表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂愛の魔王  作者: ラー油
4章:天敵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/117

83.牧場

 「さてと、まずは一緒に帰ってた女の子について教えてもらえるかしら?」

 「も、もちろんです」

 僕は少し圧を感じながら話し始める。

 「名前はノエルって言って能力は〈封印の勇者〉そして〈愛の勇者〉であるフレヤ•アレグザンダーと関わりが強く神光宗に潜入していると思われます」

 僕がそう説明すると感心した顔になる。

 「……よくそこまで調べたわね。まさか〈愛の勇者〉の名前が出てくるとは思わなかったわ」

 僕も〈愛の勇者〉に詳しいわけではないが最強の代名詞とも言える能力で何人もの〈愛の勇者〉が歴史に名前を残している。

 「それと〈封印の勇者〉ってのも運が無いわ。戦う上では一番ましな能力だけど〈セーブ&ロード〉に対しては最悪な能力ね」

 「〈封印の勇者〉を知ってるんですか?」

 「警察にはこれまで確認された能力を記録している書斎みたいなとこがあるの。その中には当然勇者の能力も記録されていたわ」

 世間一般にも知られている勇者の能力はたくさんあるが〈記憶の勇者〉のように公表されていないものも多くある。かなり貴重な情報を管理している警察がガチガチの組織なのはある意味納得する。

 「どこまで正しいかなんて分からないけど記録されている限りでは65個の勇者の能力が存在するらしいわ」

 「65個もあるんですね」

 「もっと多い可能性も全然あると思うわ。〈セーブ&ロード〉なんて能力があるなら何があってもおかしくないわよ。加えてそれを奪った〈強奪の勇者(魔王)〉が目の前にいるしね」

 確かに僕は歴代最悪の〈強奪の勇者(魔王)〉になりかねない器だろう。

 「それでノエルをどうするつもりなの?」

 「どう。ですか」

 ここで示しているのは殺すか殺さないかだろう。

 「そういえば今って何回目なの?」

 「今はニ回目です。それを含めて全部話しますね」

 僕はそう言って一回目に起こったことを話していく。

 殺人鬼(シリアルキラー)や結月、ノエルの最後まで全て包み隠さず話す。

 雫が記憶を見ている相手だとも伝える。

 「……なるほど、助けるつもりで動いてると」

 「無責任だと思いますか?」

 僕は気になっていることを聞いてみる。

 「うーん、そう疑問に思っているなら無責任ね。ノエルは大成君を狙う犯罪組織とアメリカのトップと繋がりのある人間なのよ。そんな人と自ら関わっていく覚悟がないなら辞めるべきよ」

 「そう……ですね」

 わざわざ本当に死ぬリスクに突っ込むには圧倒的に覚悟がたりていない。

 「勘違いしないでね大成君。別にノエルを助けるなと言ってるわけではないわ。ただ相応の覚悟を持って臨みなさい。人を助けるという事は決して簡単な事ではないわよ」

 「……説得力が違いますね」

 「まあね!」

 雫のお母さんは誇らしげにそう口にする。僕はその姿を見て考える。

 目の前にいる英雄が雫に向ける覚悟でノエルを助けようとは思っていない。

 でもノエルを見捨てたくない気持ちも強い。僕を守るために戦って死んでしまった。

 わざわざフレヤ・アレグサンダーへのパイプも用意してくれた。

 僕はノエルに何もしてあげれていないのに。

 「……そうか」

 僕はノエルのことを全く知らないんだ。そして僕には知る必要がある。

 知った上で助けるかを決めるのが正しい。

 優先順位が違った。助ける為に知るのではなく知った上で助けるか決めるべきだ。

 「まずは知るところから始めます」

 「それがいいわ」

 雫のお母さんは優しい表情でそう言った。

 

 「雫の事を聞くだけなつもりだったのだけど……そうもいかないわね」 

 声のトーンを低くしながらそう呟かれたことで僕は少し身構える。

 「〈切断の勇者(スサノオ)〉と〈水の勇者〉は恋仲だったの」

 何を言われるか身構えていると重要なことを言われる。

 「……なるほど。それで神光宗に入ったと」

 「その可能性が高い気がするわ」

 だいぶ腑に落ちた感があるが別の疑問が浮かんでくる。

 「だとしたら〈切断の勇者(スサノオ)〉が神光宗に協力するとは思えないんですが……」

 「神の蜜薬を使っていないとしたら?」

 「神の蜜薬を使わずに死紋を開かせられますかね?」

 僕はそう聞き返す。

 〈切断の勇者(スサノオ)〉がいるのなら死紋を開くことがあるのだろうか?

 「一応長時間の拷問で死門を開くケースがかなり確認されているの」

 「……確かに開くに十分ではありますね」

 僕も死門に手をかけているから分かるが精神的に追い込むのは難しいことではない。

 それに警察の闇に触れて心がやられている可能性もある。

 「雫が話していたあった能育や地方へのテロの目的だけど〈切断の勇者(スサノオ)〉が止めることで日本の力の誇示と神の蜜薬という核兵器を見せつける為が挙げられていたけどもう一つ重要なことがあるの、自国と海外の神光宗の信者を増やすという目的が」

 「海外の信者……ですか」

 「そう、日本にも差別はあるけどかなりマシな方なの。日本の場合は人種や宗教で差別することはゼロに近いけど海外ではそうじゃないことの方が多かったわ。それこそ奴隷制度がある国だってあるわ」

 神光宗は差別されてきた人が牙を向いた代表的な例だろう。

 触発されて動き出す人は多い気がする。

 「神光宗が世界的な犯罪組織になれば全ての勇者の能力を集めるのも不可能ではないと思うわ」

 「本来ならそれが最優先事項ですよね。どうしてこのタイミングで母さんや父さんを敵に回す必要があるんでしょうか?」

 「一切無いと思うわ。今の神光宗には日本以外に行く場所もないと思うし二人と敵対すれば壊滅する結果になりかねないもの」

 雫のお母さんから改めて現状の違和感を認識する。

 ここで無理をして〈強奪の勇者(魔王)〉を拉致する理由はなんだろうか?

 「可能性があるとしたらマーキングを消す手段があるのかもしれないわ」

 「なるほど、確かにそれなら拉致して雲隠れも可能な気がしますね。でも〈強奪の勇者(魔王)〉を拉致したところで感は拭えないですよね」

 結局のところ最終的な決断をするのは〈強奪の勇者(魔王)〉になる。僕を拉致したところで無能力者を作り出すことが出来るとは思えない。それに実行しない。

 「そこら辺は分からないけど〈セーブ&ロード〉があるなら気にしなくていいと思うわ」

 「それもそうですね。あ、せっかくなのでマーキングを消す方法が知りたいです」

 「〈マーキングの削除〉という能力も一応発見されているけど〈セーブ&ロード〉ぐらい珍しいと思うわ。現実的にあり得るのは〈代償の勇者〉による削除だと思うわ」

 「なるほど……十分あり得る話ですね」

 神光宗は現在五人の勇者の能力者がいる。加えて過去には〈骨の勇者〉や〈吸引の勇者〉までいたらしい。〈代償の勇者〉がいても変ではない。

 「マーキングを消す代償ってどんな感じなんですか?」

 「うーん、具体的な数値は分からないけど寿命か一生能力が使えなくなったりね。信者を使えば難しいことではない範囲だと思うわ」

 「どれくらいの人が犠牲なると想定しますか?」

 「寿命なら二百人、能力の使用不可なら八百人かしら」

 「……多いな」

 「いや、少ないわ。この程度の代償で〈強奪の勇者(魔王)〉が拉致できるならね。それに牧場もあるし」

 「牧場?」

 僕がそう聞き返すと、しまった。という顔をする。

 「こんな名前で呼んじゃダメだって分かってるんだけどね。つい癖で」

 雫のお母さんは頭を抑えてそう言うと牧場の説明をする。 

 牧場とは能力を厳選する施設のことで人身売買の施設だ。 

 まるで家畜のような扱いから牧場と呼ばれている。

 「不謹慎な名前なのは分かってるけど相手にしてるのが人だと思ってたらやってられなくてね」

 「えっと……ぼ、牧場と関わりがあったんですか?」

 「ええ、私は〈召喚〉で人身売買の仲介役をやっていたわ」

 「人身売買?ってことは日本は神光宗以外の牧場と関わりが?」

 「関わりのない国の方が少ないわ。言ってしまえば日本にも昔から存在するわよ」

 「……はい?」

 信じられない言葉に僕は間抜けな声を出す。

 「核や生物兵器の開発と同じよ。強い能力者はいればいる程国は強化される」

 「だ、だからといってそんな事許されるわけ――」

 「そう、許されるわけないわ。でも牧場で生まれた人の犠牲によって今の日本があるのは事実なの。技術でも人口でも劣っていた日本を守ったのは大和魂という言葉を刻み込まれた奴隷だったのよ」

 国の為に産み落とされて国の為に戦わせられて死んでいった人が数え切れないほど存在するということだ。

 「日本に勇者の能力者が多い理由もそれよ。それに響香も正志も牧場で生まれたはずよ」

 「っ!それは本当ですか!?」

 僕は思わず椅子から立ち上がってそう叫ぶように尋ねる。

 「本人から聞いた話だから恐らく本当よ。ただ二人は将来日本を守っていく為に幼い頃からかなり鍛えられたそうよ」

 「そ、そうなんですか。よかったです」

 実際僕が見ている感じでは父さんと母さんから悲痛なものは感じない。

 「大成君、これだけは覚えておいて。あなたが相手にしているのはこの世界の闇そのものなのよ」

 「はい、よく覚えておきます」

 僕は力強くそう答えた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ