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番外編  〈あの日どの時〉

短い話を2話入れました。


サブタイトル書き忘れました。すみません。

  〈エクルの左目〉



「エクルってさ、左目隠して隻眼(せきがん)っぽくしてるけどさ。実は両目見えてるよね。普通に」

「「え?」」


 ゴードの町に着いて、三日経ったある日の昼時。何気なく言ったティティの言葉にエクルとルゥカは驚いた。

 ここは町のお食事処。ちょうど混んでいる時間帯で店内は喧噪で満たされ、片手で届きそうな距離にある隣の机の会話も聞こえないくらい騒がしい。


「だからね・・・・・・」

 呆気にとられる二人を聞こえなかったと思ったらしいティティがもう一度繰り返そうとしたがそれをルゥカが遮った。わざとではない。

「どうしてわかったの?」

「え?だって、ほら小屋のトコで魔法で創られた大きな犬に襲われた時左からの攻撃も普通に避けてたし。左側にある物を見る時でも顔をずらすとか、身体をそっちに向けるとかせずにそのまま見てたし」

 もぐもぐ、と昼食を食べながらさも当然、という顔をしてティティが言った。

 鋭い。確かに、エクルは左目を隠して隻眼風を装っているが見えていないわけではない。

 それを、ティティはあの大きい犬を相手にしている時に見抜いたのか。

 随分と余裕があると言うか、すごい洞察力だと言うか・・・・・・。普段ほわほわ天然なくせに意外と侮れない。

 色の違う片目――――左は姉と同じ青色で右は紫色――――を隠すために巻いているのだが、どうしてかどんな厚い布を巻いても視えてしまうのだ。


『それは』

『マナの影響ね!』


 嬉しそうに双子が乱入してきた。

「ちょっ!?二人とも声出しちゃダメだよ」

 こういう時一番に反応するのはエクルだ。

「平気、平気。聞こえてないって」

 慌てるエクルに呑気にひらひらと手を振るティティ。

 現在三人はティティを挟んで左にルゥカ、右にエクルと横に並んで座っている。ちなみに正面には壁がある。ややかわった造りをした店である。


『右と』

『左で』

『目の色が』

『違うでょ?』

『マナが』

『影響してるのよ』

『魔力を』

『帯びているから』

『モノがあっても』

『関係ないのよ』

『見ている』

『のではなく』

『視ている』

『のだから』

『これぞ』

『正に』

『『魔術の神秘』』


 最後はきれいにハモって可愛らしく、くすくすと笑う。

「へぇ~、そうだったんだ」

 ルゥカが素直に感心する。

「だから、こうやって左から手を伸ばされても・・・・・・えいっ!」

「ん?」

 ぺし。

「ちゃんと反応できるわけです。ぶ~」

「人の物を取らない。欲しければ口で言いなさい」

 ぽか。

 エクルのご飯をどさくさ紛れに横取ろうとしてエクルに手を叩かれ、ルゥカに頭を小突かれたティティだった。

 天気のいいある日のお昼の話。





  〈ティティの後ろ〉


 わたしが生まれたのは聖歌という形なきものを媒体(ばいたい)とした医療の技術に特化した国だった。


 両親の記憶はなく、幼い頃から教会で育った。基本的な読み書きはそこで習い、数多ある聖歌もしっかりと教わった。

 わたしは左右の目の色が微妙に違う。よくよく注意して見なければわからない程度でしかないけれど、誰もがこの目を忌み嫌った。悪魔をその身に棲まわす穢れた子だと・・・・・・。

 それは、俗に言う オッドアイ 。

 信仰心あついこの国では左右で色の違う目は恐怖と軽蔑の対象。一つの身体に一つの魂、それが世の理であり主の教え。

 生まれながらに主の教えに背いているわたしに周りの人達は恐怖心から目を合わせようとはせず、話をするときも必要最低限のことしか言わなかった。

 そんなわたしに一番良くしてくれたのが大司教様だ。神語を教えてくれたのも大司教様。

「今では数えるほどの者しか読めないし、もう誰も使わない忘れられた、けれど力のある言葉だ」

 と言いながら。

 老齢の大司教様は既に第一線を退いた身ではあったが教会での発言力は大きかった。

 

 年に一度、建国記念の日には教会で聖歌隊による聖歌の大合唱が行われる。その大合唱の半ばでわたしは度々指名を受けてソロを歌った。

 わたしが選ばれると大司教様はとても喜んでくれた。わたしはそれが一番に嬉しかった。

 

 ある日、四国の中心にある「夜の森」と呼ばれる不可侵の場所で異変が起こった。

 現大司教様曰くこれは主がお怒りになっている、らしい。わたし達は気づかない間に主の意思に背くことをしてしまったのだろうか?

 三日三晩の会議の末、全国民を代表して誰かが主にお伺いをたてることになった。

 これはとても重要で名誉ある役目だと現大司教様はおっしゃり、わたしの肩を叩いた。

 そんな大役を任されたわたしは嬉しくてすぐに老齢な大司教様に報告した。けれど、大司教様は悲しそうな顔をするばかりで喜んではくれず、なぜか何度もすまないと謝った。

 主にお伺いをたてる日の当日、「夜の森」へ行くと他の三国から選ばれたらしい人もいて、年齢は様々だがみんな一様に暗い顔をしていた。

 森の中心にはどこまでも暗く闇を湛えた穴が穿たれていた。これは明らかに人間の業ではない。まさに、主の御業。

 そこに各国の代表が順に飛び込んで行った。わたしは一番最後に祈りの言葉を呟き飛び込んだ。

 大司教様のあの悲しそうな、何かを後悔するような顔が意識が途切れるその瞬間まで瞼の裏に焼きついて消えなかった。


〈エクルの左目〉

「隻眼」という設定だったにも関わらず、本編中一度もそのことに触れられなかったのでここに入れてみました。

〈ティティの後ろ〉

ティティの過去の話です。これは別の話に使う予定でしたかここにも入れちゃいました。

こちらも「ティティの過去は本人に聞け」とか言いつつ誰もそのことを尋ねず、機会を逸してしまったので泣く泣くここに入れました。



閲覧ありがとうございました。

「奇跡の継承者と時空の旅人」はこれで終了です。

最後まで駄文にお付き合いくださりありがとうございました。


次は、前回書いていた「呪いの輪廻 王女の運命」の番外編(?)を書こうと思っております。

少し間が空きますがそちらの方もよろしくお願いします。


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