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EP 2

「最終ダンジョン(組長室)と、哀しき一人芝居」

薄暗い地下空間。

かつて勇者たちを絶望させた「封印の間」は、今や完全に『極道の事務所』へとリフォームされていた。

黒い本革の高級ソファ、マホガニーの重厚なデスク、そして無駄にデカい観葉植物。

その部屋の奥で、液晶テレビの明かりだけがチカチカと点滅している。

画面に映っているのは、ルチアナが適当に置いていったDVDボックス。

異世界のヤクザ映画、『極道人魚マーメイドシリーズ ~広島死闘篇~』である。

『叔父貴ィィィッ!!』

『オドレ! ワレェ! よくも親父を!』

パァンッ!!

テレビから響く銃撃音と怒号。

その画面の前で、スリーピースの高級スーツをビシッと着こなした超絶イケメン――邪神デュアダロスが、革張りの組長椅子に深く腰掛け、足を組んでいた。

「……えぇなぁ。ワシも娑婆しゃばに出たいのう」

デュアダロスは、手元にない架空の盃を傾ける仕草をしながら、渋い低音ボイスで呟いた。

次の瞬間。

スッ。

デュアダロスは猛スピードで組長椅子から立ち上がり、デスクの前に(前座の位置へ)小走りで移動した。

そして、姿勢を正し、先ほどの「渋い組長」に向かって深々とお辞儀をする。

「そうっすね! 親分! ルチアナの野郎に一泡吹かせましょうぜ!」

チンピラ風の少し高い声を出して、見えない親分(数秒前の自分)に同意する。

そしてまた、スッと高速で組長椅子に戻り、足を組んで葉巻(これも架空)を吹かす真似をした。

「おうよ。ワシをこんな目に遭わせたあいつに、落とし前をつけさせたる……」

ドスを効かせて言い放ち、再びデスクの前へダッシュ。

「さすが! 親分! 一生ついていきやすぜ!! ……って」

「何で俺は、一人でこんな事しないといけないんだァァァ!!!」

デュアダロスは、ついに限界を迎えて頭を抱えた。

インテリヤクザの完璧なポーカーフェイスが崩れ、顔を真っ赤にして地団駄を踏む。

「空しすぎるだろ! なんだこの一人芝居! 俺は邪神だぞ!? 世界を滅ぼす存在だぞ!?」

彼は八つ当たり気味に、指をパチンと鳴らした。

パァンッ!

空間が歪み、ダンジョンの壁の一部が塵となって消滅する。圧倒的な力だ。だが、虚しさは消えない。

「フレアの奴、最近全然来ねぇし! 俺の楽しみにしてた『コンビニ弁当』も、『缶ビール』も、『焼きチーズ』も持って来ねぇ!!」

デュアダロスはテレビ画面を指差した。

「ヤクザ映画なんて、もう擦り切れるほど見たわ! セリフも全部暗記したわ! 続編持ってこいよルチアナ! なんだよ『極道人魚』って! 人魚がチャカ撃つってどういう状況だよ!」

ゼーハーと肩で息をしながら、デュアダロスは胸元に手を入れた。

魔力で生成された、冷たい鋼鉄の感触。旧ソ連製のトカレフTT-33だ。

「……もう我慢の限界だ」

デュアダロスはトカレフを懐にしまい、組長室のデスクを蹴り飛ばした。

「ルチアナも、デュークも、フェンリルも……俺だけ地下に放置して、地上で好き勝手やってるらしいじゃねぇか。舐めやがって。……こっちからカチコミじゃあ!!」

最強にして最恐のインテリヤクザ邪神が、ついに「慰問の品(チーズと酒)の催促」と「身内への落とし前」のために、重い腰を上げた。

目指すは、忌々しい神々の気配が集中している場所――ポポロ村である。

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