酒戦
「だめー、もう限界っ!」
そう言うとアリスはばたりと倒れこむ。
「親父もそのへんにしとけよ」
ロウリーは父親から酒の入ったグラスを取り上げようとするが、それは簡単に払いのけられる。
「うるさい! ガキはすっこんどれ。俺には負けられない戦いがあんだ」
金髪の大男はむきになり手に持っていたグラスの酒を一気に喉に流し込む。
ビル・ルイス。
ロウリーの父親でありアリスの叔父にあたる。
「おぬし、若いのにようやりおるわい、そろそろ限界ではあるまいな?」
「ビルさんこそ顔真っ赤じゃないですか」
俺は相当酒に強いはずなのだが、それでもそろそろきつい。人間の身でここまでついてくるとは。この男はいったい何者なんだ。
アリスの成人を祝して行われた誕生会。本当は家族内だけでやるつもりだったらしいのだが、俺が村で暮らすということで村人たち全員を招いた誕生会兼歓迎会といった名目の大宴会になった。
宴が終盤に近づいた頃、突然アリスが自分も成人したことだし、酒の飲み比べをしようと言い出した。おそらくここでしばらく暮らすことになる俺が少しでも村に馴染めるようにと気を遣ったんだろう。まあ、そのおかげか村人たちとはすっかり打ち解けた。
しかし楽しかった宴は突如として幕を閉じた。一つの声とともに。
「き、気持ち悪い……」
アリスは青白い顔で口もとを押さえると次の瞬間……
*
「悪いな」
ロウリーは申し訳なさそうに髪をかきあげる。恐らくこれが彼の癖なのだろう。
「いやいや、これから世話になるのは俺の方なんだからこれくらいやらせてくれ」
新しい服に着替えさせられたアリスを負ぶりよっこらしょと腰を上げる。
本当なら自分で歩けと言ってやりたいが生憎、本人は泥酔して背中で訳の分からないことを呟いているから仕方がない。
「それと、これからアリスのこと頼むぜ。この村には同年代の奴が俺ぐらいしかいねえんだ。あいつネガティブなことは言葉にしねえけどよ、4年間も一人で暮らしてて寂しくねえわけがねえんだよ。俺は日中は仕事でこの村にはいねえし。だからよ……要するには……つまり……あいつの話し相手ぐらいにはなってやってくれねえか」
いとこ想いのいい子じゃないか。他の人間の為にここまで言えるとは素晴らしい。感服する。
「そんで物は相談なんだけどよ。うちのアリスはどうだい? 面はいい方だろ、家事もできる、そんでもって元気いっぱいだ。なかなかいい物件だと思うんだがな。まあ、ゲロっちまったことにには目を瞑ってくれや」
やはり若い男女が二人暮らしとなるとそう思うよな。見てくれは。実際、俺は400歳を超えてるしまともな恋愛ができるとは思えんが。
「べつに俺たちはそういう関係じゃないぞ」
ロウリーは胡散臭そうな目で俺を見る。
「またまたー。まあ、そういうことにしといてやるよ。おやすみ、また明日な」
「おやすみ」
*
アリスをベッドに横にならせる。
なんだか今日は疲れたな。泣いたり笑ったりと随分久し振りだった気がする。いや、そんなこと今までになかったのかもしれない。
俺もすぐに休もう。
そう思いアリスの部屋を出ようとする。
違和感。
慌てて振り返る。
アリスが上着の裾をつかんでいた。
どうやら起こしてしまったようだ。
「ちょっとこっち来なさいよお」
勢いよく引っ張られ強引にベッドに押し倒される。そして俺に抱き枕であるかのように抱きつく。
「おやすみい」
いやいやいや。ちょっと待て。お前、胸が当たってるって。
アリスは自分の巨大な胸を俺の顔に押し当てるようにしてすやすやと眠っている。
この程度で動揺するとは俺は思春期か!
アリスの腕を半ば強引に振り払おうと試みるが……
「むにゃむにゃ、あばれないでよお」
すると今度は背後からヘッドロックを決められた。
痛い痛い痛い痛い痛い…………
ま、まずい。息が。
「ぐふっ」




