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狂愛の魔王  作者: ラー油
4章:天敵

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76/117

76.人生ゲーム

 「今日こそ勝たせてもらうぞノエル!」

 「毎日聞いてますわ」

 ノエルはそう言うと鎖でサッカーゴールを作る。

 「必殺技を考えてきたからね」

 結月は自信あり気にそう言って腕を組む。

 「それも毎日聞いてますわ。でも毎日新しいのが思いつくのは感心しますが」

 結月は助走をするふりをしてそのまま打ったり尻尾を使ったりとグレーゾーンなシュートを編み出していた。

 「ピピ―」

 僕は指笛を鳴らしてpkの開始を宣言する。

 「行くぞノエル!」

 結月はしっかりと後ろに下がってそう叫ぶと勢いよくボールに向かって駆け出す。

 「……うん?」

 ノエルは結月の立ち位置を見て首をかしげる。

 軸足がボールの真横にあってシュートを打てるとは到底思えない。

 「いけー!」

 結月はそう言うと尻尾でボール弾くがノエルはしっかりと反応してコースに入る。そのままノエルにセーブされるかと思ったが前に置かれていた右足の踵に当たって軌道が変化してノエルが向かう方向とは逆にボールが向かう。

 「しまっ!」

 完全に意表を突かれたノエルはボールに向かって腕だけを伸ばす。

 「よし!」

 入ったことを確信した結月がガッツポーズをすると何故かボールは弾かれてゴールに入ることはなかった。

 「……酷いな」

 「か、勝てばいいんですわ」

 鎖を創り出してサッカーボールを弾き落としたノエルは腕を組んでそう言う。

 「ずるい!そんなのされたらシュートなんて入らないじゃん!」

 「能力に能力で対抗して何がいけないんですの?」

 「ぐぬぬ……」

 以前から尻尾を使ってずるいシュートを打ってきた結月は言葉に詰まる。

 「大成はどう思う?」

 「大人げないとは思う」

 ノエルも自覚しているのか肩を落とす。

 「サッカーはお終い!」

 「それじゃあ、次は何をする?」

 僕がそう聞くと結月は少し考えてから口を開く。

 「……人生ゲームがしたい」

 「人生ゲームか……」

 するのは構わないが場所が適しているとは思えない。

 「昨日二人でやったんだけど……二人は楽しくなかった」

 「二人?」

 ノエルはそう言うと怖い目を僕に向ける。

 「あれ?言って大丈夫かな?」

 結月が謎に意味深なことを言うとノエルに信じられない、という目で見られる。

 「僕じゃないよ」

 「本当に?」

 ノエルは結月に確認を取るが返答がない。

 「結月?」

 こっちの声が耳に入っていない程何かを悩んでいる結月はおもむろに携帯を取り出して操作し始める。

 恐らく誰かにメッセージを送っているのか表情がコロコロ変わる。

 「プルプルプル」

 「ちょっと待ってて」

 結月はそう言うと僕達から距離を取って誰かと話し始める。

 心当たりがあるとしたら殺人鬼(シリアルキラー)ぐらいだ。

 「何を考えている?」

 「大成とノエルを家に呼びたいの」

 「ターゲットと裏切ってターゲットを守る〈封印の勇者〉を家に上げるなんて馬鹿でしかない」

 「ノエルは大人げないけど大丈夫!」

 「〈操作の勇者〉は俺の顔を知ってるんだぞ」

 「大成の拉致を止めたいんでしょ、ノエルと仲良くしておく方がいいんじゃない?」

 「……こういう時だけ賢いのはなんだ」

 「ということは?」

 「はぁ、まあいいか。俺が外に出てれば問題は――」

 「淳史も一緒だよ」

 「は?」

 「調べたら人生ゲームは四人でやることが多いんだって」

 「あと少しで60歳になるんだが……」

 「逃げないでよ淳史」

 「ちょっと待っ――」

 「ブチ」

 電話を一歩的に切った結月はニコニコでこっちに駆けて来ると家に来るように言った。


 「ほ、本当に行くんですの?」

 結月の家に向かっている途中、ノエルが小さい声でそう聞く。

 「お父さんが家にいるらしいし大丈夫だよ」

 僕がそう答えるとノエルは何かを言いたそうにするが言葉にはしない。

 恐らくノエルは神光宗側の人間みたいだが結月は知らない様子だった。

 ノエルはどこまで知ってるんだろうか?

 「それとさ、ノエルはあれを見て断れる?」

 凄く嬉しそうに誘ってきた結月を思い出しながら僕はスキップをしているマントを被った少女を指差してそう尋ねる。

 「……やろうと思えば出来ますわ」

 ノエルは視線を逸らしてそう言う。なんやかんやで毎日結月の相手をしているしサングラスも買っていることから憎からず思っているのだろう。

 「昨日はボコボコにされたけどルールは分かったから負けないよ」

 「どれぐらいの差だったの?」

 「……30倍位差がついた」 

 結月はうなだれながらそう答える。

 「弱すぎですわ」

 「うるさいな、そんなこと言ってられるのも今のうちだよ」

 「ボードゲームで結月に負けることは絶対にありませんわ」

 ノエルは自信あり気にそう言う。

 「私は学んだよ、人生ゲームは経験がものをいうことを」

 結月はそう言って不敵に笑う。

 「ちなみに二人は人生ゲームをしたことはある?」

 「親戚と一回やったぐらいかな」

 「私はないけど結月には負けないと思いますわ」

 ノエルは自信あり気にそう言う。

 「ふっふっふ。勝ったな」

 「何か言った?」

 「何でもない」

 不敵な笑みを浮かべた結月はそう言って前に駆けていく。

 「着いたよ!」 

 結月がそう言って指差したのは六階建てのマンションだった。

 そして案内されるまま三階の一室に入る。

 「ただいまー」

 「お邪魔します」

 僕達は元気な結月とは対象的に控えめな声でそう言って部屋の中に入っていく。

 「こ、こんにちは」

 「こんにちは、娘がお世話になってます」

 リビングに入ると一度会ったことがある殺人鬼(シリアルキラー)に挨拶される。

 「出雲大成って言います」

 「私はノエル・ヴィクティーナです」

 「淳史です。よろしく大成、ノエル」

 僕達は表面上穏やかな自己紹介をする。

 「さっそくやろう!」

 結月はそう言って人生ゲームを広げると若干の気まずさが漂いつつ四人で人生ゲームが始まった。

 「まずは順番と能力を決めよう!」

 今回の人生ゲームはルーレットを回す順番と逆の順番で能力を決めるルールだ。

 種類は五個で仕事の収支が二倍な〈電気人間〉、警察の仕事につける〈身体強化〉、病気が無効の〈回復(ヒール)〉、事故や火災が無効の〈回避〉、ありとあらゆる収支が二倍か0になる〈ギャンブラー〉がある。各能力につきなれる人数は一人までだ。

 ルーレットの結果は淳史→結月→僕→ノエルの順番になった。

 「結月は前回の能力は何にしたんですの?〈ギャンブラー〉?」

 「秘密でーす。直感を信じてね」

 「前回の結月と同じ能力にしたいんですわ」

 「……それなら〈ギャンブラー〉で」

 「ちゃんと思った通りですわ」

 ノエルは呆れた様子でそう言うとギャンブラーを手に取る。

 「大成は何にするの?」

 「うーん、僕は〈回避〉にしようかな」

 「それじゃあ私は〈身体強化〉!」

 結月は声を大きくして〈身体強化〉を手に取る。 

 「それが強いんですの?」

 「やってれば分かるよ」

 結月はそう言って不敵に笑う。

 「〈回避〉は取られちゃったけど淳史はどうするの?」

 「それなら〈回復(ヒール)〉にしよう」

 能力の選択が終わって最初の一万円が配られてゲームがスタートする。

 「ノエルはルーレットを回してね」

 「そっか、一応お金を得ていますわ」

 ノエルはそう呟いてルーレットを回す。ちなみに奇数なら0で偶然なら二倍だ。

 「ぷぷ、お疲れノエル」

 「……まだまだこれからですわ」

 ノエルが出した数字は7、つまり所持金はなしだ。

 「〈ギャンブラー〉って他の能力と違ってデメリットを防げることもなくお金が手に入るか怪しい……」

 「運が良ければ収入が2倍になるんだよ?強いじゃん!」

 結月は煽るようにそう言うと人生ゲームは次々と進行していく。

 「警察の収入高すぎ、そして〈ギャンブラー〉がなれる職が狭すぎですわ」

 ノエルが言う通りでノエルの職業はフリーターだ。

 「一応カジノプロになれるマスもあるから」

 「えーと、カジノプロは……」

 カジノプロの説明には出た目によって収入が変わるものでマイナスにもなるが最高で30万にの収入が得られるかもしれない。

 「……これは無理かもしれませんわ」

 ノエルが呟いた通り終始劣勢で結果は結月が一位で淳史が二位、ノエルが最下位となった。


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