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EP 27

査察報告書『不可侵の魔境、ポポロ村』

ポポロ屋で「特製・生姜焼き定食(白米特盛り)」を涙ながらに平らげたユリウスは、憑き物が落ちたような清々しい顔でルナミス帝国の帝都へと帰還した。

数日後。ルナミス帝国・財務省の最高会議室。

居並ぶ大臣や上層部を前に、特別査察官ユリウスは、分厚い『ポポロ村・査察報告書』を机に叩きつけた。

「ユリウス査察官。ご苦労だった。……して、あの怪しい田舎村の不正の証拠は掴めたのか?」

財務大臣が重々しく口を開く。

「はい、大臣。結論から申し上げます」

ユリウスは、セロハンテープで補修された銀縁メガネをクイッと押し上げ、かつてないほど真剣な眼差しで言い放った。

「あそこは、帝国の法律など一切通用しない『神と魔物が住まう不可侵の魔境』です。絶対に、手を出してはなりません」

「……は?」

会議室の空気が凍りついた。

「どういうことだ、ユリウス君! 君は帝国一のエリート査察官だろう! 田舎村一つに恐れをなしたというのか!?」

「恐れなどではありません。これは『国家の存亡』に関わる事実です!」

ユリウスは報告書をパラリと開き、熱弁を振るい始めた。

「まず、村の資金源について。彼らは不正などしていません。庭先で**『純金100キロを大根の漬物石』**として使用するほどの、次元の違う経済観念を持っています。我々が金貨数枚の脱税を疑うこと自体が、神々に対する冒涜なのです!」

「純金100キロの漬物石……!? 君、疲れているんじゃないのか!?」

「さらに、村の自警団について! 彼らは挨拶代わりに『本物の隕石メテオ』を降らせ、狼男が暴れ回る環境で日常を送っています! そして極めつけは村長である月兎族の少女! 彼女は満月の夜、『対象の骨を粉砕しながら全回復させる』という無限の生死のループを対象に強制し、物理と精神の限界を試す『神の試練』を与えてくるのです!」

ユリウスの脳内では、リアンの映画撮影やキャルルのヤキ入れが、全て「高次な存在の儀式」へと都合よく書き換えられていた。

「では、親善大使のリーザ王女は無事なのか!? まさか捕らえられているのでは……」

「とんでもありません! リーザ殿下は、自ら泥にまみれ、サバ缶と雑草(オーガニック食材)を主食とし、神々の試練(メソッド演技)に身を投じておられます! その崇高な姿……私は涙を禁じ得ませんでした!!」

ユリウスは両手を広げ、天を仰いだ。

「大臣! あの村を帝国法で裁こうなどとすれば、翌日には帝都の空から隕石が降り注ぎ、無限全回復の刑に処されるでしょう! あそこは手出し無用! ただし! 定食屋の飯だけは三ツ星を超える神の味です!!」

「…………」

会議室は、完全なる沈黙に包まれた。

エリート中のエリートであったユリウスが、ボロボロの軍服姿で、真顔で「純金の漬物石」「無限全回復ループ」「サバ缶と雑草の修行」を熱弁している。

(……アカン。エースが完全に『壊れて』帰ってきよった……)

大臣は冷や汗を流し、ユリウスの狂気に満ちた目を見て悟った。

あそこには、超絶優秀な査察官の精神をたった数日で崩壊させる『何か(ヤバいもの)』があるのだと。

「わ、わかった! ユリウス君の報告を全面的に支持する! 直ちに皇帝陛下に進言し、ポポロ村をルナミス帝国法から除外する**『完全独立特区』**として認定しよう! これでいいな!?」

「はい! 賢明なご判断に感謝いたします!!」

ユリウスは満足げに深々と頭を下げた。(ベンチの相談屋様……あなたのアドバイスのおかげで、私は国を救うことができました!)と心の中で感謝しながら。

◇ ◇ ◇

数日後。ポポロ村の村長宅。

ポストに届いた帝国からの分厚い公式文書を開封したキャルルは、ウサギ耳を傾けて首を傾げていた。

「……ねぇ、リアン君。帝国から『ポポロ村を完全独立特区として認定し、一切の干渉を行わない』って通知が来たんだけど……。ウチら、なんかしたっけ?」

「さぁな。あのメガネのお役人、生姜焼きを食って泣きながら帰ってったからな。飯が美味すぎて頭がおかしくなったんだろ」

リアンはフライパンを振りながら、鼻で笑った。

こうして、ポポロ村は帝国からの監査や干渉を一切受けない「完全なる治外法権の魔境」としての地位を、合法的かつ奇跡的な勘違いによって確立したのである。

「やったぁ! これでママに怒られないで映画の続きが撮れるわね!」

無邪気に喜ぶリーザの言葉に、ポポロ屋の面々は一瞬凍りついた。

そうだ。彼らにはまだ、海神リヴァイアサンに提出するための**『大作映画の完成品』**を作るという、最大のミッション(地獄)が残されていたのである。

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