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09 騎馬とくノ一

 09 騎馬とくノ一




 翌日から、領民全員で戦闘準備に入った。

 亜人は飢えると真っ先に死ぬ身分なので、喧嘩っ早い奴らもいるという。

 大抵は飢えた連中による略奪行為で戦争とか呼べるような代物ではない。

 一種の椅子取りゲームに似ているが、命懸けの椅子取りゲームだから、やられる方は堪ったものではない。


 領主は普通、最終的に領民が残ればいいので、凶作のツケが回っていく亜人がどうなるかなど気にしない。

 奴隷には納税の義務がないからだ。

 領内の田畑の収穫と産物(主に布製品や毛皮、炭、特産品)の採取、商品化は領主に税を払うことで許可される。

 その許可は領民だけであり、奴隷は領民の財産だから、その財産が生産したものは、領民のものである。

(亜人には人権も財産権もないが、考えてみれば女にも何も権利はなく、男に従属するだけだ。従属しないと死ぬか性奴隷しかない)


 つまり、普通は領主も領民も亜人同士の争いにはあまり関心がない。

 凶作でそれどころではないからである。

 どうせ、口減らしは必要になるからだ。

 逆に亜人たちは、領主たちの争いに関心がない。

 食っていけるなら争う必要はないからだ。


 しかし、俺の領民たちは殆どが亜人なのだ。

 敵も亜人だけだろうし。


 しかも、俺は倭人?たちに領主として認めてもらえないというか、今更『人間族』の領主など彼等は欲しくないのだろうと思う。

 独立心が強いと言うよりは、野生化しているようだ。

 えちの特殊事情と言うことになる。


 とは言え、人殺しはできるだけ避けたい。

 マンパワーこそが、この時代の唯一の力なのだ。

 食料生産、備蓄、加工食品開発、海産物の商品化、船造り、そして佐渡金山の開発までが、当面の大雑把な計画である。

 そして、余っている土地は広大であり、足りないのは領民である。

(技術かも?)


 領民を増やして開拓し、更に領民を増やしていくしかない。

 いまのところ俺の計画は『大言壮語』に近いが、領主はそれぐらいで丁度良いらしい。

 政治家の公約マニフェストみたいなものである。

 今よりも未来は良くなると思わせるのが政治なのだろう。

(確かに現実や未来に絶望すると人間はクズになる)


『所得(田畑)倍増計画』

『お金持ちは米を食え』

『最早、獣人は敵ではない』

『NOと言える亜人』

『ふるさとに純金の風呂を』

『月々3万円の子ども手当支給』

『リゾート法』

『建設国債(赤字国債)の大量発行』


 などがいいだろうか?


『伯爵になったら、ロリ妻100人できるかな~』


 どすっ!


「調子に乗りすぎです、クズ」

「ううぅ、ユキナ酷いよ。口で言っただけなのに……」

「じゃあ、今夜からは口だけでするんですね」

「ええっ? それってもしかして?」

「ちち、違いますよ! そんなことは、まだ、できません…… お話だけって意味ですぅ」


 ユキナが恥じらう姿が嬉しかったりする。

 少女マンガの意地悪な悪役みたいになって欲しくはないからだ。


 どすっ!


「誰が意地悪な悪役ですか!」

「うう、復活するの、早すぎない?」


 とは言え、現地妻100人とかは大言壮語である。

 目標と言うより夢かな?

 だって一晩に一人、二人くらいは、まあ、何とかなるかもしれないけど、それ以上は『沢山』としか数えられないじゃないか。

(未開人か)


 しかし。今はその計画達成のために(そっち方面の計画ではない)、直江津も柿崎も取り込んで大きな集団にしていかなければ、領地の発展も未来も見通しが悪くばかりである。


 ついでにだが、できれば可愛い女の子を……

 いや、そうじゃないな。


 逆茂木さかもぎ、落とし穴、弓矢、たんぽ槍が基本戦術になった。

 予想侵入経路を絞るために逆茂木で要塞化し、弓隊は逆茂木を越えたところに狙いを定める練習を繰り返した。


 板塀は火攻めに弱いし、土塀は敵の防壁にも使われてしまう。

 石壁は手間と時間が掛かりすぎる。

 逆茂木は簡単ではないが、上手く組み合わせれば目隠しにもなるだろうし、十分な障害物になる。

 敵も態々、焼いたり、乗り越えては来ないだろう。


 落とし穴は薄い木蓋で覆い、土をかぶせた。

 乗ると踏み抜いて落ちる。

 道幅が広く、直線が長い馬車道には大きめの岩を配置し、シケインを作った。

 それが落とし穴の目印にもなった。

 夜間には十分に威力を発揮しそうである。


 更に、敵の攻撃に対して竹の盾も作っておく。

 片手持ち式ではなく、可動式の壁である。

 たんぽ槍は、先端に球形の木をはめ込んだ軽量の棒にした。

 ここには、まだ鎧の概念がないから、これでも十分にやっつけられる。

 敵は戦争に来るのではなく略奪が目的の夜盗だからである。

 武器は青銅の鉾だけだろうし、食料を奪取することが大事なので、多分だが逆茂木だけなら火矢は使ってこない。

 食糧倉庫が燃えたら、何にもならないからである。


 モル姫将軍が両脇にヨシとギイを従えて馬上の人となり、領民たちの訓練を指揮した。

 3人だけだが、初の騎馬兵である。


 今回は彼女が総指揮官である。


 まあ、俺が指揮官では弱そうだし、実際にコミュ障では戦闘指揮など執れない。

 威厳などはないし、もう諦めている。


 くらあぶみ、手綱にくつわ、乗馬ブーツに革鎧かわよろい姿のモルには威厳があった。

 流石は王女様である。

 しかも、この世界初のフル馬具だった。

 これ以上は、馬鎧ぐらいだと思う。

(ランスとか?)


 不思議なことにあぶみの発明は4世紀前後と遅くであり、それまで乗馬はももで挟んで乗る特殊技術だった。

(それができる人間には逆に鐙など不要らしい)

 だから、鞍なども鐙の発明後に進化していく。

(髀肉の嘆は、2世紀末か3世紀始め頃の三国志の時代だから納得である)


 モル姫将軍は腰回りを直垂のように革鎧で覆っているので非常に立派だが、実は下半身は裸のまま跨がっていることを俺は知っている。

 ズボンは穿いてもらえなかったが、まあ、色々と隠すことには成功した。

 隠している方が想像力を刺激されて興奮することもあったりするのだが、やはり見える方がすげぇ。


 ごほん。


 この3人が突入するのがいくさの最終局面だが、今回はそこまでは行かないと思う。


 ヨシとギイも馬上にいるが、これも訓練の成果だった。

 姫将軍の左右をかためるのに、ふさわしい風貌である。

 ヨシは農業で鍛えられた身体で、ヒゲ面はよく言って山賊にしか見えないが有能である。

 馬上のギイは牛族で角があるから、輪郭が伊達政宗を思い起こさせる。

 それとも、関羽と張飛か。

 誰だっけ?


 周王朝では、まだ馬には跨がらずに戦車を曳かせるのが主流であり、戦闘よりも威圧が主である。

 ベンハーなのである。

 良くわからないが、そう思う。

 周王国では御者と将軍が戦車に乗って戦うのだ。

 3人乗りもあったが、普通は2人乗りで、通常は右利きだから右側に武将が乗り、右側の敵を槍か鉾で攻撃する。

 ここから最強の武将を『右に出る者はいない』と言うようになった。


 騎馬と戦車のどちらが強いかはわからないが、どちらが機動力があって戦いやすいかはわかる。

 どちらが残ったかを考えればわかるだろう。

 それに、この頃の馬は現代から見れば小型種で、力があるものは遅く、早いものでも全力では500mから1000mしか走れない。


 西部劇の馬は1マイル(1600m)程度は走ったと言われているが、カウボーイたちが愛用したクォーターホースは名前のとおり400mしか全力疾走できなかったらしい。

 それでも19世紀頃の馬である。

 こちらでは、まだ、アラブ馬さえ生まれていないだろう。


 馬は大きい方が良いと思われがちだが、大型の馬は力はあるが足が遅い。

 つまり、この時代では、結構、扱いづらいのである。


 戦車なら2頭、3頭と繋げられるから、簡単に馬力を上げられたが、個体差によるバランス調整が難しい。

 4輪の車よりだ。

 新品のタイヤが買えず、摩耗したタイヤの入れ替えをしたことがある人なら良くわかるだろう。


 貧乏だったの?

 ほっとけ!


 特に馬は維持費(結局はこれだ)がかかり、もの凄い贅沢品である。

 ハッキリ言って、馬1頭よりも兵士10人の方が安上がりである。

 だから普通は物資輸送用に使うものだ。


 けれども、騎馬兵が戦局によっては『圧倒的』な戦闘力を発揮することも確かだから、費用云々を考えても考えなくても、勝つために導入しようとする戦闘指揮官の気持ちは痛いほど良くわかる。


 Fー22ラプター1機とラファール5機が同じ金額だったら、現場はラプター、金を払う方はラファールにするだろう。

 400億円(推定)もする戦闘機をかっ飛ばすって、フェラーリを運転するより格好いいかもしれない。

(ナンパはできないだろうけど)


 関係ないけど、オスプレイって、とっても高いらしい。

 墜落すると、乗っていた人たちの『生涯賃金』を合わせたぐらいの被害になるから、米軍(海兵隊かな)としても墜落して欲しくないと思う。

 多分、1機で世界の難民や貧困や飢餓に苦しむ人々を何万人か救えると思う。

 これは文明国の人間にとって、大いに苦しまされる難題である。


 しかし、航空自衛隊は緊急発進スクランブルの回数が増えても墜落したりしないから、優秀なのだと思う。


 話がよれよれだが、まず、今回の騎馬隊は、威圧か囮程度で済むだろう。

 馬上の3人が毎日訓練し、領民たちの指揮も執ってくれている。

 集団戦闘など、領民たちも初めてのことだったが、少しずつだが成果は出てきている。

 物見櫓も作ったし、斥候も『のろし』で合図を送ってくれるように準備した。

 見張りの手旗の合図も決めた。

 手信号も幾つか決めておいた。

 夜間は龕灯がんどうを振るのだ。


 俺の役割は戦略であり戦術であり、情報分析である。

 できれば、実際の戦闘が始まる前に決着をつけることである。

 特に情報はすべて届くようにシステム化しておいた。

(定時連絡の概念もなかったし)


 まあ、クズに戦闘力など誰も期待していないし、実際に戦闘力など皆無だから気楽でもある。


 今は邸で、マスタードの粉を使って新兵器を制作中である。

 干し(ドライ)マスタードを粉にして塩と炭を混ぜ、猪や山羊の腸詰めにして玉にしている。

 ユキナと妊婦のサリが左右で一緒に作業中で、書生や村の女たちにも手伝わせて量産中である。

 爆発はしないが、食らったら目は見えず、咳やくしゃみは止まらないだろう。


「漆玉も作ってはどうでしょう?」


 マスタードを詰めながら、ナカ(漆原3姉妹の真ん中だ。ウエとシモもいる)が提案してきた。


 可愛いシモが身震いする。


 漆玉を食らった奴がどんな感じになるか想像したのだろう。


 発想とはおかしな所へ行くものだが、それで俺は大きな間違いを犯していることに気づいた。

 弓矢は殺傷力がありすぎるのである。

 下手をすれば相手が死んでしまうだろう。

 ならば、矢の先にはマスタード弾をつけとけばいいのではないか?


「それなら、落とし穴には木箱に入れた漆を置いておきましょうよ」


 ユキナが面白そうに恐ろしい提案をすると、次々に女たちがアイデアを出してきた。


「敵は草鞋ですから、尖った石とか木のトゲを蒔いておくのはどうですか」

「こっちは革底の靴を履きましょう」

「女が持つ槍は黒漆で目立たなくすれば?」

「身体も目立たないように、黒装束とかは?」

「漆玉ぐらいなら、女でも投げられますね」

「ひもをつけて回すと、遠くまで飛ばせます」


 技術的には、墨染めも、黒漆も可能である。


「まるで、くノ一の戦法だなあ」

「くノ一って何ですか、領主様?」


 女たちの話がはずんで、シモがそう尋ねてくる頃、ユキナとサリが寝室に下がっていった。

 休憩と赤ん坊の世話の時間である。

 クーリャもその手伝いに下がっていく。


「女忍者のことだと思うけど……」

「女忍者?」


 上位の女3人(手拭い組とも言う)が消えたので、若い娘たちが輪を縮めて来た。

 奴隷紋がまだない連中ばかりが残っていた。


 どうも、ユキナの策略のような気がするが、少女の下半身に囲まれて、俺は嫌な汗を流して身動きできそうもなかった。

 最近、何となくだが、妻たち以外の女も気になるようになってきた。

 正確には下半身ばかり気になるのだが、以前は『今はまだ見ちゃいけない』と思っていたのが『今は見とかなきゃいけない』と変化したのである。

 但し、気にすると焦るし、相手も敏感に反応する。

 俺は小心者である。

 でも、冷や汗をかきながらもガン見するのをやめられない。


 経験値が上がったからだろうか?

 少女たちが成長したからだろうか?

 それとも、クズだからだろうか?


 でも、見えてるものを見ないでいるのは難しいことなのだ。

 これは『パンチラ』が起こると、絶対に見てしまうのと良く似ている。

 変態行為ではなく、DNAにそう書かれているのだ。

(早く、誰か解析して!)

 きっと、恥ずかしがる女と見たがる男はベクトルが逆になるだけで、同じ大きさの感情とか反射を持っているのだ。

 スカラー量って、スカートでのパンチラの略だったのだ。

(違うけど)


 書生たちは俺の反応にもう慣れたのだが、一応、腰を捩って見られまいとする。

(それはそれで良いものである)


 リーメだけは隠さないが頬を染めて無口になる。

(それはそれで良いものである)


 イサは平気だが、どうやら彼女はお相手が決まったらしいので、気にならないと言うよりは興味深いことみたいである。

(まだ、紋章はない)

 これは彼女の性格であり、特別なのだ。

 既婚者(奴隷紋)だって、あからさまな視線には恥ずかしがるものである。

 もっとも、女の子の部分というのは意外と見えないものであり、特に座っている時には殆ど見えないのだ。

 日常的には普通に立っているポーズが1番見えてたりする。

 いや、1番は男がいない場所での作業とかかな?

 幾つかの『覗き』ポイントがあって……


 おっほん!


 しかし、書生たち以外に他の少女たちが一緒にいると、いつもとは雰囲気が違う気がする。

 見慣れていないから、華やかというか、心臓によくない。

 冬場になれば、一日中一緒という日もできてしまうかもしれない。


 というか、部屋の中で全員が下半身丸出しなのだ。

(外でもだが)

 彼女たちが前を向いていても、後ろを向いていても、横を向いていても、丸出しは色っぽすぎる。


 日常的な普通のポーズの方が色っぽくないか?


 比較対象がないから良くわからないが、これって本当は我慢しなくていいのかもしれない。

 試す勇気が俺には無いだけである。


 特に美少女の下半身というのは、いつまで経っても見慣れることも、見飽きることもなく、目が離せないものだった。

 小さなお尻も可愛いし、大きなお尻も可愛い。

 前は、前は、ご想像にお任せする。


 すげぇ!


 想像以上である。


 ポーズが変わる度に、目で追いかけてしまうのも『条件反射』である。

 犯罪行為ではなかったのだ。

 多分だけど……


 作業に集中できなかったが、彼女たちもそれが目的でしているかのようだった。

 俺がクズだというのは、みんな承知しているのである。

 俺の目線が誰を追いかけるか知りたいのかもしれない。


 嫌じゃないのだろうか?

 嫌だから確かめているのか?

 罰ゲーム?

 ああ、俺の忍耐力か何かが試されている。

 神の試練だろうか?


 俺は小心者なのだが、この場合はどうするのが正しい小心者の対応なのだろうか?


 我慢できない小心者か?

 我慢し続ける小心者か?


 それからも戦闘準備中は様々な作業が続き、少女たちが入れ替わり立ち替わり伯爵邸に住むようになり、俺の忍耐力は途切れがちになっていった。

 ユキナはどうも彼女たちを色々と監視しているか、観察しているかのようだった。

 ついでに俺のことも監視しているようで、一度ならず女の子たちの入浴を覗きに行って、一度ならずも見つかり、ひどく叱られてしまった。


「覗き行為はハプニングではありません!」


 確かに。

 好感度はあがらないかも?

 ギャルゲーには、そんな選択肢はなかった。

 てか、ラッキーすけべはいいのか?


「そんなに見たいのなら、一緒に入ればいいじゃない」


 しかし、そんなことは小心者の俺には無理だった。


「曇りガラスを発明しよう」

「クズなんだから」


 どうも、俺の考えていることは筒抜けらしい。


 その後、くノ一軍団はたんぽ槍をやめて、黒い太鼓のバチのようなものを持った黒装束の集団に変化していった。

 昼間は黒装束と言うよりは、アラビアかペルシャの踊り子のような薄いベールの黒透け衣裳にしか見えなかったが、夜はちゃんと漆黒の闇に紛れて見つけにくくなった。


 ユキナが『不見流』とか名付けた『小太刀』を伝授して練習させている。


 腰に2本のバチと漆玉と芥子玉をつけて、黒装束で密かに近づき、玉を投げつけて不意打ちし、バチで殴りつける。

 嫌な戦術だったが、有効だろう。

 ベールはマスク代わりにもなるようだった。


 一度、男たちと実戦訓練をしてみたが、少なくとも夜の戦いは圧勝である。

 翌日は漆かぶれの男どもを介抱しなければならなかった程である。


 芥子玉は、俺のマスタード弾の改良型で、漆原の三女シモが、


『領主様、小麦粉を混ぜると軽くて良くはじけるのでは?』


 と提案してきたのを試してみると、威力が上がったから正式採用した。

 次女ナカの漆玉と三女シモの芥子玉で戦術の幅が広がったが、長女ウエが嫉妬して積極性も高まった。

 水が溜まり始めたようである。

 もう14歳なのだ。


 3姉妹の兄の漆原は、家に帰ってこなくなった3人の妹を心配して、領主の邸の周りをうろつくようになった。

 実は、涙目である。

 やはり、ツンデレだったのだ。

 不審者にしか見えなかったが。


 客観的に見ると、男って可哀想な生き物である。

 自分ではわからないだけで、外から観察されると、誰もが変な行動をとっている可能性は高いだろう。




 鮭の遡上も終えた頃、領民たちの戦闘訓練は続いていたが、少し飽きてきたようでもあった。

 柿崎も直江津も忙しいのだろうか?


 サリは女の子を産んで『アーリ』と名付けた。


 ユキナとモルは、子育てと戦闘訓練と畑仕事までこなしているせいか二人目は授かっていない。

 ユキナは相変わらず『くノ一部隊』の訓練を続けていた。

 基本的にゲリラ戦術である。


 モルの方は男連中の訓練で、手旗だけで部隊が動くようになってきた。

 将軍としての仕事が楽しいらしい。

 騎乗するのが好きなのだろう。


 まあ、夜の方もモルが騎乗して、俺には良かったと言えば良かったのだが、邸に居着いている少女たちが興味津々で困っている。

 お陰で、書生たちにまで色気が出てきたような気がする。

 モルは幸せそうだが。


 そんな日々のある日、ユキナとモルとサリによる面接試験が行われた。

 書生の追加だろうか。

 何人かは嫁に行くのが決まったのだ。

 嫁に行くと、昼間は勉強を続けられるが、夜は家に帰ることになるし、子供ができればそっちが大事になるだろう。


 俺は、妻たちと4人でテーブルに着き、紅茶を待っていた。

 最近はギイの妻であるクーリャとヨシの妻であるマイの二人がメイド長みたいな感じで邸を取り仕切っていたが、勿論、夜は家に帰っている。

 ユキナたちも母親としての能力がついてきたからである。

 とは言え、伯爵邸に世話するものがいないというのは考えられなくなってきた。

 妻たちが家事と育児と農業指導と軍事訓練までしなければならないからだ。

 書生たちも勉強と農業試験の他に、戦闘訓練にも主力として参加しなければならないから、忙しくなっている。

 特に冬場に入り、くノ一軍団が居座っているから世話が大変である。


 クズの世話もある。


 俺はアイデアを出すだけで、実戦には使い物にならないことは既にみんなが知っているのだ。

 引き籠もりの対人スキルゼロというのは、戦闘にも指揮にも向かないのだった。


 だが、クズでも伯爵は伯爵だし、周王朝の正式な王族のひとりで、更に言うなら血族を作るコアの人間が俺なので、大切に扱う必要もあるのだ。

 簡単に言うなら、俺は子作りをするのが第一の仕事になるのである。


 周王を倒すのなら、周王よりも子孫を増やさなければならない。


 直系の純血種が多いほど戦力になるというのがこの世界の考え方である。

 貴族や王族は血族でかためていくのだ。

 もっとも、反乱を起こすのも血族なのだが、これはどうしようもないジレンマである。

 跡目相続の時には気をつけよう、としか言えないだろう。


 王にとっては妹を娶り、娘を産ませ、その娘を娶り、更に娘を産ませていくのが理想的だが、寿命があるのでそう上手くはいかない。

 それで息子たちには妹を嫁がせる。

 息子からすれば、年下の叔母とか異母妹である。

 特に跡取り息子に必要な姉妹や従姉妹を沢山作らなくてはならない。

 そのためには妻が沢山必要である。

 コアが重要な世界では近親婚が大事なのである。

 何故大事なのかは良く思い出せないのだが、とても大事である。


 確か、管理AI群の中枢にいる人物が一番恩恵を受けやすい、とか何かだったと思う。

 一度、ユキナがトランス状態になった時に口に出していた言葉である。

 こうした巫女的体質の人間がいると、イベントが発生した時に、対処が可能なのだと思う。

 イベントはこの世界では結構大切で、倭国みたいに台風被害とスズメの被害ぐらいしかイベントがないと、住民の生活がルーチン化していき、発展しないのだ。

 周王国では、熱波、寒波、洪水、大雪、干ばつ、蝗害(イナゴによる被害)、ネズミの大量発生から砂嵐まである。


 勿論、豊作もある。

 特に綿花の豊作は周王国に富を産む。

(高価な絹織物は人材の方が重要なファクターであり、凶作はあるが豊作はないのだ)


 しかし、一番大事なことは、環境が異なる村があり、作物の多様化によってイベント被害を受けない産物があるということである。

 それにより、領内や国内が壊滅的な危機を免れて、更に村同士が協力し合うこともできるということである。

 多様化と物流により危機を乗り切るということだろう。

 ある程度の貸し借りは、村同士や領地同士の発達も促すのだった。

 倭国では、各村が自力で生き残るしかないだろう。

 学習効果が低くなるとも言える。


 ユキナは天啓を授かる巫女タイプなので、そうしたイベントには非常に貴重な存在である。

 スズメの被害予想をしたのもユキナである。

 大雪や洪水も予想した。

 だから、特にユキナの直系は全部俺の嫁にしなければならないらしい。


 息子は産まないのだろうか?


 やっと立って歩くようになったハルナとフランを将来嫁にしなければならないと思うと何だか気が重たかったが、ユキナが怒るから、今は考えないようにしていた。


『まったく、クズにぴったりの世界ね』


 そんな、天の声が聞こえたような気がするが、きっと気のせいだろう。


 ともかく、周王朝に対抗するには3人の妻ではとても足りないのだ。

 現王の大海は、俺が知っているだけで妹3人、従姉妹5人、姪が6人も妻になっているし、兄嫁や父上の個人奴隷も妻にしたはずである。

 いや、妻も個人奴隷にしたと言うべきだろうか?

 ややこしいな。

 まず、100人は下らないだろう。

 10年もすれば、あの頃3歳前後だった娘である王女たちも加わるだろうし。

(兄の孫娘は何て呼ぶのだっけ? 甥や姪の娘である)


 余談だが、この世界では処女より経験者、少女より熟女、痩せ型よりポッチャリの方が人気がある。

 ユキナなんか、あだ名が『鶏ガラ』だった。


『まったく、この牛女うしおんな!』

『言ったわね、この鶏ガラ娘!』


 時々、ユキナとモルが言い合いをしているが、身分的にユキナとモルのふたり以外は喧嘩もできないのだった。

 だから、本気で悪口を言い合えるふたりは、1番仲がいいのだ。

 ちなみに、牛女とは性格が鈍いと言うか大雑把という意味で、鶏ガラはともかく『娘』も実は罵倒語らしい。

 使えないとか、青臭い、小便臭いの意味である。

(水でお腹が張らない子供かも)

 サリは気を遣われていて、ふたりとは喧嘩はできなかった。


 話は戻るが、王族の息子が跡取りの座を奪い合っても、勝ったものが総取りであるから、息子の代になって争いが起こっても国力が衰えるなどと期待しない方がいいだろう。

 外敵には、一致団結することだろうし。


 そのために、俺は直系の子孫をいっぱい作らなくてはならないのである。

 王族や貴族の使命なのだ。

 ギャルゲーかもしれないけど……


 それで、ユキナは書生と一緒に妻候補の処女ばかり邸に集めたのだろうか。

 長女が多いのかな。

 いや、幹部の長女は皆嫁に行っている。

 次女グループも書生になり、嫁に行き始めた。

 ただ、第2、第3次移民団にも多くの女の子がいる。


「まったく、アサツキ姉様でもいれば良かったんでしょうけど」


 アサツキは、父上の一番下の妹であるアキノ姫の娘で、俺とユキナに挟まれた年齢の異母妹である。

 アキノ叔母上は天下一の美女と評判であり、クズの俺にも優しかったし、アサツキも俺とユキナと仲良かったらしい。


 実は、俺には記憶がないのだ。

 どうしても思い出せない。

 子供の頃の記憶がユキナにはあっても、俺にはなかった。


 だが、ユキナはアサツキを仮想敵にして子供時代を過ごしていたらしいのだ。

 時々思い出しては焼き餅を焼いている。

 俺がユキナよりアサツキの方ばかり優しくしていたとか何とか。

 記憶にないのだから、無罪である。

 確か、政治家がそう言っていたではないか。


「本当は嫌よ。クズ兄様の子供は全部ユキナが産みたいけど、そうも言ってられないでしょう?」

「モルは、お兄様に毎晩愛していただいていますから、文句などありません」

「サリは授乳中ですから、もう暫くお休みします。申し訳ありません」


 普段は水が溜まる妻たちでも妊娠中は流石にそんなことはない。

 旺盛な性欲も嫉妬心も起こらなくなるようだ。

 妊娠中の妻としたがる俺がクズなのだそうだ。

 勿論、俺も学習しているから、今はそんな無謀なことはしない。

 本当だ。

 偶に、サリのお尻を撫でてユキナにひっぱたかれるぐらいである。


 サリは、妊娠中に夫の性欲を満足させる方法とかを考え出したが、俺が逆に高ぶるだけなので失敗している。

 どんな方法かは口では、いや、口では言えない。


 思考が脱線しているが、3人の少女が紅茶を持ってきた。

 どうやら話の内容からしても、妻候補?の面接らしい。

 書生タイプではなく、美形を揃えているのだろう。

 俺が我慢するようでは、結局は駄目なのかもしれないが、我慢しなければ、それはそれで駄目なのではないだろうか?


 11歳の犬族の亜人、マリー。

 12歳の狸族の亜人、ポヌ。

 12歳の鹿族の亜人、イナ。


 マリーは犬と言うよりはオオカミのように白い髪に犬耳で、尻尾も真っ白な少女である。

 肌もユキナのように白く、11歳にしては大人びた感じだが、笑顔は年相応に可愛い。

 3次移民団だったかな。

 あの白い幼い肌に真っ赤の紋章が浮かび上がったら、とっても色っぽいだろうというのは、ちょっと背徳的で興奮する。

 高ポイントである。

 ユキナの目線が少しだけ痛かった。


 ポヌは髪が黒と茶のまだらだが、肌はバター色の可愛い元気な少女である。

 つい先日までは男と女のことなど知らないようなあどけなさで逆に目立っていたのだが、今日は俺の目の前で顔を真っ赤にして恥じらっている。

 耳は犬耳よりも少し丸く感じる。

 これも高ポイントだった。

 ユキナは静かにお怒りのような気がする。


 イナは書生であるイサの妹で三女である。

 イサは今でも書生だが、もう14歳でヨシの15歳の三男ヒロの嫁に決まっている。

(正確には、ヒロの方が男連中に誘われてグループ婚するのだが、慣れるまでは新婚?のカップルである)


 余談だが、ヨシの息子たちは優秀で、跡継ぎと噂されている長男アシが19歳独身。

 彼は父親に代わって居残りし、実質、第2次移民団を率いてきた逸材である。

 次男モトは1次移民であり、18歳で船大工をしているが、リーメの工房に入り浸り、鉄船の研究をしている遊び人である。

 四男ヒデはまだ12歳で、既にイケメンである。

 長男と次男は異母兄弟であり、三男と四男も異母兄弟である。

 正妻がいるのに、なんなんだ?

 ヨシは長男に人間族の妻を迎えたいらしい。

 純血に未練があるのだろう。

 長男は人妻にモテモテだから、どうなることやら。


 いやあ、しかし、お見合はなんか緊張する。 


 イナは最近呼ばれて邸に詰めるようになったのだが、身体が大きく我慢強い感じが姉のイサよりもモルに似ている。

 もっとも亜人なので首から下には体毛が一切ない。

 モルほどのダイナマイトボディーではないが、身体の線は色っぽい。

 髪が濃い褐色なのに、身体は薄い褐色である。

 薄茶色と表現した方がいいかもしれない。

 角がちょっぴりなのでよく見ないと髪に隠れてわからない。

 落ち着いて見えるから平静なのかと思ったら、目が合った途端、ウルウルのキラキラになってしまった。

 やはり、お年頃の少女なのだった。

 当然、高ポイントで、ユキナの怒りのオーラが目に見えるようだった。


 ユキナが選んだんじゃないか!

 などと正しいことを言っても、何の役にも立たないことは理解している。

 正しいことが、気に入ることではないからだ。


 暫く、質疑応答があった。

 その後、ユキナは知恵と忠誠心を買ってマリーを選び、モルは落ち着きと勇気を買ってイナを選び、サリは元気な雰囲気が邸に良い影響を与えるとポヌを薦めた。


 当然、意見が分かれたので俺の決断となるところだが、俺は美しさを買って3人。


「兄様はクズですね」

「お兄様はクズです」

「領主様、クズのお顔になってますよ」


 言われる通り、3人から選ぶことなど俺にはできなかった。

 3人とも選ぶところが、クズなのだから。


 ユキナは怒りの目で、モルは呆れた目で、サリは痛々しそうに見ていたが、俺は縮こまりながらも3人の少女をチラ見していた。

 昨日までは普通に接していた少女の中のひとりずつなのだが、こうして改まって見てしまうと、もう特別な存在に見えてしまう。

 書生だったら我慢できるのだろうか?

 いや、我慢できなさそうなのを選んでいるに決まっている。

 イナはイサの妹なのに、グッとくるものがある。


 お断りなんかしたら、俺の子宮こころが裂けてしまいそうである。

 いや、子宮は持ってないけど。

 何か男の子の大事な部分が裂けてしまいそうである。


 先っぽが爆発しそうとかかな。


 でも、ユキナは俺の紋章を浮かび上がらせた女には凄く優しくなる。

 サリがそうだった。

 奴隷紋の頃のサリには何の関心も示さなかったが、俺の紋章に変わってからは、身内のように可愛がるようになったのだ。

 何か、理由があるのだと思う。



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