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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
316/596

033

 その日は、雲一つない晴れた空が印象的な一日だった。


 先日にも一度訪れた筈のその場所は、三凪にとって全く別のもののように思えた。


「――それじゃあ、皆。頑張っておいで」


 あの時にはあった圧迫感が、全くと言う程なかった。


 場所そのものに何か変化があるわけではない。

 強いて言うのであれば、事前に大掛かりな仕掛けが施されていないということくらい。


 自身の考え方が違うだけでこうも変わるものなのかと、三凪は内心で驚いていた。


「うっす! この前の借り、全部返してやりますよ!」

「先にばら撒いた分のツケもまとめてふんだくってきますから。先生はふんぞり返るくらいのつもりで待っていてください」

「二度とあんな口は利かせませんよ」


 左右に目を向ければ、そこには、負けるつもりなど微塵もないチームメイトの姿があった。


 確かな策があるからというだけではない。

 不利な条件が撤廃されたのも間違いなく理由の一つだが、それだけでは足りない。


「うん、頼もしい限りだ。……言い方はどうかと思うけど」


 今日までに費やした時間が、彼らにそう思わせていた。


「こういうのは勢いが大事かなと思いまして。無茶な真似をするつもりもないですし」

「そのためにあれこれ調整したもんな。東雲のアイデアをベースに」

「そんな……皆、いろいろ思いついてくれたから……」

「余計な部分を削ぎ落さなければいつ破綻してもおかしくない状態でしたよ。誇ってもいいくらいです」


 そしてそれは、三凪も同じだった。


 作戦をまとめたのが自分だとまでは、思っていない。

 四人で作り上げたものだという意識があるからこその感覚だった。


 大人の目には稚拙に映るかもしれないプラン。


 しかし今、他者の感想などどうでもよかった。


「自信があるのはいいことだけど、2811の子達も今日に合わせて調整をしている筈だ。油断はしないようにね」

「大丈夫っすよ。そこはリーダー次第なんで」

「だったら早速、そんなことを言っている小城のことを」

「そういう意味じゃねーよ!?」


 リーダー次第などと言った小城も、一歩引いて眺める衣璃亜も。


 相変わらず慌てた様子のない、桐葉も。


(……私達は、ひとつのチーム)


 負けた時のことなど、考える必要はない。

 ブザーを次に聞くのは、2943側の勝利を知らせる時でいい。


「さあ、そろそろ時間だ。……いい結果を持って帰ってくれるのを、待っているよ」


 見送る姉の言葉に三凪は、4人は自信を持って頷く。


 晴れ渡る空の下、一丸となっての模擬戦が幕を開けようとしていた。






「……どう来ると思う? 向こうの子達」


 前回とはまるで別人のような表情を浮かべた彼らを思い出し、訊ねた。


「分からないなー。あの感じからして、無策ではないみたいだけど」

「この前のやり方は通じないな。間違いなく」


 移動を促すブザーが響くや否や、彼らは全速力で茂みの中へ姿を消した。


 居場所を掴ませるものかと言わんばかりに。

 予想外の行動に戸惑い、2811の衝動は僅かに遅れた。


 現時点で2943のチームがどこにいるかも分からない。

 確かなのは近くにいないことだけだった。


「いいじゃん。少しくらい変化を付けてくれた方が。この前と全く同じとかつまらないし」

「どっちにしてもこの前と同じにはならない気が……」

「それは言わない約束っしょ。……まーたあんな悪態つかれたかないし」

「先生、あの後めちゃくちゃソワってたもんね」


 前回、あらかじめ用意されていた大量の設置魔法も今回はない。


 そのことに対する落胆は、あまりなかった。

 利用したとはいえ、思うところがないわけではなかったのだ。


「つまり、今回の試合はそれぞれの地力が試されるということだ。……気を抜くなよ」

「はいはーい。この前見たいに逃げられないように気を付けますよっと」


 何より、それがなくともやられることはないという自信があった。


 人数は依然として彼ら2811側が有利。

 あの神堂零次の教え子はいるものの、他のメンバーの経験値の底は知れている。


 故に、2811側はいかに早く天条桐葉を脱落させられるかにかかっていた。


「とにかく、今回は天条の撃破が最優先だ。多少人数をかけてでも一気に叩く」

「素直に出てきてくれるかね? 向こうも各個撃破を狙ってそうだけど」

「これを見たら向こうも仕掛けざるを得ない筈だ」


 そのために、設置魔法を持ち込む姿を見せた。


 彼らが茂みの中へ消える前。

 あえてそれを束ねるところを見せつけ、2943側にある情報を与えていた。


 今回も同じ手を使うのではないかと思わせるために。


「わざわざ見せつけたもんねー。これに反応しないわけないでしょ」

「なんなら仕掛けたやつに引っかかってくれてもいいんだけど」

「でもそれ、この前は耐えられたじゃん。しかも逃げられたし」


 無論、それらを一切設置しないわけではない。


 しかしこの場に全てを埋めるつもりもなかった。

 運搬の必要があるとはいえ、その手間を嫌って一か所に集めたところで意味がない。


「仕掛けて来てくれるのならなんでもいい。この前逃げ切れた空と油断してくれるのならありがたいくらいだ」

「うわー、悪い顔。確かにその方がありがたいけど」


 だからこそ、代わりのトラップを準備していた。


 直接攻撃とみなされないであろう魔法の精度を高めさせておいた。

 2943側の勢いを削ぐためのプランを。


「いつでも撃てるようにしておくんだ。……もうじき始まる」


 彼らも、前回の結果に満足などしていない。


 そもそも圧倒的に有利だったこともそう。

 あの状況から負けるなど、あっていい筈がない。


 何より、仮想的であった天条桐葉をどうすることもできなかった。


 あと一人というところまで追いつめたにもかかわらず、逃げられた。


 魔法の雨にさらされながら、彼はチームメイトを抱きかかえて離脱して見せた。


(……次は思い通りにはさせん)


 かえって力の差を見せつけられたような気さえしていた。


 不正なく正面から天条桐葉を打ち破らなければ、彼らにとって真の勝利とは言えない。


『――開始!』


(……始まる――)


 そうしていよいよ、開始を知らせるアナウンスが鳴り響く。


「っ、リーダー後ろ!!」

「何……!?」


 直後に彼らが聞いたたのは、封魔石が弾ける音だった。


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