第55話(^ω^)最終回のようです。
師走の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
現世は色々と大変らしいですね。2020年、色々とありました。まぁでも今年一番世間を賑わせたビッグニュースといえば、やっぱりアレですかね。
"Adobe Flash"のサービス終了。一つの時代が終わりました。ありがとうAdobe Flash、僕は君のことを忘れないから。
さて、僕はと言いますとですね。地獄に帰られなくなってしまって、再び魔王城の地下牢にぶち込まれてしまいました。「もうしばらくお世話になりますわ」と言った時の、
('A`)「はぁ?」
っていう素っ頓狂な声は笑えましたね。側近さんとのーちゃんは、まぁ少しは喜んでくれたみたいでしたけどね。
妃さん?さぁ……僕の目にそんな人は映りませんでしたけどね。豚に靴を舐めさせて恍惚としている女王様は見かけましたけど……僕にはそういう趣味が無いので、あまり関わりたくないなとしか思いませんでしたね。でも、不幸なことにあっちから話しかけられてしまって。
(*゜-゜)「新しいペットを買うことにしたの。"勇者"って言うのよ」
(*´・ω・)「わんわんお!」
「あ、はい」って生返事しか出ませんでしたね。人間ってここまで堕ちられるんだ……って悲しくなりました。ちなみに豚は勇者という名前みたいです。世も末ですね。
というか彼女は夫と娘の前で恥ずかしくないのでしょうか。魔王と姫にそれとなく尋ねると、
('A`)「は? 豚? 勇者? 何変なこと言ってんだ?」
(*゜A゜)「ここにはウチとお父とお母とアンタらしかおらんで?」
(;側・∀・)「あれ、私は?」
どうも彼らは無意識に豚を存在しないものとして扱っているようでした。本能が理解を拒んだのでしょう。多分、豚は明日にでも屠殺されていると思います。
それで、そんな豚の居る空間に居るのが嫌だったので、さっさと地下牢に戻ることにしたんですよ。そしたら魔王と姫と側近さんも一緒についてくるとか言い出して、その理由を訊ねたら
(*゜A゜)「なんか知らへんけど、ここに居ると気分が悪い」
('A`)「耳鳴りがする」
( 側・∀・)「GPSが狂う」
恐らくは豚の禍々しいオーラのせいでしょうね。吹き出すのをこらえてそのまま玉座の間から退室して、地下牢、というかバーボンハウスに戻ることにしました。一人は抱っこで、三人引き連れて。
あ、抱っこされているのは(・ω・)です。彼、何故か豚と女王の姿を見て卒倒したんで。子どもには少し刺激が強かったのですかね。
そんなこんなで地下牢の前まで来ると、なんか様子がおかしいんですよ、重々しい雰囲気が漂ってる。すると店の中から、声が聞こえてきて……それが四天王の声だったんですね。
(,,゜Д゜)「あんな奴でも居なくなると一抹の寂しさがあるな」
ξ゜⊿゜)ξ「そうですわね。あんなでも憎めない面もありましたし」
从 '-'从「まぁでもコレでよかったんだよ」
川゜-゜)「姉と渡り合える猛者を失ったのは惜しいな……」
部屋に入れなくなるから止めろ。青春の1ページ会話しやがって。ここで俺が扉を開けたら必ず微妙な雰囲気になるだろうが。
(*゜A゜)「ほらほら、はよ入りーや」
('A`)「ご本人登場ご本人登場……くく」
笑ってんじゃねぇぞ、こちとら手が震えてんだ。ここで入ったら絶対にスベってしまうからな……いや、ここはアレだ、普段どおりにいこう。家の扉を開くが如く、便座の蓋を上げるが如く、無感情に、平常を装って入るんだ。
……よし!行くぞ!
(`・ω・)「おいおい!この店には俺がまだ居るぞ!?」
(,,゜Д゜)「まだ居たのか」
ξ゜⊿゜)ξ「出口はあっちですわよ」
从 '-'从「終電まだ間に合うから」
川゜-゜)「去れ」
よし、扉の向こうでは馬鹿に意識が集中している!この隙に……なんて思って扉を開けましたらですね、それと全く同じタイミングで、向かい側の壁から大賢者が姿を現しまして。ええ、とても驚きましたよ。だって地下牢に入り口は一つしか無いんですから。じゃあ彼女はどこからバーボンハウスに入ってきたのかって?
w´‐_‐v「新発明『どこにもトビラ』だ!機能は言わずもがな、巻き起こせ交通革命!」
ということだそうです。僕がこの世界に来て学んだことは、細かいことを考えてはいけないということです。頭が痛くなるから。しかし、彼女のおかげで、大して注目されることもなく僕はバーボンハウス、自分の城に入ることが出来たのです。
ξ;゜⊿゜)ξ「あれ?なんで居るの?」
川゜-゜)「ほう、地獄の都合で……それならしょうがないか」
w´‐_‐v「え?じゃあ私の研究室は?」
('A`)「『どこにもトビラ』があればどこに研究室があっても同じじゃない?」
w´‐_‐v「たしかに。実家の研究室で十分だな」
(,,゜Д゜)「マスター。戻ってきたんなら追加でビールくれねぇか?」
从 '-'从「おつまみも欲しいね。チャーハン以外で」
つくづく、魔族の切り替えの早さというか、目の前の状況をすぐに受け入れる度量の深さというものには感心します。過ぎたものに対する無関心とでもいいますか、それが彼らの弱さでもあり、強みでもあると僕は思います。きっと百年後も千年後も、彼らは変わること無く過ごしていくんでしょう。
僕は表面上は渋々と、けれど少し心を踊らせながらカウンターに立ちました。冷蔵庫からビール瓶を取り出しながらチャーハン名人におつまみの用意をお願いすると、「チャーハンでいいか?」と確認されたので、「いいわけねぇだろ」と返します。いつものやり取りですが、もはやなんだか懐かしくもあります。
全員分の飲み物を用意すると、誰かが乾杯しようと言い出しました。こういう状況だとよくありますね。それで、まぁ乾杯の音頭を取るのは一番立場が偉い方というのが一般的なので、魔王がおもむろに立ち上がって、バツの悪そうな顔で話し始めます。
('A`)「まぁ、俺としては不本意だが……コイツが帰ってきたのも何かの縁だな」
(*゜A゜)「腐れ縁って奴やな」
(;側・∀・)「姫様、どこでそんな言葉を?」
(;'A`)「それはつまり……このバーボンハウスも引き続き営業できるってことだ。まぁ、いいことだと思う」
ξ゜⊿゜)ξ「仕事帰りに一杯飲んでいく分には丁度いいですしね」
('A`)「ってなわけでマスター」
魔王がこっちを見る。真面目なのは苦手で、妙な気まずさを感じていると、再び地下牢の扉が開きました。
(*゜-゜)「アナタ、客よ」
( ・∀・)「どーも朝方ぶりです!片原です!」
( ・∀メ)「腹空です!」
( ・∀・)「おや、乾杯の直前ですか。これはまた良いタイミングで来てしまいましたね」
('A`;)「あれ?地獄に帰ったんじゃ?」
( ・∀メ)「閻魔大王様から魔王殿へ、言付けを持ってまいりました」
('A`;)「言付け?電話でよくない?」
( ・∀メ)「『いちいち魔界に使者を送るのが無駄なんで、転生者は百年単位で一気に回収するわ。だから百年間魔王城で預かっといて』だそうです」
('A`;)「はぁ!?あいつ何言ってんの!?百年!?馬鹿じゃないの!?」
( ・∀・)「そんな風に言い返されるのが面倒くさいから、閻魔大王様も腹空に言付けを頼んだんでしょうね。決定事項ですのでお願いします」
( ・∀メ)「あと私達も引き続き駐在員として魔界に留まることになりましたのでお願いしますね」
( ・∀・)「事実上の左遷です」
(;側・∀・)「……ご愁傷様です」
(*゜-゜)「ま、そう言うわけだから。マスター、私達にも飲み物頂戴」
どういう訳か知りませんが、妃さんは当然のように酒を注文して魔王の隣に座りました。「あれ、勇者は?」と訊ねると、「飲食店にペットは入れられないから、外に繋いであるわ。当然じゃない」と言い返されました。僕にはもう何が当然なのか分かりません。
(;'A`)「えーっと、色々あったけど……まぁ、とりあえず」
(;'A`)「……」
色々ありすぎたせいでなかなか言葉が出てこないようです。
(;'A`)「乾杯ッ!」
「「乾杯!」」
……というわけで、僕はまたバーボンハウス-Samsara-のマスターとして魔王城に寄生して暮らすことになったわけですが、百年間ってスパン長ぇなオイ。そういや、神様は人から忘れられた時に魂は消滅するとか言ってたけど、ま、大丈夫か。僕は小瓶のジンジャーエールを喉を鳴らして一気に飲み干した。
( ^ω^)「ぷはァーッ!この一杯の為に生きてるぅッ!」
('A`)「いや、お前死んでんだけど」
( ^ω^)「こまけぇこたぁいいんだよ!」
■ 異世界転生したけど外出自粛で魔王城の外には出られないようです ■
■ 完 ■




