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ふたご銀河の物語(改訂版)  作者: 日向 沙理阿
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ヘイダール伯爵の帰還 29

 リドス連邦王国の首都ガンダルにある高級ホテルにダウンルード国の大使とプレセル大陸連盟の議長であるプレセル大陸の大国コモール国の大使がやって来た。

 今回の両大使の訪問は非公式なものであるが、両大使とも護衛として武官を連れて来た。


 ホテルの広間に案内された彼らは部屋の中を一瞥すると、置かれているソファーに大使は座った。

 その後ろにそれぞれの武官が立った。



「本人が出て来るでしょうか?」

と、ダウンルード国の大使が言った。


「さあ、どうでしょうかな。いずれにしろ、この問題は重大なので、早急に何とかしなければ、連盟の結束に傷がつくことになるでしょう」



 確かにこのままではソラン公国と連盟との交渉にも影響するだろうと、ダウンルード国の大使は思った。

 それでなくともソラン公国との交渉は難題なのだ。

 ソラン公国との紛争は相手がたった一国であるのに、プレセル大陸の諸国連盟は頭を抱えていた。


 なぜかと言うと、この紛争はソラン公国に有利なのだ。

 それは科学技術において、ソラン公国がプレセル諸国連盟よりも何歩も進んでいるからだ。

 プレセル諸国連盟が交渉において有利に運ぶ材料はほとんどない。

 下手をすると諸国連盟が負ける可能性が高い。


 そうしたことに諸国連盟の大国であるコモール国はあまりにも疎いのではないかとダウンルードの大使は思った。

 このリドス連邦王国は科学技術においては他国よりも遅れている感があるが、魔法については優れていた。

 宇宙空間でも可能な魔法を使えるのだ。


 先日、中央山脈で見た光景はリドス連邦王国においては宇宙空間でも魔法を使うことができると言うことがわかったのだ。

 そのようなことはこれまで知られていなかっただけではなく、可能と思われていなかったのだ。


 それが分かったのは、その時コモール国の艦が珍しく魔法使いを載せていたためだった。

 普段は魔法使いを載せることはないのだが、場所がガンダルフの人跡未踏の山脈と言うことで、偶々艦長が連れて行ったのだ。


 その山脈で見られた光景はまさに驚くべきものだった。

 竜と言うものがいるということが伝説としか思われていなかったのに、その竜が多数発見されたのである。

 しかも、始めはソラン公国の艦がその竜を攻撃していた。

 おそらく捕獲しようとしていたのだろうと思われる。


 そこへ、突然現れたのが魔法使いと思われる者達だった。

 魔法使い達は竜を連れてきていた。

 その竜はソラン公国が山脈で竜たちを攻撃した時に、どこかへ飛び去った竜であった。

 それがリドス連邦王国だったのだ。

 そのくらいのことはプレセル大陸諸国連盟でも衛星を使ったレーダーで分かる。


 ただ彼らは艦に乗って来たのではなかった。

 何もない空中に忽然と現れたのである。


 それをコモール国の艦に乗っていた魔法使いが彼らはリドス連邦王国の魔法使いではないかと言ったのだ。

 調べてみると忽然と現れた者たちの中に、プレセル諸国連盟に軍人だったと言う者がいたのだ。



 しかも、その者は魔法も使うらしい。

 彼らが現れてから、山脈にいたソラン公国の艦や竜たちが次々とどこかへ消えて行ったのだ。

 魔法使いの言うには、それはおそらく転移魔法だと言うのだ。


 コモール国では転移魔法というのは聞いたことがなかった。

 それで魔法使いに聞いてみると、それは大昔に使われていたが今では使える魔法使いはいないと言う。

 転移魔法は扱いが難しいし、かなりの魔力がないと使えないのだと言う。

 だが、リドス連邦王国の魔法使いは確かに使ったのだ。


 その上、転移魔法はどうやら宇宙空間でも使えるような魔法のようだった。

 それが分かった今、リドス連邦王国をプレセル大陸諸国連盟が失うことはかなりの打撃となる。

 その点についてコモールの大使がどれだけわかっているのか、ダウンルードの大使は不安だった。








 しばらくして扉が開くと、三人ほど部屋に入って来た。

 一人は女性でおそらく今回の件の中心人物だろうと思われた。

 他の二人は見たこともない男性である。



 アルネ達はコモドール国とダウンロード国の大使と武官を見ていた。

 武官は軍人で、魔法使いではなかった。

 とすると、彼らはアルネが魔法使いであると気づいてはいないかもしれないと思った。



「私はリドス連邦王国の第十一王女アルネ・ユウキです」

と、その女性は言った。


「あなたがリドス連邦王国の王女?一体それはどういうことなのでしょうか?」

と、ダウンルードの大使が驚いて言った。



 ダウンルードの大使にとってそれは初めて聞く話だった。

 ダウンルードから諸国連盟軍に入った者がリドス連邦王国にいるらしいと言う情報が入った。

 行方不明者の中でその可能性がある者を選別した時は、アルネ・ブルムと言う中尉だろうと言うことはわかった。

 だが、それが王女であると言う情報はなかったのだ。



「それは本当のことなのだろうか?」

と、他の二人の男性に向けてダウンルードの大使は言った。



「本当のことだ」

「だが、リドスの王女は確か6人だと聞いている。その中にアルネと言う名はない。おかしいではないか……」

と、コモール国の大使が言った。



 リドス連邦王国の王女は六人であり、その名はは当然大使なら知っている。

 その王女の名の中にアルネ・ユウキと言う名はなかった。



「なるほど、これまでは確かに6人だった。だが、増えたのだ」

「増えた?女王陛下が生んで行方不明になっていた王女を見つけたとでもいうのか?」

「それは違う。お前たちはリドス連邦王国のことは良く知らないのだろうが、200年前、リドス連邦王国が建国された時、ガンダルフの五大魔法使いが生まれてきた場合、その中のエルレーンのエリンを王の養女に迎えるという法律が作られた。それを執行しただけのことだ」

「な、何だと?」



 ダウンルードとコモールの大使は驚いた。

 そんな話など二人は聞いたことがない。


 但し、リドス連邦王国の者であっても、その話は知らない者が多い。

 二百年前に作られた法律など、覚えているものなどほとんどいないのが当然だった。

 惑星ガンダルフの人間族はおよそ長くて百歳が寿命と言われているのだ。

 二百年前のことなど詳しく知る者はいない。



「だ、だが、アルネ・ブルム中尉がガンダルフの五大魔法使いの一人エルレーンのエリンだと言う証拠は?」

「なるほど、証拠を見たいと言うのは理解できる。エリン、どうする?」

と、レギオンが呼びかけた。


「何を見せれば信じると言うのかしら?」

「ガンダルフの魔法使いなのだから、魔法を見せればいいのではないか?」

と、ヘイダール伯爵が言った。



「そ、そうだ。その魔法とやらを見せて欲しい」

「で、私の魔法を見せてエルレーンのエリンだと言うことがわかったら、あなた方の政府や諸国連盟はアルネ・ブルムの追及を止めるのかしら?」

「それは……」



 ここで両国の大使の二人がエルレーンのエリンの魔法を見て信じたとしても、それぞれの政府を納得させることができるかはわからなかった。

 魔法そのものは信じるとしても、ガンダルフの魔法使いの伝説はただの伝説としてしか考えられていないのが大半なのだ。







 王城の下部にあるリドス連邦王国の艦隊基地では未知の飛行物体が近づいてくるのを探知した。



「何か近づいてきます」

「スクリーンに映るか?」

「今出ます」



 基地の司令室のスクリーンに未知の飛行物体が映じた。



「こ、これは……」



 それはプレセル諸国連盟の機動兵器を載せた母艦だった。



「あの艦に向けて誰何と警告を……」

「どこの所属の艦か!言わなければ攻撃する!」



「こちらはプレセル諸国連盟の艦だ。プレセル諸国連盟はリドス連邦王国に対して宣戦を布告する!」

「それは、プレセル諸国連盟の一致した意志なのか?」

「そうだ」

「なぜだ?我々が何をしたと言うのか?」

「我々の軍から逃亡した士官を匿った罪だ!」

「何だと!それは、現在ダウンルードとコモールの大使が来て、調査中だと聞いている」

「逃亡した士官を匿ったと言うことは、我々に対する敵対行為だ。現在ソラン公国との戦争中なのだ。そのような行為を見過ごすことはできない」

「しかし、諸国連盟の議会が開かれたと言う話は聞いてはいない」

「今は戦時中だ。緊急会議が開かれたのだ」

「そんな話は聞いていない」

「敵対するお前たちを呼ぶわけがないではないか」

「何だと……」



 レーダーにはプレセル諸国連盟の機動兵器の母艦の数が十隻に増えていた。

 加えて、海には諸国連盟の艦隊が近づいてきていた。



「どうします?」

と、王城の基地副司令官が聞いた。


「今、王女方は不在だ。だから、この基地だけで戦わなければならない」

「確か、女王陛下は戻って来ているのでは?」

「今、議会に出ておられるはずだ」

「女王陛下や王女方の帰城を急がせよう」

「しかし、我々が全力で当たれば、プレセル諸国連盟の艦隊など敵ではないのでは?」

「総力を挙げて当たればな。だが、我々の真の実力を知られてもいいのか……」



 リドス連邦王国の科学技術がどれほどのものか、知られてもいいかどうかは王城の基地司令官では判断がつかなかった。



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