15 カナリヤの子守歌
香菜梨は地上げ屋たちに向かって歌い始めました。美しく切なく、聞いている者はみな心が安らぎ、忘れていた幼かったころのやさしい気持ちがよみがえります。男たちは次第に眠っていきました。
ユキ「ああ何だろう、今までも聞いていたはずなのに香菜梨さんの歌聞いていると、眠たくなる。」
チュー吉「ここは特殊な空間、かくれ里と同じ異世界です。香菜梨さんの力も強く働くのです。」
ユキ「そうよね、香菜梨さんの歌は都会でしか聞いたことが無かったわ。でもここで聞いてる歌は、リラックスする。」
ドキッ「可愛いボニータ、よろしければ私の腕の中でお休みください。」
ユキ「はい!(^^ゞ」
ミー「ダメニャ!」
チュー吉は男たちが眠ったのを見ると、呪文を唱え始めました、そして。
チュー吉「忘れろ、すべて!」
ドキッ「あとは私の部下が人形の家の外に運ぶであります。」
香菜梨「目が覚めた時はこの家のことも忘れて、真面目な業者になっているわ。」
番田「いつまでもその心でいられるといいですが。」
香菜梨「都会では人の心も誘惑されやすいです、絶対に良くなるとは言えません。悲しいけれど、どの生き方を選ぶのはその人の権利でもあり、責任なのですもの。」
チュー吉「善なる心が今度は勝ってくれることを期待しましょう。」
ユキ「思い出した!この家の持ち主を探す手がかりを見つけなきゃ。でも時間が足らない。」
真春「私はタンスの中の時間を止めました。悪者との戦いが籠城戦になるかと思ったので。」
番田「そうか!うぐいす姫の民話と同じだ!タンスの引き出しを開ける度に稲作の一年が見えて、その間に一年が過ぎていたという。」
ユキ「かくれ里も同じ、沢山旅をしたわ。たぶん何カ月も。でも現実の世界ではほんの数分だったわ。」
真春「EREHWONは何処にもない世界、ですから時の流れも自由なのです。」
*EREHWONはNOWHEREを逆に読んだ言い方です。西洋のユートピアのことです。
みんなはアトリエに行きました。
真春「あの人は、ここで絵を描いていました。」
ユキ「みんな真春さんの絵ね。」
番田「この部屋のどこに手がかかりがあるのだろう?」
真春「引き出しも、戸棚もみんな見ました。でも手がかかりになりそうなものはありませんでした。」
ユキ「もう何もないのかなあ。」
真春「見つからなかったその時は、山の中にタンスを置いてくださいね。私はそこで思い出とくらします。」
皆はあきらめかけていました。
ミー「真春さんの絵可愛いニャア、みんなどこか見つめてるニャア。」
香菜梨「それです!」
ユキ「えっ?」
香菜梨「真春さん、絵はずっとこの位置に飾られているのですよね?」
真春「はい、私が人形に入魂したあと、そして再び人の意識を取り戻したとき、絵の配置は変わっていませんでした。」
番田「これらの絵の真春さんが見つめている場所、ほらあそこの絵!みんなあの絵を見つめているわ。」
そこには画家と真春二人を描いた絵がありました。画家は額に掛かっているのと思われる絵を描いている姿です。画家の片手には封筒が描かれていました。
香菜梨「この額縁の中だと思います。」
みんなは額縁を外し絵の裏を見ました。
ユキ「あったあ!」
ミー「絵と同じ封筒ニャ。」




