045
「俺の活躍、渋くねぇ?」
帰りの車に乗って早々、幻聴が聞こえた。
「今度はどうしたんだよ。いぶし銀が憧れって前に言ってたじゃん」
「オメー今度は過去まで捻じ曲げる気かよオイ」
「そんなとんでもない魔法あってたまるかっての」
軽く流したけど、なんて事の溜まってくれやがるんだろう。小城は。
疲れておかしくなったのか。
わざわざ現地の施設のシャワーまで借りて来たのに。
前回は設備の都合で使えなかったらしいけど、どうだか。
今回は別の目的があるからそうしたようにも見えるけど。
「っつーか、そういうのじゃねーんだよ。もっとこう、ズバッとさ? あんだろ? そういうの」
……まだ懲りてなかった。
一体何が気に入らなかったんだか。
ズバッ、なんて擬音を使われてもそれだけじゃさすがに分からない。
それらしい候補と言えば――
「切断マジック?」
「切り込み役なら桐葉とそれぞれこなしたでしょう」
「お、小城くんがいなかったから勝てなかったから……」
さすが、見事にバラけた。
東雲さんは言いながら驚いた顔をしていたけど、それはそれ。
いきなり渋いだのなんだの言われても俺にはこうすることしかできない。
「そこ二人、東雲の優しさを見習おうぜ? な? マジで」
「今のはあれだよ、あれ。飴と鞭みたいな」
「いっぺんぶった切ってやろーかコンニャロウ」
精一杯の対応をしたっていうのに、小城の反応は微妙そのもの。
話し合いをした時にはそこまで嫌がっていなかったくせに。
もう一人二人倒せたら理想って話も、確かにしてはいたけど。
「それに小城、自分が有利ならボケに回るだろ。絶対」
「なに当たり前のこと言ってんだよ、天条。そりゃそーだろ」
「当たり前……当たり前…………?」
小城も本気で不満に思ってるわけじゃない。
不意の一発を食らった件はその限りでもなさそうだけど、アレは本当に仕方がない。
誰が狙われても、脱落は多分避けられなかった。
あんなの知ってなきゃ避けられない。
数的有利に持ち込んだあの時点で俺達の中に知ってるやつがいたら、そいつはスパイだ。
「真面目な話、ここにいる全員が揃ってないと二手には別れられなかったんだし。向こうの動きがこっちの想定を上回ってたってだけで」
「なんで最初にそれが言えねーんだよ、オメーはよ」
「落としてからあげた方がいいかなって」
「んなことしなくたってアゲアゲでいいんだよ。アゲアゲで」
「分かった。そういうことなら今度揚げ物の詰め合わせを送っておく」
「そりゃ助かる。夜食にするわ」
……材料費だけは請求してやろうっと。
二人分だからまだいいけど、勿体ないって思うこともあるし。
何かのタイミングで余ることがあって、その時に覚えていればそれでいい。
それがいつになるかは分からないけど。
「天条くん、その……揚げ物って、ちゃんと食べられるもの……?」
「それは勿論。妙なことしたらうちの料理の先生に丸焼きにされる」
「家庭科の先生、そこまで恐い人じゃ……」
具体的には特大のカミナリで。
東雲さんはなにか勘違いしているみたいだけど。
……そう言えば美咲に叱られた時の話までは言ってなかったっけ。
「違うって。考えても見ろよ。こいつが学校の先生なんかにわざわざビビるわけねーだろ?」
「『なんか』とは言ってくれるね、小城くん。私だって先生なのに」
「ぅえっ!?」
……あーあ。
さすがにこれには突っ込む気にもならなかった。
どうしてこう自分から駄目な方に突き進むんだろう。小城ってば。
「ち、違うんすよ! せんせは別枠っつーか……な、な??」
……必死な顔で同意を求められても。
俺も大概だとは思ってるけど、小城に至ってはいつか打線とか組めそう。
東雲先生相手に限定しても。
「確かに担任の先生というより、組織の上司って感覚の方が強いですね。俺も」
「そういう側面があるのは間違いありませんね」
「お、おぉぉお……!」
感動してる理由はあえて訊かない。
どうせいつもみたいな答えが返ってくるだけだろうし。
真横から、上機嫌真っ最中の小城にそんなことを言われたかない。
どうせ長くは持たないし。
「……君達の評価を、私はどう受け取るべきなのかな」
「あ、あり?」
……全く気付いていなかった。
別に東雲先生も落ち込んではいない。
そこまで酷いことを言うつもりはない。
「まあそうなるでしょうね」
「すみません。どうしてもそっちのイメージが先に来ちゃって」
「わ、私はいい先生だと思ってる、よ……?」
「……三凪にそう言ってもらえるだけよかったよ」
とはいえ。
「……オメーらさては分かってて言いやがったな!?」
裏切られたと思っているお方はいるわけで。
「はてさて、なんのことだか」
「私は偽りのない感想を口にしただけですよ」
俺もイリアも、別に嘘は言ってない。
悪い先生じゃないってことも分かってる。
ただの新入生として、東雲先生のクラスに編入されていたらそれで済んでた。
ただ、俺もイリアもそうじゃない。
そもそも、東雲先生と知り合っていたかどうか。
「こう見えて、東雲先生のことはちゃんと尊敬もしてますし。苦手なのは長話に飽きない先生方だけですよ」
「おう止めろや。その流れさっきもやっただろーがコラ」
「そんなつもりじゃないのに」
「結果的にそうなってんだからなんも変わってねーよ?」
小城とこうしてくだらないやりとりをすることも、この四人で勝つってこともなかっただろうし。
……なんて、いい話風にまとめてる場合じゃないけど。
「そ、それよりお姉ちゃん。この後は……? いいところに連れて行くって、言ってたけど……」
「それは着いてからのお楽しみだよ」
東雲さんが話題を変えただけで、元通り。
やっぱりそこまで気にしてなかったらしい。
「ヒントを出すとしたら……特に天条君と小城君にとっては、最高なんじゃないかな?」
「「俺??」」
それどころか、東雲先生はやけに自信満々な様子。
俺も何も聞かされてないけど、本当にどこに行くつもりなんだろう……?
活動報告に、今後の活動について掲載しました。
お手数をおかけしますが、ご確認お願いいたします。




