表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/95

EP 3

「カチコミの邪神と、悲しきアルマーニ」

平和なポポロ村の入り口。

そこに、場違いなほどビシッと決めた男が立っていた。

最高級のアルマーニのスリーピーススーツ。オールバックに撫で付けた髪。そして、周囲の空気を歪めるほどの尋常ではない魔力(ただし本人は極道のオーラだと思っている)。

「おぅおぅ! てめぇら! 調子に乗んなよ!」

邪神デュアダロスが、任侠映画で100回は練習したであろう「完璧なカチコミの第一声」を村中に響き渡らせた。

しかし、そこに立ちはだかったのは、勇者でも神の軍勢でもなく、ただの(バカな)竜人だった。

「あぁ~ん? 誰だおっさん?」

畑仕事の途中で通りかかったイグニスが、首にタオルを巻いたまま怪訝な顔で鼻をほじった。

「……おっさんだと?」

デュアダロスはピキリと青筋を立てた。

「竜人族の小僧か。ワシを誰と心得る! かつて世界を二分し、神々すら恐れた最恐の存在……邪神デュアダロスよ!」

バァァァン!!

背後に幻影の黒龍が浮かび上がる(ような気がするほどの気迫)。

普通の人間なら、この名を聞いただけで泡を吹いて気絶するはずだ。

だが、ここは魔境ポポロ村である。

「なんだ、その設定は……」

イグニスはドン引きしたような目を向けた。

「中学生かよ。顔はいい歳したおっさんなのに、痛ぇなぁ。『世界を二分した邪神』とか、自分で言ってて恥ずかしくねぇのか?」

「な、何だとォ!? このガキィ!」

極道(邪神)のプライドを「厨二病」という言葉でへし折られ、デュアダロスはブチギレた。

「ワレェ! その腐った性根、ワシが直々に叩き直したるわ!! ウオォォォォ!!」

デュアダロスが本来の姿(邪龍形態)へと移行しようと、全身の筋肉を膨張させ、魔力を解放し始めた――その瞬間。

ビリッ……。

嫌な音が、彼の肩口から響いた。

「ハッ!?」

デュアダロスはハッと我に返った。

彼の肉体が膨張したことで、奮発してネット通販(ルチアナのアカウントを勝手に使用)で買った『特注のアルマーニのスーツ』がパッツンパッツンになり、限界の悲鳴を上げていたのだ。

「くぅ……!! ワシが本気を出すと、せっかくのアルマーニが破れちまう……!!」

デュアダロスは慌てて魔力を引っ込め、スーツのシワを必死に伸ばした。

世界を滅ぼすことよりも、イタリアの高級仕立て服(約50万円)の安全を優先してしまったのだ。

「どうした? イグニス。えらい騒がしいのう」

そこへ、騒ぎを聞きつけたニャングルが、算盤を片手にやってきた。

「あぁ、ニャングル。ポポロ村によ、変な奴が来たんだよ。俺に『俺は勇者だ!』って絡んできた奴より酷い。重度の厨二病のおっさんだぜ」

「なんやて? また面倒なのが来よったんか」

「ワ、ワシは厨二病ではない! 邪神じゃ! 極道じゃ!」

必死に弁明するデュアダロスだが、スーツの破れを気にしてもじもじしている姿は、どう見ても「ちょっとヤバい人」だった。

そこへ、村長のキャルルがトテトテと歩み寄ってきた。

彼女はデュアダロスの顔をじっと見つめると、全てを察したような「慈愛に満ちた(哀れむような)目」になった。

「まぁまぁ……。遠いところから来て、疲れちゃったんですよね。何か飲みます? 温かいお茶でも飲んで、落ち着いたらマシになるかと……」

「マシになるって言うな! ワシはボケておらんわ!」

完全に「迷子の痛いおじさん」扱いである。

最強の邪神としての威厳は、ポポロ村の土(舗装済み)に地に落ちた。

「ぐぬぬぬ……!!」

デュアダロスはギリギリと歯を食いしばった。

しかし、彼の「葉巻が吸いたい」「ワインが飲みたい」「美味いチーズが食いたい」という本来の目的(欲求)が、キャルルの「何か飲みます?」という言葉に激しく反応していた。

(……ええい、背に腹は代えられん! まずは腹ごしらえじゃ!)

「お、おう……。じゃあ、ワインとチーズを頼むわ」

「はいはい、ポポロ屋にご案内しますね~」

こうして、カチコミに来たはずのインテリヤクザ邪神は、キャルルに手を引かれるようにして、リアンの待つ定食屋へと連行されていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ