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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
292/596

009

 身に着けた装備を確かめ、桐葉は息を整える。


 その傍には当然、衣璃亜達の姿もあった。

 彼女達もまた、支給された装備を確かめていた。


 そんな四人の視線の先には、相手となる2811所属の姿があった。


「……7対4って、さすがに不利過ぎねぇ? 人数調整とかしてくれりゃいいのに」

「まあ、二倍の戦力差にならなかっただけでも」

「そこまで言ったらもう2チームに分けた方がいーだろ」

「そうしたとしても、連戦で消耗させられるのはこちらでしょうね」

「そりゃそうだけどよー」


 人数の差に、小城が不満を漏らす。


 火村ほむらの宣言通り集合時間丁度にやってきたのは、一旦離れた火村を合わせて8人。

 上級生含め、7人の生徒との戦闘がその時点で確定してしまっていた。


「ゴメンね。うち、人数多くてさぁ。人数を合わせるとか、そういうルールも特にないみたいで」

「それに、いいじゃん? 人数少なくても、そっちは天条君がいるんだし」

「そうそう。これで大体トントンだよ」


 2811の生徒達にも、桐葉達の声は聞こえてしまっていた。


 気を悪くした様子もなく、三人分の声が返ってくる。

 最低限の自己紹介こそ受けたものの、桐葉達もまだ顔と名前が完全に一致していなかった。


「……とてもそんな風に思っているようには見えませんね」

「別にそんなところで文句を言わなくても。……実際、本当に互角かどうかは分からないし」


 橘に忠告を受けていたこともあって、桐葉は慎重だった。


「それって、やっぱり……」

「ん、あると思う。今回の装備の扱いにも慣れてるだろうし」

「あっ、そっちの……。そ、そうだよね」


 桐葉達と同じ一年生はたったの2人。

 その二人を除けば他は全員、最低一度は個の模擬戦を経験している者ばかりだったのだ。


「マジ、気を付けた方がいいよなぁ。いつものボールとも違うしよ」

「そこだよ。……下手をしたら味方に当たりかねないし」

「特に水とかな」


 桐葉達も、必要最低限の扱いは学んでいた。


 しかしそれも、決して万全と言えるようなものではない。

 普段扱っている魔法と違っていることだけは、誰もが理解していた。


「ですが、固まり過ぎるのも危険でしょう。……一網打尽にされかねません」

「で、でも、あんまりバラバラになると……」

「今度は各個撃破されんだろーな」


 移動の指示が出るまでの、最後の打ち合わせ。


 しかしそこでも答えはまとまりきらなかった。

 戦いの部隊の広さを見て、改めて桐葉達はそう感じていた。


「その辺りは連絡を取りながらいこう。最初は四人で……途中、様子を見ながら二手に分かれる方向で」

「組み合わせはどーすんだよ」

「誰かが一人にならなければ、その辺りはどうにでも」


 分散させることで、集中攻撃を受けるリスクが大きくなることは理解していた。


 今回、魔法の威力を考える必要はない。

 素の身体能力にも大きく左右されると、桐葉は感じていた。


「あ、そーだ。俺いいこと思いついた」

「……いいこと?」


 そんな中、ふと、小城が桐葉の肩を叩く。


 しかし、その表情はやけに自信に満ちていた。

 そんな小城を見て、桐葉は思わず不安を抱く。


「まず、天条が突っ込むだろ? んで、相手の陣形が乱れたトコで天条が外から攻撃。そうやってできた穴に天条が――」

「人を勝手に忍者に仕立て上げるな」

「その作戦だと、えっと、天条くんが瞬間移動をしないと成り立たない気が……」


 そしてその予感は、すぐさま的中する事となった。


「なんだよー、いいじゃねーか。アイデアの一つとして」

「却下だ、却下。無茶言うなっての」

「ちぇー」


 そのような強行突破が難しいことは桐葉自身、よく理解していた。


 密集地帯に無策に飛び込むわけにはいかない。

 味方による回収も当然、困難になってしまう。


「……本気で桐葉に全てを押し付けようというなら、私が後ろから討ちますよ」

「怖ぇーこと言うなよ!?」


 無論、衣璃亜の言葉は戦術的な理由だけではない。


「て、天上さん、怒らないで……。それに、そんなことしたら人数が……」

「……それもそうですね」


 人数以外も気にしてくれ――そんな小城の訴えが届くことは、やはりない。


 そこへ、またしても2811の生徒達から声がかかった。


「こっちはそれでもいいよ? 天条君のこと、先に行動不能できるんでしょ」

「ねー。一人減ったら、こっちは一人を相手に二人でやれるようになるし」


 その主張は、桐葉を倒すという前提の上に成り立つもの。


 しかしそれについて桐葉本人は勿論、衣璃亜も言い返すことはない。

 言葉にすることは、なかった。


「あ、どうもすみません。嘗めたこと言っちゃって。あとで本人にはきつーい罰を受けてもらうので……」

「おい待て、オメーまで俺のこと売る気かよ!?」

「自業自得だこの野郎」


 薄情者と叫ぶ小城に背を向け、桐葉は再び森を睨む。


 まだ、その内部を把握できたわけではない。

 開始前まで閲覧が許されている地図も、情報源としては頼りない。


『――各自、森の中へ!』


 その時、移動を促すアナウンスが鳴り響く。


 開始の配置は、生徒達に一任されていた。


 相手のチームのすぐ傍で待ち構えるのも、逆に、大きく離れるのも、各人の判断次第であった。


「皆、周りには気を付けて。……二人くらい、こっちに回すかもしれないし」

「ん? なんで二人って思ったんだよ?」

「まとめて行動不能にされても、数的有利を保てるギリギリのラインだから。一人だけだとやられる可能性が高いだろうし」


 桐葉がそう言った時、茂みが揺れる音が響いた。


 桐葉達からは少し離れた位置から、二つ。

 あっという間に遠ざかっていく。


「……近いことは考えていたようですね」

「あっ、それじゃあ……」

「まだなんとも。……他に隠れてるかもしれないから、気を付けて」


 声をかけつつ、桐葉は周囲を見回す。


(なんて、そうホイホイ出てきてくれるとは思えないけど……)


 簡単に見つからないことは承知の上だった。

 声を発したのも、あくまでその姿勢を見せるためのものだった。


「「「…………」」」


 各自、息を潜めて相手の様子を窺う。


 桐葉達4人は、自然と背中を合わせるような姿勢で周囲を警戒していた。


(一体、どこからくる……?)


 創始している間にも、刻一刻と、その瞬間は迫りつつあった。


 腕時計が、開始時刻まであと僅かであることを示している。


 生い茂った葉が風に揺られ、騒ぎ立てる。

 それ以外の音が響くことは、決してない。


『それでは――…………開始!』


 そうして、火蓋が切って落とされ――


「はっ…………!?」


 ――直後、渦巻く激流が、桐葉達の前に姿を現した。


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