作戦会議
こんばんは!今回もよろしくお願いします!
「作戦会議?」
「そ!試すにしても、角を提供してくれる鬼がいないことにはどうしようもないでしょう?だから、角を提供してもらうための作戦!」
「ああ……。なるほど……」
確かに、普通に角を齧らせてくれ、なんて言っても誰も協力してくれないだろう。俺だって、そんなことを言われたら拒否するだろうし。日向は昔のことがあるから、もしかすると協力してくれるかもしれないけど、それだと青色の角しか齧ることができない。
「お友達に頼めたりする?」
「いや、無理だろうな。普通の鬼は角に触られることすら嫌がると思う」
「そうなんだ?角って痛覚とかあるの?」
自分の角に触れる。触れている指には角の固さとゴツゴツとした感触が伝わってくる。だけど、角自体は何も感じないし、指が触れていることすら分からない。指で角を弾いてみても、結果は同じだった。
「なにも感じないな」
「だけど嫌なんだ?」
「なんというか、気配?角に何かが近付いてくるとぞわぞわする。小さな虫とかでも、角の周りを飛ばれるとすごく不快なんだよ」
自分で触る分には問題ない。それは『触る』、『触られる』が自己完結しているからなのだろう。
「うーん。鬼の角って霊力の塊みたいなものだから、それで敏感になっちゃってるのかな……?」
「霊力の塊?」
俺の問いかけに奏弥寺が頷く。
「鬼化によって霊力が具現化してるのかなーって。だって、触れはするけど、鬼化を解けばその角って一瞬で消えちゃうでしょ?それに、私が感知できる霊力の量的にも、角は圧倒的に多いから、霊力の集合体みたいなものって考えた方が納得できるというか」
「そうなのか……」
鬼化を解く。するとさっきまで確かにそこにあった角は消えてなくなった。
今まで当たり前のことだったから特に気にしていなかったけど、確かに不自然だ。さっきまで確かにそこにあったものが、跡形もなく消えてしまうなんて。
「ねえ、剛君。先に触るよって言われたらどうなの?」
「そんなこと、言われたことないから分からないな。鬼同士でも、なんとなく角に触るのは避けるし」
「暗黙の了解的なやつなのか~。ん~……。剛君、もう一回鬼化できる?」
一度見られてしまえば、二度も三度も変わらない。何の躊躇もなく鬼化する。
なんだか久しぶりだ。ずっと人前で鬼化することを避けていたから、こんなに何も考えずに鬼化できるのは。
「……どうかしたのか?」
わざわざもう一度鬼化をさせられて理由を聞くと、奏弥寺は目を細めてにこりと笑った。
「今から、剛君の角を触ります」
「やめてください」
「えーーーー⁉」
さっき、嫌だと言ったばかりだと思うんだけど。
「試してみようよ!触るって言われてからなら平気かもしれないじゃない?」
「別に試さなくてもいいだろ。そもそも『触るよ』って言われて触られるのも気持ち悪いし」
「気持ち悪いなんてひどいよ剛君!」
喋る勢いのまま立ち上がって、俺の方に詰めてくる奏弥寺。椅子を後ろに引いて距離を取ろうとするが、隣に置いている椅子にぶつかって、それ以上引くことができなかった。
「さっきも言ったけど、なんか嫌なんだって。何かが近付くだけで嫌だし、そもそも触られるって考えただけでもちょっと寒気がするっていうか!」
「いいじゃん、減るもんじゃないんだし!」
「確かに減りはしないかもだけど、そういう話じゃなくてだな……」
そんな言い合いをしている間にも、奏弥寺の右手が俺の角に向かって伸びてくる。その手を見て、冷汗が背中を伝った。
奏弥寺の手を払いのける——、いや、鬼化している状態でそんなことをすれば、意図せず奏弥寺を傷つけてしまうかもしれない。それなら、鬼化を解いてしまえばいいんじゃないか——。
「剛君、気付いてる?」
「え?」
そんなことをぐるぐると考えている俺とは正反対に、奏弥寺の声は落ち着いていた。
「何に……」
気付いているのかを聞こうとした瞬間、寒気が背中を這い上がってきた。全身に鳥肌が立つ。ぞわぞわ。気持ちが悪い。
「うっ……うわぁ!」
がむしゃらに両手を身体の前で振ると、奏弥寺が慌てたように俺から距離をとった。
「わ……本当に嫌なんだね。ごめんね」
「な……?どうやって……?」
感触はもちろんなかった。だけど、この全身を回る嫌悪感の正体は理解できる。
「左手」
奏弥寺がにっこりと微笑みながら、左手を広げて見せてくる。
「剛君、私の右手に気をとられていたでしょう?だからその隙に、左手で触っちゃった」
「触っちゃったって……」
どうして気が付かなかったんだ。普段なら——と言っても、ここ数年の話ではないけど、角に何かが近付くとすぐに察して避けることが出来ていたのに。
納まらない鳥肌の代わりに、鬼化を解いて角を消す。そうすると、少しだけ感じていた寒気が引いた気がした。
「別の何かに強く意識や注意を向けていると、鈍感になるのかもしれないね。これは使えるかもしれないな……」
「使える?」
嫌な感覚が収まってきた。不快感で力が入っていた身体を休めるために、椅子の背もたれに体重を預けて楽な姿勢をとる。
「そ!鬼の角を平和的にもらえる手段がないなら、力業で奪っちゃうしかないかなーって思って」
「物騒だな。手段を選べる立場じゃないが、さすがに犯罪行為はしないぞ」
「いやいやいや。なにも、通り魔的に奪っちゃおうってわけじゃないよ?と言っても、今私が考えている手段って、剛君を危険にさらすことになるから、正直おすすめはできないんだけど」
「危険って、どういうことだ」
話が見えてこない。
俺自身が危険なのは別にいい。家族や、周りのみんなに危険が及ばず、迷惑が掛からないなら。だけど一体、奏弥寺は俺に何をさせようとしているんだ。
疑問を抱えたまま見た奏弥寺は、得意げな表情で真っ直ぐに俺を見ていた。右手の人差し指をピンっと突き立てて口を開く。
「剛君、『ヨウバク」に入らない?」
ヨウバクに入ろう!




