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サンソンくん snow white編  作者: ハクノチチ
12/14

最後に見た彼の姿



 気温の変化に伴う景色と彼女の態度に悪い予感しかなかった小さな彼は、正直怖くて逃げだしたかったのですが、旧世界の記憶を閉じ込める氷河のような薄い青が現れた彼女はこれまで以上に美しいと思わざるを得ませんでした。


「おっ、お前、はっ、春になっても夏になっても、げっ、元気なんだよな? いつか迎えに来てやるからな……」小さな彼は初めて泣きました。


 仲の良かった友達が目の前で日ごと溶け行く恐怖、惨めなほどの非力を他でもない自らに突き付けられたショックに言葉は震えました。


 今あるぼくの勇気は、とっととここから逃げ出してしまえる気がする、というくらいなモノしかない!! 

 情けない素直な心に小さな彼は泣いてしまったのです。最初の「もどり羊」の群れが明け方の空を横切った日の事です。


「えぇ、もちろんよ。当たり前じゃない。ところであなたの泣き顔には虹が掛からないのねっ!!」スノーホワイトはこれまでと同じ声でしかしケタケタ笑いました。彼女はこれまでよりもずっと長く一人で、一人だけでケタケタ笑い続けました……



 彼女はどこかにいる、私の中にいる友達をもう罵しらなくなりました。何を見ても聞いても全方位から結びついてたどり着く、底なしの罵倒にようやく疲れることが出来たからです。しかし一方では、その代償として到底譲れないはずだった素敵なユーモアを失いました。更には永遠と同じ意味を持っていたひと時だけの大切な思い出も失いました。恐れと八つ当たりの憎しみも今は消え去ったということです。


 そんなわけで、怯えながら泣いている小さな太陽を密かに罵ることもありませんでした。


 全く何の役にも立たない立派な子供だ、大した太陽の王子殿だ……嘲る気持ちで彼女は小さな彼を見下ろしました。震えた薄い文字のような虚勢を張る自称太陽の妖精。余りにみっともなく狼狽するので、溶けてなくなってしまうのは、そっちじゃないのか?

 外の世界も内なる世界も峠を越したスノーホワイトにはもう残念でもなく、可笑しくもありません。


 これが最後に見た彼の姿です。彼女は後にそのことを、あるいはそのことだけは後悔するのでした……



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