僕は入浴と夕飯を終えるとすぐにベットで横になる。

 僕が予想していた展開とは大きく異なった出来事に疲労感が襲ってくる。

 「……明日はどうしようか」

 一回目の時は雫の家からの帰り道で結月に会ったが今回はその展開にはならない。

 そもそも結月はどうやってピンポイントで僕が帰る時間を知ったのだろうか?

 「考えるだけ無駄か」

 監視カメラとかやり方は無数にある。

 そんな事より明日どうするかを決めないといけない。

 「……鍛えるか」

 一回目と二回目で明確に異なる点がもう一つある。

 それは父さんから新しい武術を教えてくれた点だ。

 それが思っていた以上に難しく他の武術と組み合わせたりするのが出来ない。

 立った状態で組んだ時の択が多いなど考える時間で反応が鈍る。

 「夕飯食べた後に散歩に行けばいいか」

 明日の動きを決めた僕はそのまま眠りについた。



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