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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
327/596

044

「すまなかった」


 戻るや否や、向こうのリーダーさんに何故か頭を下げられた。


「そ、そんな……」

「なんすか。どうしたんすか、マジで。んな謝られることなんて……」


 謝られる心当たりも特にない。

 一応、反則になるようなことはこっちも向こうも特にしていない。


 前回の件ならまあまだ分からないけど、アレに関してはこの人に全部を擦り付ける訳にもいかないし。


「て、天条くん……」

「ほらほら、東雲も言ってるじゃねーか。ここはスパッと解決してくれよ、リーダー?」


 小城はさておき、頼られてもちょっとどうしようもない。

 こんな時でも通常運転としか言いようのない小城はさておき。


 それにそもそも、スパッと解決なんて言われても。

 土下座さえしそうな勢いのこの人にどうしろと。


「あー、そういうところは気にせず素直に聞いてもらえると。ウチの人こうなっちゃうと聞かないからさぁ」

「侮ってたこととか色々とね。本人的に納得いかないみたいで」

「そ、そう言われても……」


 向こうの先輩たちの助け船も、ぶっちゃけあんまりフォローになってない。


 気にするななんて言われて『はいそうですか』と済ませられたら苦労しない。

 東雲さんじゃないけど、俺達に一体どうしろと。


「本人も周りもああ言っているんですから、好きにさせておけばいいんですよ。私達が不利益を被るわけでもないんですから」

「イリア、イリア。それ本人に聞こえるところで言っちゃいけないやつ」

「わざわざ隠すことでもないでしょう?」


 イリアの言い分は分かるけど、そうもいかない。


 何せお相手さんときたら、さっきからずっと頭を下げっぱなし。

 一旦やめましょうと俺達が言っても全くと言っていいくらい効果なし。


 新手の嫌がらせかと突っ込みたくなるのを抑えるだけでも一苦労だった。


「おーおー、言うねー。こりゃ次が楽しみだ」

「そのくらいの態度の方がこっちも気楽、ってね」


 チームメイトの皆さんに至ってはほとんど気にも留めてない。いいのかそれで。


 模擬とはいえ、ついさっきまで戦ってた相手。

 そういう感覚も、こうして話しているうちに自然と薄れていく。


「ところで、そちらの……火村ほむら先生は? さっきから姿が見当たりませんけど」

「あー、大ジョブ大ジョブ。さっきの結果見て頭のふさふさを減らしながら帰ってるだけだと思うから」

「見掛けに寄らずアグレッシブですね」

「天条君は天条君で見掛けに寄らず物騒なこと考えるね」


 気付いたあなたも相当ですよ――とは、言わないでおいた。


 なんとなく向こうでの火村先生の認識が分かった気がする。

 悩みながらとかじゃなく、わざわざ髪のことを言ったくらいだから。


 東雲先生に聞いた限り、そんな心配をする必要もなさそうなのに。

 ……まあそこまでフサフサってわけでもなかったけど――


「いやいや、そうでもないっすよー? こいつ年中こうなんで。バリ見た目通りっすよ」


 ……人が話してると思って、言ってくれやがったな。この野郎。


「そこまで言うなら論より証拠、いっとく?」

「遊びに行くノリで構えてんじゃねーよ。そういうトコだって、マジ」

「いやほら、口は禍の元、みたいな?」

「みたいなってなんだよ。みたいな、って」


 訊かれてもその通りとしか答えようがない。


 わざわざ手刀を見て後ずさりするなら言わなきゃいいのに。

 そんな心配しなくても、元からやるつもりなんてない。物理的なやつは。


「そもそも言い出したのは小城だったんだし」

「こいつまた擦り付けやがった!」

「またってなんだよ、またって。俺がいつそんなことをしたって?」

「しまくってるじゃねーかよ惚けんな」


 失礼な。


 俺はただちょっと事実を突きつけただけだって言うのにこの反応。

 そもそも俺が何か言わなくても自爆してるときだってあるのに。


「オンオフのスイッチどうなってるんだろうねー、この子達」

「切り替え上手って考えりゃなかなかの特技だろうけど」

「実際、戦ってるときの動きはマジでしたよね……」


 ……向こうから何か聞こえるけど、無視だ。無視。


 文句を言われるようなことは何もしてない。

 全員これと言った怪我もなく戻って来たんだからそれでよし。


「ほらほら、両チームともそこまでだ」


 東雲先生が止めに来たのは、その時だった。


 火村先生がこっちに残っていないから、東雲先生が仕切るしかない。


 そっちの仕事はどうしたのかと2811の人に目で聞いたけど……首を振られて、なんとなく察した。


「帰る時間もあるから準備をして。名残惜しいのは分かるけど、これで終わりじゃないんだから」


「セカンドチャンス?」

「第二ステージ?」

「別のメニュー?」

「まだ序章とか?」


「残念ながら全員見事に不正解だよ」


 残念。


 てっきり一旦帰って、それからそういう流れがあるのかと。

 向こうのセンパイ達もしれっとした顔で言ってたし。


 今回きりじゃないのは、もう知ってる。

 次がいつになるか、まだ教えてもらっていないだけで。


「て、天上さん……。あれって……」

「ただ同じことをそれらしい言葉で繰り返しているだけですよ。放っておきなさい」


 理由なんてそれだけ。

 それ以外のなんでもない。


 ほんの少しその場の流れに身を任せてしまった部分がないとまでは言わないけど。


「皆、忘れていないかい? まだ審査自体は終わっていないんだ。当然、さっきの発言も聞かれているんだよ?」


 対して東雲先生は、俺達を見て呆れながら言った。


「そんなことで大した差にはならないかなって」

「というより、もうちょっと他のところも見ていってくださいよ。審査員の方々も」

「そーっすよ。俺なんて天条に脅されただけなんすから」

「――って、言うから合わせろって小城に命令され他ので俺は無罪で」


 別に焦ったりなんかしない。


 その話はこれでも一応、最低限は聞いていたから。


「んなわけねーだろ偽証すんなコラ」

「やられた分をやり返したんだから正当防衛だよ、正当防衛」

「過剰防衛に決まってんだろ」


 ――とにかく、そこにはもう、さっきみたいな空気は全く残っていなかった。


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