エピローグ 自分自身
翌朝。
村人たちは、俺を見送るように集まっていた。
感謝と、恐怖と、困惑が入り混じった視線。
「ユウトくん……あれは……」
「助けてくれたのはありがたいが……あの力は……」
村長が重い口を開く。
「危険かもしれん」
分かっていた。
当然の反応だ。
「ごめん。俺がいると……村を危険にする」
リリナだけが、必死に首を振る。
「違うよ! ユウトは悪くない! 力があるからって――」
「リリナ」
名前を呼ぶと、少女は言葉を飲み込んだ。
「……俺、怖かったんだ。あのとき……お前まで殺しそうで」
リリナの肩が小さく震える。
「だから行く。力のことを知るために……勇者が集まる王国へ」
リックが静かに頷いた。
「勇者たちなら、何かわかるかもしれないな」
エルドは涙を流しながら言う。
「辛い選択だったろう。だが行き先を見つけたのなら……それは“生きる理由”になる」
その言葉が、胸に刺さった。
リリナが泣きながら服を掴む。
「行かないでよ……! まだ何も恩返ししてない……!」
「恩返しなんていらない。お前が生きてるだけで、俺は――」
言いかけて、やめた。
「……また来るよ。必ず」
少女は涙を流しながら、それでも笑った。
「うん……絶対だからね?」
俺は背を向け、村を出た。
森を抜ける直前、魔王の声が響く。
――良い。恐怖も後悔も、すべて力へ変わる。
――進め、ユウト。お前はもう後戻りできん。
「……うるさい」
だが、否定はできなかった。
俺はもう、普通の人間じゃない。
それでも。
「生きる理由くらい……いつか見つけてやるよ」
黒い影を引きずりながら、ユウトは勇者たちの国へ歩き出した。
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――おい、人間……人間!
「なんだよ、いまいいところなんだから」
――とうとう正気ではなくなったか。
「? 何言ってんだ」
――虚空に向かって独り言、挙げ句石でおままごととはな。
「早く勇者の国に行こうぜ。道は……えっと、どっちだっけな」
――まあ、そう仕向けたのは我だがな。
「……… ……そうだぜ、ちゃんと責任取れよ、魔王」
ユウトは軽く笑いながら、スタル村だったものに一瞥もくれず、焼け野原に背を向けて真っ直ぐ歩き出した。
ユウトは軽く笑いながら、焼け野原となったスタル村には一瞥もくれず背を向けて真っ直ぐ歩き出した。
「生きる理由くらい……いつか自分の力で見つけてやるよ」
――よかったな。狂う理由ができて
ーー現実に向き合わなくていいなんて羨ましいなぁ
魔王の笑い声が、いつまでも響いていた。




