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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
314/596

031

「――それじゃあ、次回の対策を練ろうか」


 それは戻ってきた東雲さんの提案でもあった。


 訓練場のすぐ傍のミーティングルームに、東雲先生の姿はない。

 後は俺達に任せるってことなんだと思う。


「変な絡めて使わずに正面行った方がよくね? イカサマされない分、この前よりは戦いやすくなるんだしよ」

「でも、他に手札があっても損はしないかなって。……向こうの噴水を防げるってことは前回のでバレちゃったし」

「あんなってぇ噴水あって堪るかよ」


 向こうの戦い方も、きっと変わってくる。


 この前みたいに数的有利を確保しつつ各個撃破を狙うとは思う。

 ただ、止めに使ったあれやこれやを先に用意することができない。


 そうなれば、こっちにも正気は十分にある。


 もちろん分断されないようにするのが一番。

 だけどないとは言いきれない。


「ま、待って。あれってまだ、確定したわけじゃ……」

「「いいや、あれはヤってる」」

「無関係だと言い張るのは無理がありますね。あの有様では」

「そ、そう……?」


 ルールはそのままだから、攻撃の手段に変化もなし。


 フィールドもこの前と全く同じ。

 あんな土地を何個も用意できるわけがないから仕方がない。


 この前の戦いで、多少は下見も出来た。

 作戦立案用に地図も渡してもらったけど、予定通りには多分行かない。


 前回みたいに走り回る羽目になるのが目に見えてる。


「最悪、そこはいいんだよ。イカサマでもそうじゃなくても、どっちでも。もし向こうがまたやるようならこっちも仕掛けてやればいいんだし」

「これっぽっちもよくねーよ」


 どちらにしても、始まってから仕掛けられたものはちゃんと避けなきゃいけない。


 多分、向こうはきっと使ってくる。

 あれだけ威力があるんだし、人数もいるから使う筈。


 設置しておいた場所に俺達を誘導する、とか――そういう真っ当な使い方で。


「それに、私達だけじゃ……同じ量を設置するのは……」

「そう。そこなんだよ、問題は。数がないならアドバンテージとしては弱いし」

「他にもあんだろ。山のようにあんだろ。問題。そこ無視すんなよ。超重要だろ」


 ただ、俺達が同じように設置して強いかは微妙なところ。


 一発逆転は狙えると思う。

 仕掛けられる数は向こうの半分以下だろうけど。


 少ない量を一カ所に集約すれば、そこに辿り着くまでが大変。

 かと言ってバラバラに設置したら、今度はただの置物になりかねない。


「同感です。それに、わざわざ事前に仕掛ける必要などないでしょう?」


 それに、あれらそのものの仕組みからして、その気になれば――……


「だよな? ほら見ろ、天条。衣璃亜ちゃんだってこう言って――」


「防壁の魔法を上手く利用すれば、事前に設置することなく相手に負荷をかけられるでしょう」


「そっちはそっちであくどいこと考えてんじゃねーよ!?」


 ……その手があったか。


 いろいろ考えていたつもりだったけど、なるほど。

 言われてみればそれがあった。


「勿論、違反にならない程度の範囲には抑えますよ。反則返しでねじ伏せるより手間はかかりますが」

「そういうのを屁理屈っつーんだよ」


 もちろん怪我なんてさせられない。

 その辺りの調整はかなり難しい。


 ……正直、前回は向こうもその辺を若干忘れてたような気がするけどそれはそれ。


「……やっぱりそれもありだよな……」

「ナシに決まってんだろ。オメーさっきからマジ悪役の思考回路してんぞ」

「でも前にやられたし? まあ、若干事故っぽかったけど」

「じゃあ事故じゃねーか」


 全くの想定外とも思えなかった。


 一番の目的は退路の封鎖。

 でも後ろに二枚目を設置したってことは、俺が手前の壁を乗り越えるのも見越してた筈だ。


 そこに岩の壁を持ってきた。 

 ぶつかれば特に危なそうなものを。


(……さすがに考えすぎだろうけど)


 真面目な話、気を付けた方がいいのは間違いない。


 そもそもあんな風に囲まれるだけでも一気に不利に立たされる。


「さ、先に正面からのプランを先に立てた方が……。それを完成させてから、穴になる部分を、埋める感じで……」


 ――ヒートアップしかけたところに歯止めをかけてくれたのは、もっともとしか言いようのない東雲さんの言葉だった。


「それは確かに。じゃあ、そこはまず確定させて、っと――」

「書くのは、私が……。天条くんは、そのまま進行を……」

「了解、任された」


 ホワイトボードに東雲さんが書いた字は丁寧そのもの。


 ……雑な早書きとは比べ物にもならない。

 お願いしてよかったと心底思う。


「つってもどうするよ? やっぱTTTか?」

「やっぱも何も今初めて聞いたんだけど、それ。どんな内容だよ」

「T(天条)T(突撃)T(タクティクス)」


 ……よくもまあこんなところでドヤ顔を決めてくれやがって。この野郎。


 何が天条・突撃・タクティクスだ。

 わざと勢いを余らせてそのままこいつのところに突っ込んでやろうか。


「それじゃあまずは言い出しっぺにお手本を見せてもらおうかな。俺達と――そうだ。夏谷さん達を相手に」

「おい待て人数増やすな勝てるワケねーだろ!」

「本番に人数を近づけようとしただけなのに?」


 勝てないって分かってる人数差に挑ませようとしたのかよ。やっぱり。


 人数不利はもうどうしようもない。

 今から突然、不自然な転入が連続したりしない限りは覆しようがない。


 それにしたって限度があるだろ。限度が。

 この前の離脱だって大変だったのに。


「絶っ対それ以外の理由あったろオメー」

「とんでもない。仲間なら同じ体験をしてこそと思っただけで」

「んじゃーオメー、東雲と衣璃亜ちゃんに同じこと言えんの?」


 ……何を言い出すのかと思ったら。


 イリアや東雲さんに? 同じことを?

 そんなの最初から分かってるくせにわざわざ聞くのか。こいつ。


「そんな酷いこと言うわけないじゃん。なに言ってるんだよ、まったくー」

「ちょっと待て。どうしてオメーが仕方ないなー、みたいな雰囲気出してんだ。コラ」


 そんなことを言われても。


 実際、二人に向かって言うわけがない。

 言い出した本人以外に体験させるつもりもない。


 イリアも東雲さんも、冗談にしたってそんなことは言わないだろうし。


 理由らしいものは今からでも山のように思いつくけど、一番は決まってる。


「……先にアレなアイデアを出したのが小城だから?」

「アレはねーだろ。アレは」

「じゃあ無謀」


 ――会議なんて大層な雰囲気は、これっぽっちもなかったと思う。


「どうにか向こうを分断できれば楽ですが……」


「天条見つけたら何人かで追い駆けてくるんじゃね?」


「最初だけど、遠距離から何発か狙ってもらってもいい? 一人くらりならなんとか脱落させられるかも」


 ただ、好きに言ってるおかげか……いろいろ、上手く使えそうなものも、確かにあった。


「そういうことなら、これとか……?」


「「それだっ」」


 なんとかいける。


 皆の表情を見ていたら、そんな気がした。


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