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18・最終話

 ヴィトが去った後、しばらくトミーはイスに座って物思いに沈んでいた。そこへチコとアーニーがやってきた。

「ボス、ジェーンは安定剤を飲ませたから大丈夫、落ち着くよ」

「心配ない、大丈夫。…で、どうする?」

 二人は今後のことを気にしているのだった。トミーもすぐに察して快活に答える。

「あぁ! 戦争だ、決まってる! ソーサなんて朝飯前だろ? 八つ裂きにしてやる」

 また麻薬を鼻から吸っているトミーに、チコは思わず

「…やりすぎだろ」とつぶやいたが、トミーは一瞥(いちべつ)しただけだ。チコは何か言いたげだったが、結局何も言葉に出来なかった。

「…家の警備を見てまわろう」

 アーニーに声をかけると連れだって出て行ってしまった。トミーは誰もいなくなった部屋でソファーに座りこむ。ソーサとの戦争に備えなければならないが、何故か頭も体も上手く動かない。一刻も早く手を打たなきゃならないのに、何から始めるべきか命令すべきかまとまらない…。

 隣の部屋には敷地内の全監視カメラの映像モニターがある。今、そのモニターのあちこちに不審なモノが映されていた。いつもはチェックを怠らないのに、この時トミーは完全に忘れていた。

 やがて、ふらりとバルコニーに出ると夜風にあたる。

「見てろ…皆、あの世へ送ってやる。一人残らずぶっ殺す」

 ようやく冷えてきた頭で決意を新たにする。ふと机を見ると、麻薬や酒が散らかったままなのが目に入る。片付けようとボトルをしまい、グラスを流しに持っていこうとして、同じ光景を思い出す。マーティ……いつも側にいてなにかと細々と世話を焼く、優しくて陽気な男だった。

「…なんで俺はお前を…」

 トミーはまた力なくイスに座りこんでしまう。いくら後悔しても、もう元にはもどらない…

 

 屋敷の外では、殺し屋達が次々に侵入していた。警備についていたアーニー達をピアノ線で絞殺し、非常事態を知らせる間も与えず殺害していく。そして、ついに屋敷に侵入するためのロープがトミーの部屋のバルコニーに投げ入れられた。

 だが、トミーはまだ気付かぬままだった。

 

「…兄さん」

 イスに座ったまま放心していたトミーに、不意にジェーンの声が呼びかける。見ると、妹のジェーンが寝巻き姿で入口に立っていた。顔色が悪く、体調もよくないはずなのにと心配になる。

「…ジェーン」

「ねぇ、どうして?」

 唐突に問いかけられて、トミーは戸惑う。

「どうして? …なぜなの? 兄さん」

 ジェーンが問いかけながら、一歩一歩トミーに近づく。まるで答えを詰め寄るかのように。

「何の話だ?」

「わかってるくせに…」

 ダンッ!

 ジェーンの拳銃がトミーを撃つ。しかし、弾は外れて横の柱に当たった。驚きのあまり動けないトミーを、さらに狙い撃つ。

 ダンッ! 今度は机に当たる。

「…兄さん、私を見て」

「…ジェーン」

 ダンッ! 弾はトミーの左ひざに当たり、痛みに倒れこんでしまう。動けないトミーを見て、ジェーンはうっすらと笑って近づいてくる。とどめを刺そうとした、その時

 ドドドドドドッ!

 バルコニーから侵入した殺し屋がUZIを発砲し、ジェーンは蜂の巣になって死んでしまった。殺し屋の死角にいたトミーは、即飛びかかってマシンガンを奪い射殺。

「死にやがれ!」

 バルコニーから下の池に落ちた殺し屋の死体に向けて、さらに発砲し続けた。

 銃撃音を聞いていち早くニックが駆け込んできて、殺し屋達も合図を送り集まって来る。

「もうダメだ、逃げてください!」

 絶体絶命の状況を見て、ニックがバルコニーにいるトミーに大声で叫んだ。その言葉で我に返ったトミーは、急いで監視モニターの横の武器庫に向かう。ふと見ると床に血まみれで死んでいる妹…

「…ジェーン」

 しゃがみこんで、そっと顔を撫でる。

「なんてことだ…こんなに汚れて…。ジェーン…お願いだ口をきいてくれ。俺が悪かった、謝るよ…ジェーン。俺もマーティを愛していた、唯一無二の存在だった。ジェーン、愛してるよ…」

 涙に暮れているトミーだったが、ついに殺し屋達が集まってきた。必死でニックが拳銃で応戦するが、ソーサの右腕のサングラスをした殺し屋に背後からショットガンで撃ち殺されてしまう。ロープを伝って侵入を試みる者、正面玄関から突破を試みる者、刻一刻と状況は悪化していく。

 チコは部下達と応戦していたが、多勢に無勢でどんどん仲間達が殺されていくのを見て、隙を見てトミーの元へと走った。ようやく部屋に着くとドアには鍵がかけられていて、トミーの安否も知り得なかった。

「トミー! 開けろ! トミー、囲まれたぞ!」

 トミーは妹の死が受け入れられず放心状態だった。ドアの外でチコが必死で叫び叩いているのも、まったく気付いていなかった。

 ダガガガガガガッ! 激しいマシンガンの音が響く。

 トミーはとっさに動かぬ妹を抱きかばい、監視モニターを見る。そこには、ドアの外で血まみれで横たわるチコの死体が映されていた。マシンガンを持つ殺し屋の姿も映っている。

 ようやくトミーは現実を理解した。妹をもう一度いとおしげに抱きしめてそっと床に横たえると、武器庫からM16A1グレネードランチャーを取り出した。トミーが改造を加えたM16は通常の何倍もパワーアップさせている。

「かかってこい! ソーサ!」

 殺し屋達は階段に向かってどんどんやって来る。

「殺ってやる、ゴキブリめ……よし、ハデにいくぜ!」

 その様子を監視モニターで見ながら、トミーもマガジンを装填し、ありったけのマガジンをスーツのポケットに入れる。

「これが、あいさつだ!」

 グレネードランチャーでドアごと殺し屋どもを吹っ飛ばす。さらに生きている奴らに向かって発砲しまくる。

 ドドドドドドッ! ドドドドドドッ! ドドドドドドッ!

「ざまぁみやがれ、ウジ虫め!」

 部屋を出て死体だらけの廊下を走り抜け、大理石の玄関ホールに出る。左階段から上ってくる奴らに向かってM16を発砲し皆殺しにするが、右階段にいた殺し屋に左肩を撃たれた。

「ぅああ!」

 振り向き様にそいつを狙い撃ち、隣の奴も撃ち殺す。トミーは麻薬の過剰摂取で痛みを感じない体になってしまっていた。素早くマガジンを入れ替え、ホールへと向かってくる殺し屋達をグレネードランチャーで吹っ飛ばす。

 しかし、数に任せた激しい銃撃戦は延々と続き、ついにトミーは右肩も撃たれて倒れる。それでも、死体を盾にして銃弾から身を守り、マガジンを入れ替え、グレネード弾を入れ替えて反撃のタイミングを待つ。

 一瞬攻撃が止まったのをみて、グレネード弾を玄関に発射して奴らを吹っ飛ばし、M16を撃ちまくる。

 ドドドドドドッ! ドドドドドドッ!

「くたばれ! ざまぁみやがれ!」

 叫びながら発砲するトミーの後ろから、サングラスの殺し屋がひたひたと近づいていた。

 ドキュン!

 殺し屋に撃たれてトミーは武器を落とした。続けて数発撃たれるが、完全にトリップ状態のトミーには痛みも恐怖も何も感じない。

「俺はトミー・モンタナだ! 俺は死なない! 撃ちやがれ!」

 身体中血まみれで叫ぶ。しかし、何故か誰も撃ってこない。

「どうした! くそ野郎!」

 サングラスの殺し屋がショットガンでとどめをさす。

「がああぁぁ…」

 トミーの体は手すりを乗り越え、そのまま下の噴水へと落ちてしまう。トミーの死体が浮かぶ噴水には「THE WORLD IS YOURES~世界は君のもの~」と書かれた地球儀が飾られていた。

 トミーの死を確認すると、殺し屋は去っていった。

  

 後日、トミーの葬式が執り行われ、トミーを恨んだソーサや幹部なども来ていた。そんな中にヴィトも来ていて、葬儀後の酒の席で生き残った幹部連中がこんな話をする。

「はぁ…これでやっとマイアミも平和になった」

「ああ、ろくでなしが死んでせいせいした」

 黙って酒を飲んでいたヴィトだったが、去り際にダンッ! とグラスを机に叩きつけて葬儀場を後にした。

 

 こうして、また若い命が燃え尽き、戦いの火種は尽きることなく燃え続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

読んでいただきありがとうございました。

第4章は5月頃予定です。

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