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息抜話 『神の味噌汁世界』

 息抜話 『神の味噌汁世界』




 周王国からの使者に悩まされる以前に、ユキナの行政改革があっって、女中たちは女中としての専門職になった。

 厨房や掃除から解放され、その分は高等教育を受けることになった。


 女中頭、キリ、ハギ、ススキ、ボタン。

 5年生、マツ、ラン、オミナエシ。

 4年生、ヤナギ、ヒナギク、タケ、ヒナゲシ。

 3年生、ウメ、モモ、ビワ、ザクロ。

 2年生、スイセン、サクラ、ナシ、シロツメ、。

 1年生、フジ、サザンカ、タンポポ、ミカン。


 1年生は、最近採用された新人である。

 村長推薦で下働きに来た者から更に抜擢された者であるから、実質は40倍くらいの狭き門だった。

 これは、今の2年生から能力主義に切り替わった結果である。

 だから、猿人ばかりではなくなった。

 ウメやモモの世代までは、村の幹部の娘で、美人が選ばれていた。

 俺の趣味ではなく、ユキナの趣味ではあったが。

 しかし、美しさも能力とか才能のひとつではないだろうか?

 おっぱいの大きさだって、その人の特徴であるからには、才能みたいなものだ。

 そう言い出すと、上手なのも才能だから、最終試験は俺が行うのがいいかもしれない。

 待てよ、下手でも可愛いとかもあるよな。


『ふえーん、上手にできましぇん』

『こ、これでいいのでしょうか?』


 全員採用とかなりそうかな?

 いや、9歳とか10歳とかで上手かったら困るだろう?

 ちょっと想像してしまった。

 今のなし!


 誤解を招かないように言うと、俺は女中とそんなことばかりしているわけではない。

 その証拠に5年生からひとり、ナデシコが村に戻った。

 三ケ村出身だが、新湊で海軍を退役する異母兄と富山で一緒になり、新規開発を行うらしい。

 将来は村長であり、次婚の頃には代官夫人になるだろう。


『伯爵様には、娘をお送りします。それともぉ……』

『む、娘さんをいただきます』


 ナデシコは人差し指を口に当てて、意味深なご挨拶をしてから無事に退職した。

 冷や汗ものだが、セーフだった。

 おっぱいの大きい娘だった。


 上手く説明できないが、水の問題で一人残された二代目マツは、突然、俺の部屋に突撃してくると、モモちゃんの目の前でキスをして解決した。

 お陰で、モモちゃんはティーカップを割り、また暫くご機嫌を悪くした。


 それはともかく、越の冬は雪で閉ざされて寒い日が続く。

 何となく心が寒くなり、朝は特につらくなる。

 そこで、朝食はほかほかの湯気が立つような熱い味噌汁とご飯が良いのだが、何故かやしきでは、朝飯がトーストと紅茶派ばかりなのである。

 コーヒーがないから紅茶でトーストを食べているが、俺は不満である。


 パンは時間がある時に一度に焼いてしまえば数日は食べられるし、朝のトーストはお手軽でもある。

 それに、越人は何故か玉子料理が好きで、トーストに合わせてスクランブルエッグや目玉焼き、オムレツ、甘い玉子焼きまで一緒に食べてしまう。

 一方で、生卵はあまり好まず、玉子かけご飯や「おんたま」などはあまり食べない。

 何故だろう?

 親子丼や玉子丼は食べるのだが。


 お前たち日本人じゃないのか! などと言っても、日本人ではないようだ。

 納豆と鮭と海苔は夕食には出てくるのだが、高級品であり、朝食メニューではないらしい。

 この不満を解消するために、アイデアを出してみた。


「味噌汁の啓蒙のため、女中たちで味噌汁コンテストを行うことにする。ミスコンならぬミソコンだな」

「優秀者には豪華賞品とか出るのでしょうか?」


 キリが『不本意だが』という顔をして尋ねてきた。

 料理に味噌味をよく使うので、味噌汁よりもスープの方が好きだという思いが表れている。

 玉子スープだな、きっと。

 まあ、おかずが味噌田楽で、味噌汁じゃ嫌だろうな。

 と言うか、おでんの時に味噌汁はついてこないかな?

 鍋料理には味噌汁がつかないのかな?

 すき焼きには味噌汁がつくような気がするけど。

 しかし、それなら、おでんに玉子スープも変だろう。


「味噌一年分とかでどうだろう?」

「一年分って、どれくらいなんですか」

「そう言われると、よくわからないなあ。普通、スポンサーの賞品は1年分とテレビでは流されるんだよ。缶チューハイ1年分とか、アイスクリーム1年分とか、カップ麺1年分とか。でも、1年分ってどれだけなんだろう?」

「すぽん? テレビ? 缶チュー?」


 キリには理解できない言葉ばかりだったが、1年分って俺にも理解できてない。

 カップ麺1年分って、365個もらえるのだろうか?

 普通、毎日食べるのか?

 時々だから、もの凄く食べたくなるものではないだろうか?

 そう言えば、美人も3日で飽きるとか言うよな?

 俺は絶対に飽きたりしないけど。

 毎日、違う美人を……


 おほほん。


 美人1年分って、あったらいいよね!


「賞品ではなく賞金を出そう。金貨なら文句はないだろう?」

「それなら、頑張ると思います」


 女中には金貨など必要ない。

 邸では大抵のものが手に入るからだ。

 とは言え、金貨1枚は10万銭であり、100人の人間が1年間食べていける強力なアイテムだから、村の幹部の娘である女中たちにとって、親孝行ならぬ村孝行できるチャンスになる。

 飢饉の備えとか、床暖房の工事費とか、銭湯を作るための資金とか、農機具や船の購入費になるのだ。

 そうして村が強化されれば、将来は兄妹村や子の村、孫の村も開発できる。

 移民の亜人を加えて、新たな村は独り立ちしていき、更に交流し補完し、強固な相互安全保障を築いていける。

 村が増え、人口が増えれば、各村の責任や分担が軽くなり、橋造りなどの工事も楽になり、飢饉に備えるための備蓄も達成しやすくなる。

 輸出に回す食料も増やせるのだ。


 まあ、味噌汁を作らせるために金貨を出すなどと言うのは、識者がいれば馬鹿げた行動に見えるだろうが、結果的にはそれほど悪いことにはならないから、非難には当たらない。

 本当に?


 金貨1枚で亜人の性奴隷が何人買えるのかと思うと、って、比較してはいけないことなのだ。

 何しろ、越は他国と人身売買しているが、越国内では人身売買は犯罪である。

 これは矛盾しているようだが、亜人救済のためには仕方がない処置である。

 獣人の国から無事に迎え入れるためには、戦争か人身売買しかなく、超法規的処置と言うものである。

 それで、性奴隷は絶滅危惧種である。

 いいことなのだが…… ちょっぴりと……


「伯爵様、顔がエッチになってますよ?」


 正確には頭がエッチなのだが、態々、言う必要はないだろう。


「キリは下半身がエッチだよ」

「下半身は、誰でもエッチなものです!」

「そうかなあ、キリの下半身は特別にエッチだと思うよ」

「そ、そんなことはありません!」

「いいや、特別エッチだよ」

「これのどこが、特別エッチなんですか?」


 キリは立ったままだが、自分の下半身を見る。

 丸出しの世界では、普通はこれくらい無防備である。

 ウメなど、全裸を見せてくれたこともある。

 俺はキリの前でしゃがんだ。


「うーん、もう少し奥の方かな?」

「ああの、伯爵様?」

「ああ、この辺かな」

「そ、そんなとこ広げちゃ、ひぁ、いや、もうやぁ、だめー」


 キリは、水が出るのが遅めのような気がする。

 俺は一度、キリを解放した。

 しゃがんだままだけど。


「ひどいです! 女なら、みんなこうでしょう? キリだけ特別では、あぁぁ、もうだめ、もう見ないで!」


 いや、もう見ちゃったからね。

 特別にエッチなのは俺だった。

 キリは怒りと羞恥心で真っ赤になり、タオルで隠しながら逃げていった。


「伯爵様のばかー」


 キリは廊下で誰かにぶつかるようなことはなかった。




 それでも、キリは女中頭らしく働きかけて、第1回ミソコンを開催してくれた。

 金貨は2位の賞金になり、優勝は『直江津デート権』に変わっていた。


「流行の舞台劇を観てから、美味しい夕食でしょ。その後は噂の露天風呂に入ってから伯爵様と一晩中!」


 などと言う、ハギの問題発言で変わってしまったらしい。

 勿論、俺はOKした。

 優勝者など、審査員の心がけひとつでなんとでもなるのだ。

 大賞、該当なし。

 そんな話はいくらでも聞いている。

 別に詐欺ではないのだ。

 おぬしも悪よのう、ふははは。(悪代官笑い)


 キリが司会進行役で、ハギは集計と記録と発表係。

 そもそも、ハギは選手ではなかった。

 涙目である。

 俺とススキとボタンが審査員だった。

 勿論、内輪の催しである。

 食堂のテーブルに審査員3人で座り、キリの指示により、女中たちが味噌汁を運んでくる。

 審査員の持ち点は10点で、最高は30点満点である。

 勿論、俺は下半身の審査も、秘密にだが、行う予定である。

 チャンスだもんなあ。


「最初は1年生、フジから」

「はい」


 フジは気が強いタイプだが、自信過剰ではない。

 ちょっと緊張した面持ちで、お盆に3つのお椀を載せて持ってきた。


 コト、コト、コト。


 俺は早速、目の前に出された下半身を吟味した後で、味噌汁を吟味した。

 まだ、未熟だが、ふわっとした感じで、将来は色っぽくなりそうである。

 味噌汁は出汁は殆どなく、味噌だけである。

 箸で具をさぐると、出てきたのは目玉焼きだった。


 うーん、焼き加減は上々、って、こんなの味噌汁じゃないわー!


「1点、3点、3点でフジの味噌汁は合計7点」


 ハギが発表した。

 甘くないか?

 下半身はきつそうな性格と違って柔らかそうで可愛いから、未成熟だけど7点あげたい。


「次は、サザンカです」


 サザンカは10歳の才女らしいが、下半身はお子様過ぎる。

 もう少し成長しないとお尻は振れそうにもない。

 4点でも甘いかな?

 出された味噌汁には、ゆで卵がごろっと入っていた。


「1点、2点。3点。サザンカは6点」


 どうやら、ススキのお椀には殻が入っていたようだ。


「殻がなければよかったのに……」

「それが感想か! もっと色々あるだろう?」

「ゆで卵の味噌汁なんて初めてでした」

「俺だって初めてだよ!」


 しかし、玉子料理好きの越人には不思議な味噌汁ではないようだった。

 次のタンポポなんか、スクランブルエッグの味噌汁だった。


「1点、3点、3点。タンポポは7点」

「バター味でなかったから3点にしました」

「俺は不満だ」

「やはり、バター味ですよね」

「そこじゃない!」


 下半身はお子様なのに、薄く色づいているから5点にする。


「1年生の最後はミカンです」


 キリが進行していき、ミカンの味噌汁が出された。

 下半身は結構色っぽくて6点。

 その、股下の女の子の部分が飛び出している感じなのが、凄くいい感じなのだ。

 パンツを穿くと、普通のパンツでも出っ張りがハイレグ気味になり、色々なところでしわを作るような感じでいいのだ。

 勿論、想像である。

 その、想像させてくれるところがいいのだ。

 でも、お椀の蓋を開けて驚いた。

 伊達巻きの味噌汁としか言いようがなかった。


「1点、5点。5点。11点です!」

「要するに甘い玉子焼きだよなあ」

「巻きが甘いですが、海老のすり身はいい感じです」

「味も甘いですが、いい感じです」


 どうも、ススキもボタンも伊達巻きの出来しか評価してないようだった。

 玉子料理好きだからな。

 2年生に期待するしかなかった。


「では、2年生はスイセンの味噌汁からです」


 2年生になると、越では結婚しててもおかしくないので、下半身もおかしくなかった。

 いや、1年生も成長前という感じでおかしくなかったが、2年生は成長し始めてる感じで、おかしくなかった。

 おかしいのは俺の頭だろうか。

 スイセンの下半身は取りあえず5点にしておこう。


 スイセンの味噌汁は、サバの味噌汁だった。

 やっぱり、これはおかしいだろう!


「1点、3点、4点。8点です」

「サバは扱いが難しい魚ですからね」


 キリがコメントした。

 いや、そうじゃないからね。


「次はサクラの味噌汁です」


 うん、真面目なサクラは期待していいだろう。

 下半身も真面目そうだし。

 補正ありだが7点だな。

 どんなんだかは、ご想像にお任せします。


 ぱか。


 蓋を開けると鮭の切り身が入っていた。

 食べやすいように薄切りにしてあり、バターが載っていた。

 石狩鍋とかあったよな。

 だけど、結構美味い。

 だけど、味噌汁じゃない。


「3点、6点、6点。15点で現在トップになりました」

「やはり、バターがポイントでしょうか?」


 違うからね。

 味噌汁じゃなくて鍋の味だからね。


「次はナシの味噌汁です」


 ナシは子供体型だがジューシーな感じがする。

 将来はズドンとしたお尻になるかもしれない。

 今はまだ5点だな。


 ぱか。


 イカのリングだった。

 何とも言えない味である。


「1点、3点、4点。合計は8点です」


 ナシは期待していたのか、少し涙目だった。

 もう少し頑張ろうね。


「2年生、最後はシロツメです」


 シロツメはスレンダーだが背が高く、手脚が長いので成長すると女らしさの評価が逆転するタイプである。

 子供の頃は馬のように馬鹿にされるが、大人っぽくなると豪華な感じに思われるようになる。

 自分は不格好で美しくないと思って育つから、美少女になっても控え目な性格であることが多い。


 ことり。


 味噌汁を置くのも控え目である。

 下半身もこれからだろうか、5点にしておこう。

 味噌汁は海苔の味噌汁だった。

 驚いたことに、初めて食べた。

 不味くはないが、美味いと言うほどでもないか。


「2点、3点、3点。8点です。現在のトップはサクラの15点です。3年生は上回れるでしょうか?」


 まあ、3年生ともなれば俺の好みもわかっているだろうから


「最初は、モモからです」


 うほぉ、お盆に味噌汁が載っているから、隠していない!

 しかも、モンローウォークである。

 レアである。

 脳内保存だ!


 ガッ、ざばぁ!


「あちち!」

「きゃあ!」

「ひぁぁ!」


 モモちゃんは手前で転んでお椀が空中に舞い、中身は下半身をガン見していた俺だけではなく、ススキとボタンにも被害を与えた。

 女中たちがタオルを持って走り回り、コンテストは一時中断する騒ぎになった。

 幸いなことに火傷というほどの被害にはならなかったが、モモちゃんは膝を擦り剥いて負傷退場になった。

 泣き顔は痛みのせいだろうか?


「伯爵様のエッチな視線のせいです。優勝したかったのに……」


 しかし、味噌汁の具は梅干しだったから、成績はあまり期待できなかっただろう。

 美尻は10点満点なんだが……


「0点、0点、0点。モモは最下位決定!」


 ハギの集計をキリが発表して、コンテストが再開された。


「次は、ウメです」


 ウメの下半身は俺の趣味だが10点だから、今更、評価する必要はないだろう。

 特筆すべきは大きなお尻だけではなく、ふくらんだ女の子の部分である。

 美しいと言うよりは、色っぽいのである。

 本当は、12点とかあげたい。

 何だか、味噌汁なんかどうでも良くなりそうなくらいである。

 ウメを優勝にして、今すぐに直江津に行きたいぐらいだった。


「伯爵様? 不埒なことをお考えでは?」

「いいえ」

「真面目に審査しましょう」


 ススキが疑わしそうな視線で、疑わしそうに尋ねてきた。

 そうか、不正防止のための審査員なのか。

 身贔屓で優勝とかは、クズならやりかねないな。


 ずずぅ。


「これは?」


 俺は審査員のススキとボタンに確認してしまった。


「栗ですね」

「栗です」


 うーん、これって美味いのだろうか?


「4点、4点、6点。14点です。惜しかったけど、2位に入りました」


 ウメも何故か涙目だ。

 チラチラ俺を見てから、クルリと後ろを向いて出て行ってしまった。

 お尻の振り方は15点だな。

 優勝でいいかも?


「さて、次は元厨房の星、ビワです」


 ビワは中肉中背で、特に目立ったところはないが、普通の女子中学生が下半身を丸出しにしているみたいで興奮する。

 何の特徴もないところが7点だな。

 来年は8点で、次は9点、3年後はいただきますだな、きっと。


 ぱか。


 味噌汁の具は、山葡萄だった。


「皮をひとつひとつ丁寧に剥いてありますね」

「種もひとつひとつ丁寧に取ってあります」


 いや、そう言うことじゃなくて、変だろう?


「2点、6点、5点。合計13点です」


 待てよ、1年生は卵料理、2年生は魚料理、3年生は果物料理か?

 味噌汁として、それはどうなの?

 いや、栗は果実だっけ?

 木の実としては同じだが、栗は果実と言うよりは種実類とするべきだな。

 要するにナッツだ。

 だが、ナッツの種類が少ないものだから、区別がつかないのだろう。

 アーモンドとか、ヘーゼルナッツとか、落花生がないと難しいか?

 カカオやピスタチオもそうだろう。


 ぱか。


 ザクロの味噌汁は、枝豆だった。

 ザクロの下半身は、脚を閉じていても向こうの景色が見えてしまうのが特徴だが、所謂(おー)脚ではないし、X脚にもなっていない。

 ただ、成長しても向こうが見えるのは変わらないと思う。

 でも、太股がムッチリしてくれば、多少は改善するかもしれない。

 しかしだ、女の子の部分が丸出しの上に剥き出しに見えるのは改善すべきではないと思う。

 8点だな。


「伯爵様?」

「なんだい、ススキ?」

「さっきから、視線が釘付けで、ザクロが困ってますよ」

「味噌汁の審査をするべきです」


 ボタンにまで注意されてしまった。

 しかし、大豆の味噌に大豆の枝豆って変だけど、普通に美味いな。


「7点、6点、7点。合計20点でザクロがトップになりました」


 ザクロは真っ赤な顔をして嬉しそうに微笑んだ。

 新鮮で可愛いぞ。

 以前はモモちゃんもこんな風だった。

 俺が悪いのだろうか?


 ごほん。

 それで、大豆は果実類ではなく、種実類でもなく、菽穀類しゅこくるいであり、豆類である。

 小豆や緑豆(もやしの原料、周国産)、ササゲなんかが豆だろう。

 しかし、落花生は豆でもあり、種実でもある。

 つまり、人間の都合で分けられているに過ぎない。

 そうなると、実や種を食べるという意味では、穀物も豆も果物もナッツも同じものだろう。

 待てよ、芋類はどうなんだ?

 果実ではないよな。

 球根類か?

 芋は普通、地下茎にデンプンなどの塊がつく植物である。

 球根に近いのは、その塊からも繁殖できるからだ。

 玉葱やニンニクなどが本当の球根だろうか?

 やはり、人間の分類どおりに植物は進化しないのだろう。


「4年生の最初は、ヒナギクです」


 キリが先に進めてしまう。

 ヒナギクはキリよりも小柄なロリ体型である。

 下半身もあまり成長していないから、1年生か2年生に見える。

 5点かな。

 しかし、本人が一番気にしているから何も言わない。

 牛乳を飲めとかだな。 


 ぱか。


 普通のもやしの味噌汁に、芥子菜のスプラウトがトッピングされている。


 めっちゃ、美味い。

 めがっさ、美味い。


「美味いな、普通っぽい味噌汁が一番だよね」

「ええっーー」


 主に下級生たちから不満の声が上がった。

 どうしてだ?

 でも、全員が立ち上がる光景は、絶景である。

 この世のものとは思えない。

 あの世が本当にこんなだったら、今すぐにでも行きたい。

 いや待てよ、こういうのは天国であって、もう一つのとは違うのだろう。

 すると、もう一つの方は、ガチムチのお兄さんばかりが待ち構えているのかもしれない。

 いやだー! 絶対に死にたくないー!


「あの、創作味噌汁って言ってませんでしたか?」


 キリが代表して尋ねてくる。


「美味しい工夫をした味噌汁って言っただけで、新作とか創作とか言わなかったよ。ずずー」

「ええっーー!!!」


 何か手違いがあったようである。


「8点、7点、7点。22点でヒナギクがトップになりました」

「ええーー!」

「静かにしなさい!」

「騒がしいですよ!」

「普段から美味しくなる工夫をしていれば、こんな時に慌てる必要ないでしょう?」

「日々、精進していれば、文句など出ないはずです」


 流石に女中頭の4人である。


「私たちなんか、参加もできなかったのに……」

「そうです。優勝できたはずなのに」

「折角、直江津デートを発案したのに」

「まったく、もう、審査員だなんて」


 あれ、違ったかな?

 その後、ヤナギとタケが急遽『試合放棄』を宣言したので、厨房まで押しかけていったが、鍋の蓋をしっかりと押さえて、


「だめ! 見ちゃ、だめー」

「いや! 見ちゃぁ、いやー」


 と、可愛く言ったので、ドサクサに紛れてお尻を触り、おっぱいをもむだけで許してやった。

 とてもクズらしい行動で、清々しいほどだった。


 それで、偶然なのだが、厨房にオミナエシが来るところを目撃して、嬉しそうに何も具がない味噌汁をかき回しているところを目撃し、ついでに女の子の部分からの水を混ぜるところを目撃してしまった。

 つまり、お尻を触ろうと覗いてチャンスを窺っていたら、とんでもないことが目の前で展開してしまったのだ。

 これを人は『怪我の功名』とか『盗人にも三分の理』とか、『変態も使いよう』などと言う。


 しかし、どちらかと言えば真面目に冷静に仕事をこなす責任感もあるオミナエシが、何故、こんな酷い反則を行うのだろう?

 この世界で女の子の水は、俺限定かもしれないけど、もの凄い媚薬であり、ED治療薬である。

 もし、みんなの前でオミナエシに襲いかかったらどうするつもりなのだろう。

 薄めて使えば、何か別の効果が現れるのだろうか?

 10点をつけてしまうとか、夜まで効果が現れないとか?


 うーん、みんなの前で襲いかかるのは拙いので、ここで襲いかかることにした。


「オミナエシ!」

「うきゃー」

「何をするつもりだった!」

「何も、別に…… あぁぁ」

「しゃべるまでこするぞ!」

「あぁ、いやぁ、ゆ、許してくださいぃ」

「許さないぞ!」

「はぁぁ、人が、人が見てますぅ」

「ヤナギとタケだけだ。もう、へたり込んでいるよ」

「あぁぁぁ、だめー、許してー、出来心ですー」

「犯罪者は、皆、そう言うんだぞ」

「だって、だって、我慢できないんですぅ、もう、無理なんですぅ」

「何がだ?」

「あぁ、言えません」

「言わないと、もっとこするぞ!」

「あぁ、もっと、言えませんん!」


 あれ? これってご褒美に変わってない?

 しかし、事態は更に悪化した。

 俺はオミナエシに作業テーブルに押し倒されて、もがいていると、ヤナギとタケが参加してきたのだ。


「伯爵様、あれだけではいやですぅ」

「タケは、お腹痛いですぅ」

「ちょっと、あぁ、今はオミナエシの順番でぇ、ひぁぁ、だめぇ、奥まで入って……」


 俺は3人とキスをして、3人とも水を振りまいて、2人が気絶した。

 それで、俺はオミナエシと身体を入れ替えて上になった。


「あぁ、やっと、やっとです」


 がこん!


「し、神聖な厨房でなんて、けだものです!」


 薄れゆく意識の中に響いた声は、モモちゃんだったと思う。




 何故か味噌汁勝負は続行された。

 不公平は奴隷制度に繋がるとか何とか言われてしまったのだ。


「では、ヒナゲシ、マツ、ランの順番で審査します」

「不正は許しませんよ」


 何だか、コンテストではなく、裁判か何かのように厳粛な雰囲気になってしまった。

 観客も、良くわかってない1年生と2年生の一部だけしか残っていない。


 コト。


 ヒナゲシの味噌汁が置かれた。

 ヒナゲシは甲斐甲斐しく世話してくれる女中のひとりで、下半身も非常に女の子らしく、俺の趣味もあって、9点である。

 味噌汁は所謂『赤だし』だった。

 下半身は『丸出し』なのだが、赤くはない。

 薄らと色づいているだけだ。


 おほん。

 赤だしというのは赤味噌の味噌汁ではない。

 元々は『赤さし』と言って、高級料亭の料理人が、味噌の味を素材ごとに変えるための技術わざのことである。

 その秘訣が『赤味噌』の配合量であって、ベースは田舎味噌(信州味噌)である。

 勿論、職人たちのやることだから、配合には白味噌や八丁味噌も使われたことだろう。

 だけど、赤だしと呼ばれるようになるくらい、赤味噌の配分が大事だったのだ。


 ヒナゲシは具には豆腐しか使っていなかった。

 揚げも良かったかもしれないが、これはこれで美味い。


「赤味噌なんてあったっけ?」

「実はお風呂のかまどの傍に味噌樽を置きっ放しにして忘れていたんです。気づいたらこうした感じになっていまして、これはこれで美味しいのではと思いました」


 高温・長熟。

 簡単なようで難しい技術だった。


「9点、8点、8点。ヒナゲシは25点でトップです!」


 トップレスではなく、トップです!

 丸出しではなく、赤だしです!

 トップレスで下半身丸出しって、全裸だよね~。

 腹巻きだけとかか?


「さて、実力ナンバーワンのマツの味噌汁です」


 マツは流石のキリたちも一目置く実力者で、ずっと厨房の支えだった。

 下半身は、既に水を出すようになって、10点である。

 もうすぐ、俺の嫁である。

 これは楽しみだった。


 マツはお盆を持ちながら、まるで女王のように登場し、周囲を圧倒した。

 味噌汁にも圧倒された。

 具材によって、蓋が閉まってないのだ。

 それも、お椀は幅広の金漆の逸品である。

 はみ出しているのは、伊勢エビだった。

 尾頭付きである。


 更に中身には丸餅と大根を扇状に切ったものが入っている。

 伊勢エビがもの凄く食べづらい。

 だが、伊勢エビには焼きが入っていて、更に味噌味がついていた。

 丸餅は、中には餡子が入っている。


「これって、味噌汁じゃないよね。お雑煮だよね。餡子が入っているのは関西風なのだろうか? それとも関東人の偏見か何かかな」

「美味しいじゃないですか。何処が不満なんです?」

「最高で、贅沢で、味もいいと思います。伊達巻きが入っていれば満点でしたね」


 そうかなあ、味噌汁じゃないと思うんだけど。


「8点、10点、9点。合計27点は、もう優勝間違いないでしょう!」


 下級生たちからも、感嘆の声が上がった。

 いや、伊勢エビの味噌汁なんてないからね。


「最後はランです。果たして有終の美を飾れるでしょうか?」


 ランは恥ずかしそうにお尻を振りながら入ってきた。

 彼女は何となくだが、既に俺の嫁である。

 根拠はないのだが、そんな気がするのだ。

 点数なんかつけようがない。


 コト。

 コト。

 コト。


 ぱか。

 ぱか。

 ぱか。


 ずずー。

 するする。

 するする。


 どひゃー! 馬鹿ウマだがやー!


「これはきのこ汁!」

「はい!」

「ホンシメジ、マイタケ、シイタケ、ナメコ!」

「はい!」


 これを味噌汁とカテゴライズしていいのか!

 美味すぎるだろ!


「出汁は取らずにキノコの味だけで勝負したな」

「はいっ!」

「うーん、最高だ。これ以上のものはこの世にはない。あの世にもないかもしれない。これぞ神の味噌汁だ。点数なんかつけようがない!」

「ありがとうございます」

「いや、お礼を言うのは俺の方だ。こんなに美味いものは久しぶりに食べたよ」

「嬉しいです」


 俺は興奮して立ち上がり、ランを抱きしめてから、踊った。


「あの、伯爵様? コンテストは」

「そんなの、ランの優勝に決まってるだろ!」


 俺はランを抱き寄せて、人生バラ色だった。

 そうだ、これがリア充と言われるものに違いない。

 俺はクズ人生から、勝ち組になったのだ。


「ずっと、一緒にいような、ラン!」

「はい、嬉しいですぅ」


 勝ち組だぞ。

 うわははは!

 はっははははー!

 はははははー!


 あれ、はははははー!


 それから、俺は一晩中笑い転げていた。

 ランは一切れだけ混ざった『ワライタケ』を見逃していたのだった。


 その後、キノコは自分たちで採りに行かずに、専門家から買うことが、邸では義務づけられた。


 ランの優勝は取り消され、神の味噌汁は、幻となった。




 おしまい。




 ※本作品は、本編との直接の関係はありません。

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