014
……あいつも、やっぱり色々やってんのな。
その真っ最中に襲われそうになって、なんだかんだあったのに追い返したとか。
あいつは『逃げられた』とか言ってたけど、んなことねーだろ。
人質まで取ろうとしたってことは、向こうに『ヤバい』って思わせたってことなんだから。
やっぱり本当だったんだろーな。あの噂。
中学の頃から教団のやつらとマジでやりあってるって話。そうじゃなきゃ納得できねーって。
あいつがこっちに来た翌日の映像も見せてもらったけど、間違いねーよ。あれ。
そりゃあの神堂零次がいたんだから、中途半端なやつじゃないとは思ってたけどよ。
だからって朝一番に何キロ走ってるんだよ、あいつ。
東雲や先生の話じゃ、こっちに来て少ししてからは毎日やってるって言うし。
走り終わった後には魔法の練習までおっぱじめて……他にもやってんだろ?
いくらなんでも多過ぎるだろ。どんだけやってたんだよ。
中学の頃からやっててもなかなかああはならねーって。
俺のいたところなんて、基本的な内容ばっかりだったんだけどな。
それでも結構、しっかりと教えてもらったってーのに。
(……天条、桐葉)
こっちに来る前から、名前は聞いてた。
会って話してみて、けっこういいと思った。
いつもあいつと一緒にいる天上は、ちょっと不思議なやつ。
東雲のことは……まだちょっと、分かんねーけど。
だからあいつのこと――それに皆のことも、もっと知りたくなった。
「――出かけようぜ!」
信じられないくらい余裕だらけのスケジュールだった、二日目の昼休み。
もうやることもほとんど残っていない、なんとも言えない微妙なタイミング。
いきなり小城がそんなことを言い出した。
「待った。サボりたいなら明日の方が」
「そーそー、実力テストが嫌だから――……じゃねーよ! 今度の週末遊びに行こうっつったんだよ!」
……今、思いっきり本音が出ただろ。
入学して早々どうしてテストなんか受けなきゃいけないんだってぼやいてたのが昨日のこと。
その日休んでも振り替えられるだけだと東雲先生に聞かされて、小城も渋々受け入れていた。
「なんだ、それなら最初からそう言ってくれればいいのに」
「真っ先にサボりを思いつく方がやべーんだよ。真面目キャラはどうしたんだよ」
真面目? まだ言うか。
話している内にどこかで察してくれると思っていたんだけど。
まあ、いいか。授業が始まったらすぐに捨てることになるイメージなんだから。
「……また随分と妙な印象を持たれているようですね? 桐葉」
「美咲に離したときの反応が目に浮かぶよ」
「えぇ、確実に聞き返されるでしょうね。同姓同名の他人を疑われるかもしれません」
……だからって、何もそこまで楽しそうにしなくても。
確かに言う。絶対に言う。俺も似たようなことは考えてた。
それでもこう、愉快そうに言われるとなかなかクるものがある。どこの誰だ、イリアに変なことを吹き込んだのは。
……この話を却下しない代償がこれかぁ……
(あとは東雲さんだけど……)
どうだろう。なんだか勝手に話を進めちゃったけど。
隣の席なんだから、聞こえてないってことはない筈――
「えっと、それ……私も参加していいの……?」
……またとんでもないことを言い出してくれたな。
どうしてそこまで遠慮しなきゃいけないのか。
これでも一応、チームメイトになるんだけど。……嫌がってるわけでもないみたいだし。
「いいのって、なに言ってんだよ東雲。参加してくれよ。オメーも誘ったんだから」
「そうそう。ここにいる四人が集まらなきゃ小城の計画は始まらないみたいだし」
「そーいうこった」
少し、ズルい言い方をしてしまったかもしれない。
ただやっぱり、小城の考えは予想した通りだった。
「えっと……?」
「いやさ、俺だけこっちに来るの遅れたろ? だから……親睦会っつーの? もうちょっとゆっくり話してみたかったんだよ。……いいだろ?」
「ん、俺は賛成。これから長い付き合いになるだろうし」
「桐葉が行くのなら断る理由はありませんよ」
四分の三。多数決ならそのまま決まり。
ただ、今回は全会一致じゃなきゃ意味がない。
強要なんてしたくない。それはきっと小城も同じだと思う。
でも、変に遠慮をされるのは嫌だ。チームメイトということを抜きにしても。
「俺も、もう少し東雲さんと話をしてみたかったし。……どう?」
「先言うなって。今回の発案者、俺だかんな?」
「分かってる、分かってる」
地元の拠点にいた頃の生活とは、随分違う。
向こうにいた頃は、組織の所に毎日のように通ってた。ほとんど泊まり込みの日もあった。
だから、組織の人と話す機会も今以上に多かった。
こっちの拠点にそこまで長居したことなんてない。
このエリア二九四三に来てから三週間以上経ったけど、どうにも遠慮され過ぎているような気がして仕方がない。
「そ、そういうことなら、私も……行きます」
そういうところも含めて、もっと知れたらいいって思った。
――必要とされてるんだ。私のことも。
ちゃんと、仲間の一人として。義務感なんかじゃなく。
そのことがとにかくうれしくて仕方がなかった。
初めて、だった気がする。
二人からあんな風に言ってもらえるなんて思わなかった。
本当は、お姉ちゃんから言われてた。
天上さんのことも誘って、休日に皆で集まってみたらどうかな、って。
こっちに来るのが遅れた小城くんは勿論、天条くんも天上さんも、こっちのことはあんまり知らない。
皆の案内も兼ねて、出かけてみたい気持ちはあった。
だから、先に言ってもらって、ほっとした。
……積極的に話しかけに行けなかったから、そういうところで気を遣われてしまったかもしれないけど。
それでも、ああ言ってくれた天条くんと小城くんのこと、疑いたくなかった。
信じたかった。あの時の言葉を。これから仲間になる人たちのことを。




