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炭持て渡るも
清少納言さんの家になんて、行ける訳が無いじゃない。私がそう思うのを知っていて、……私にそう思わせる為に? 清少納言さんは優しく接してくれているのに、わざと私自身に罪の意識を感じさせようとしているのではないか、なんて疑ってしまっていた。私は本当に最低である。
「いいえ。どうせ私は、直接、彼に手渡しする事など出来ませんから。もう私では、清少納言さんと同じ舞台に立つ事も、出来ません。ライバルだなんて言えない、天と地ほども、離れてしまいました。だから、清少納言さんは、私と一緒にいても何のメリットも得られませんよ?」
どうして、そんなにもまっすぐな瞳で私を見られるの? こんな私に、あなたは何も思わないの? それとも、何を思う事も出来ないほどに、完全に呆れてしまっているのだろうか。ねえ、清少納言さん。どうして、あなたは優しいの? 会話をするまでは、嫌いな人だったのに……優しさなんて欠片も持っていないと、思っていたのに。私の周りにいてくれる、私の大切な人は、皆とても優しかった。私を突き放さずに、笑ってくれるから。