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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Panicking Unite
213/596

013

 起きた事は全部、駆け付けたメンバーを通じて組織に伝えた。


 幸いにもこれといった被害はなし。

 念のために機材を使って調べたみたいだけど、おかしなものは見つかってないらしい。


 空から人が降って来たって腰を抜かしてしまったお爺さんには、悪いことをしてしまったけども。


 本当に、ただその場所を通りかかっただけだったらしい。

 魔力の反応も何もなし。最低限の記憶処理だけして、そのまま送ってもらった。


 東雲先生は、『天条君達でなければ危なかったかもしれないね』なんて言ってたっけ。

 やってきたメンバーも揃って信徒の反応を掴めなかったみたいだから、逃げ足も速かったんだと思う。多分。


 最初に狙撃されそうになってから、組織の対応が一段落するまで一時間弱。

 長いようであっという間。家に戻ってゆっくり朝食を摂る時間くらいは、あった。


「て、天条くん、大丈夫? 今朝のこと、お姉ちゃんから聞いて……」


 だから、東雲さんに心配してもらう程のことでもなかったりする。


 待ち合わせ場所は昨日と同じコンビニ。

 昨日よりも早い時間に来たせいか、印象は一気に変わった。


 親の車から降りる人もいれば、買い物のために立ち寄るもいる。

 学校のすぐ近くにあるだけあって、制服姿が完全に途切れることもない。


(……本当は、そんな公衆の面前で話すようなことではないんだろうけど)


 青い顔で投稿してくる東雲さんを見たら、後回しになんて出来なかった。

 教室の中に比べたら、まだ聞かれる心配も少ない筈。


「大丈夫、大丈夫。イリアも全然ケガしてないし。……おかげで向こうには逃げられたけど」

「見捨てるよりはいいでしょう。……これまでも、そうしてきたんですから」


 そんなことをする筈がないって、言われた気がした。


 できるわけがない。したくもない。

 組織の人達も、基本的な考え方は同じ。……だから、狙撃手もあのお爺さんを狙った。


「それに、あれを呼び出したのも相方がやられると考えたからでしょう。……苦し紛れの一手にしか見えませんでしたが」

「でもあの時、まだ五〇メートル以上あった。あれだけ離れた場所に狙い通り呼び出せるっていうだけでも十分厄介な相手だよ」


 本当に、厄介なことこの上ない。


 地元にいた連中もすぐ化け物をけしかけて来たけど、そういう技術を披露することはほとんどなかった。

 代わりにゴリラやらデカい鳥やら、妙にバリエーションがやたらと豊富だったけど。


 人払いの魔法も、そこまで広い範囲はカバーしきれない。

 そもそも、そんなことをしていたら魔力がいくらあっても足りやしない。


 もし広い範囲を巻き込むことができたとしても、今度は他のところで影響が出る。


「なんだよ、五〇メートルって。誰か走んの?」


 ――そこにとうとう、小城もやって来た。


 一体何を考え込んでいるのかと不思議そうな表情で。

 状況を見てすぐに察してくれると思ったんだけど。


「走っている途中に妙な輩に絡まれたんですよ。それだけの話です」


 思い出したくもないとばかりに吐き捨てた。


 信徒が姿を消してからというもの、イリアはずっとこんな調子。

 俺が逃がしてしまったことに怒っているわけでもなく、この調子。


「……なんか衣璃亜ちゃん、機嫌悪くね? なんかあった?」

「あったと言えばまあ、あった。……組織からのメール、まだ見てない?」


 あれからすぐにメールが一斉送信された。

 あの時点で分かっていたことだけだけど、それでも十分。


 必要なことは書いてあるから、誇張でもなんでもなく読んでいればわかる。

 ちゃんと、最後まで読んでいれば。


「げっ、あれ大事な連絡だったのかよ。マジで?」

「マジ。読めば大体事情が分かるくらいには大事。……一体なんだと思ったんだよ」

「や、東雲先生の名前があったからさ? また遅刻しないように連絡してくれたんだろーなって」


 だったら余計にちゃんと読まなきゃ駄目じゃないのか。


 そもそも送信主は東雲先生じゃない。

 確かに件名に名前は書いてあったけど、使われたのは一斉送信用のアドレス。


(寝ぼけて見たな、さては……)


 それで返信もできなかった、と。

 時間も時間だったけど、確認くらいしておけばいいのに。


 本当に何も知らなかったみたいで、読めば読むほど小城の顔は引き攣っていった。


「うわぁ……これ、オメーのことかよ?」

「俺とイリアのことだよ。つまり、そういうこと」


 早朝の襲撃は珍しいとは思った。


 抑えが聞かなくて夕暮れに活動を始める連中を見たことはあったけど、朝はさすがに初めて。


 でも、今まで襲撃されなかった理由は分かる。

 ほとんど毎日師匠がいたからだ。


 あの人に挑むほど連中もバカじゃない。

 他より強力な個体を呼び出しても、あの人は問答無用でなぎ倒していくんだから。


「これ、さすがにランニングコース変えた方がいいんじゃねーの? バレてんじゃねーか。ついでに俺のこと起こしてくれよ」

「なるほど、確かに。……お望み通り日の出前に叩き起こしてやる」

「そこまで言ってねーよ!?」


 じゃあどうしろと。


 起こしてほしいならその時間しかない。

 遠い上に、ランニングできそうな道がほとんどないんだから。


 本当に、どうしてあんな所に立てたのか不思議で仕方がない。


「我がまま言うなよ。これでもできるだけ遅くしようと思ったんだから」

「嘘つけ。むしろ積極的に早めようとしてるだろ、オメー」

「何を言うか」


 そこまで言うなら遅くしてもいい。

 それはもう思いっきり、日付を跨ぐくらい遅くし手もいいなら考える。


 まさか、まさか出かける三十分前に起こしてほしいなんて言わないだろうし。


「日の出前なんかに起きてどうすりゃいいんだよ俺は……」

「やることをやればいいんだよ。何をそんな分かり切った事」

「それがねーから言ってんだよ!?」

「あるだろ。料理とか予習とか」

「うわ、真面目かよ……」


 真面目? 誰を見て言ってるんだ、小城のやつ。


 美咲とも面識はないはずなのに。

 この中で言うなら東雲さん?


「……物は相談なんだけど、東雲さん。軽い電撃を浴びせる装置とかない?」

「おい待てオメー俺のこと殺す気か!!」

「誰もそんな物騒な代物なんて使わないって」


 どうしてそんな教団みたいなことしなきゃいけないんだ。


 まして同じチームの仲間に。あの化け犬が相手じゃないんだから。


「さ、さすがにないと思う……あっても、危険なものしかないと思うから……」

「そっかぁ……」

「なーに残念そうな顔してんだよ、コラ」

「いやいや、まさか。ただ、思っていたよりも昨日のことを気にしてるみたいだから俺なりに気を遣ってみようかと」

「穏便さのかけらもねーじゃねーかよオイ」


 失礼な。色々と考えた上で一番良さそうなプランを選んだって言うのに。


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