31.ニュース速報
「……?何だ……これ?」
僕は朝起きて殺すクズを選ぶためにニュースを調べていると随分と近場で起こった殺人事件の記事を発見する。
「……なんだ?何が起こっている!?」
僕は大きく取り乱してその横文字を舐めるように見つめる。
「柊さん一家が死体で見つかる。……死傷者、柊由美、柊硬そして柊雫」
僕は思わずその横文字を声に出して読み上げる。
何が起きた?何で柊さんが死んでいるんだ?
「両親の遺体は自宅で何者かに刺された状態かつ……記憶が見れない状態で発見される」
つまり頭を強く損傷していることになる。
「………………は?」
両親を殺害したのは実の娘である柊雫だと考えられている。
なお柊雫の死体は自宅から少し歩いた所にある廃ビルにて見つかる。
「そして記憶が読めない状態であるが状況証拠的に彼女が殺した可能性が高い」
どういうことだ?何が起きた?何で死ぬんだ?
「……僕のせいか?」
昨日僕があんなことを言ってしまったせいでこんな凶行に走ったのか?
「いや、待てよ……まだセーブはしていない」
つまり、まだやり直すことが可能だ。
「……柊さんには普通に生きて欲しいんだけなんけどな」
僕はそう言いながら包丁を自分に突き刺して柊さんに会う一日前に戻る。
「どうするのが正解なんだろう?」
僕は出来るだけ柊さんを拒絶しないといけないが拒絶するとあんな悲劇が起こる。
「……とりあえず話を聞くのが先決だな」
僕は申し訳ない気持ちで一日を過ごして問題の日に突入する。
「行ってきます」
母さんにそう言って不安な気持ちのまま学校に向かう。
そして焦る気持ちとは裏腹にゆっくりと授業が行われる。
「キーンコーンカーンコーン」
4時間目のチャイムがやっと終わって昼休みに突入する。
「…………………………………?」
あれ?来ない?もうとっくに来てもいい時間だ。
「何が起きているんだ?」
僕は居ても立っても居られずに職員室に向かう。
「失礼します」
僕は柊さんのクラスの担任の先生を呼んで話をする。
「……柊さんは体調不良で休み。ですか?」
何を言っているんだこの人は?日時は間違っていない。
普通なら元気な柊さんが来ているはずだ。
「そうでしたか、ありがとうございます」
僕は一言お礼を言って職員室を立ち去る。
「なんで前と同じにならない?こんなこと今まで無かった!」
僕は苛立ちを隠せずに大声を出してしまう。
「……しょうがない直接いくか」
落ち着きを取り戻した僕は嫌な胸のざわめきを抱きながら急いで学校を出て柊さんの自宅に向かう。
「何が起きている?何だこの未来は!?」
今まで〈セーブ&ロード〉を使用してきて行動がこんなに大きく変わったことはなかった!
本来なら柊さんは元気に学校に来るはずだ!
「…………………………何で?」
柊さんの家の前には複数のパトカーが止まっていて黄色いテープが至る所に貼られている。
そして多くの野次馬がいる。
「おかしいだろ!まだ僕は君を傷つけていない!」
僕は混乱と動揺に身を任せて大きな声で叫ぶ。
「……どうかしたのかい?」
僕の大声に反応したのか怪訝な顔をした警察に声をかけられる。
「……柊雫さんはどうなりましたか?」
「……ニュースの通りだよ」
警察に重々しくそう言われて焦りながらニュースを調べる。
「……同じだ」
前の世界でのニュースと日時が違うだけのニュースが見つかる。
「ところで君は雫さんのご友人かい?」
「……いえ、僕は」
友人なんて口が裂けても言えない。
この凶行は僕のせいだ。
「その制服、君同じ学校だよね?」
「一つ聞きたいのですが雫さんがこのような行為に走った理由って分かりますか?」
「それが分かっているなら君を引き留めたりしない」
なるほど、警察も理由が分かっていないのか。
「お話出来ることはありません」
僕はそう答えて急いで立ち去ろうとするが見えない壁にぶつかって尻餅をつく。
「ごめんね、痛かったかな?」
前に向けた右手を警察は僕に差し出す。
「雫さんはどんな生徒だったのか教えてもらえる?」
「……お答え出来ることはありません」
僕がそう言うと警察は僕の手を掴む。
「些細なことでもいいからさ!」
「話せることはありません」
「そういわずにさ」
「話せることは無いって言っている!」
警察側からしたら記憶が見れない以上地道に周りから情報を得る必要があるんだろう。
でも今の僕はそんなことを考える余裕なんてなく腕を振りほどく。
「……今君は業務執行妨害をしたね」
「ちっ、邪魔をしてるのはどっちだ!」
僕がそう叫ぶと警察は厳しい顔をする。
「事件現場に急に現れて訳の分からないことを叫ぶ同じ学校の生徒を見逃すわけにはいかないんだよ」
警察にごもっともなことを言われて頭を冷やす。
今更焦っても仕方ない。今はこの場を出来るだけ穏便に済ませることを考えればいい。
僕は一度顔を両手で叩く。
「失礼しました。なにせ僕はこの事件を学校で知ったもので取り乱してしまいました」
僕は出来るだけ冷静に愛想よくそう言って頭を下げる。
「でも本当にお話出来ることは無いんです。僕は雫さんと同じ学年ですがクラスも違います」
「そ、そうかい。でも知り合いなんだろう?」
「はい。図書委員の当番がかぶっていまして、本の趣味で話が合ったんです」
「なるほど……」
警察は僕がいきなり従順になったことに驚きながら考える仕草をする。
「それじゃあ名前を聞いてもいいかな?」
「出雲大成といいます」
「出雲大成……」
僕が名前を言うと警察は明らかに狼狽する。
「そもそも雫さんとは最近全く会えていません」
僕がそう言うと警察は両手を合わせる。
「ごめんね出雲君。足止めしちゃって」
拍子抜けするほどあっさり警察に解放された僕は自分の家に帰る。
「今度は直接だ」
薄々事を察しつつある僕はそう呟いて再び自分に包丁を突き刺した。




