遥ちゃんの失敗
「そろそろ時間かな?」
時計を見ると9時を少し回った所だ。
歯を磨き、身だしなみをチェックして問題無いことを確認。
少し早いが、人を待たせるのが好きでは無いので、さっさと行くことにした。
「じゃあ行こうか。」
「ん? 9時半じゃなかったのか? まだ15分も前だぞ?」
「遥ちゃんが来てるかもしれないし、待たせるのもちょっとね。」
「わかった、なら行こうか。彩音も良いか?」
「そうね、行きましょうか。」
マンションの入り口に行くと、言い争っている男女が居た。
…って、あれは遥ちゃん?
「しつこい! これから用事が有るって言ってるでしょ!」
「女の子を待たせる男なんてロクなもんじゃない。そんな男より俺と行こうぜ!」
「だ~か~ら~! 違うって言ってるじゃんか!! 話を聞けよ!!」
どうやら遥ちゃんはナンパに捕まっていたらしい。
私は遥ちゃんを助けるために前に出ようと…ぐぃ!
「え?」
「ここは私に任せなさい。」
「お父さん?」
どうやら私を止めたのはお父さんだったみたいだ。
「そうよ、明日香ちゃんが行ったら火に油を注ぐことになるわよ?」
「…わかりました。お父さんお願いします!」
お父さんにお願いすると、お父さんは右手を上げて合図をして遥ちゃんの所に向かって行った。
「ちょっと良いかな?」
「なんだよ! 関係ない奴はすっこんでろ!!」
「関係は有るかな。ここは私の家の前だ。
それにその子は娘の友達でね、今から一緒に出掛けるところなんだ。」
「うそっ…綾小路グループの会長さん!?」
遥ちゃんがお父さんを見て驚いていた。
まぁ、お父さんは有名な人だからね、顔位知っていても不思議じゃない。
「げっ! お、俺…いえ、私は…し、失礼しましたぁ~!!」
男はお父さんの顔を見た瞬間青ざめて、逃げて行った。
もしかして下請けの社員とかだったのかもしれない。
とりあえず大丈夫みたいなので、私は声を掛けることにした。
「遥ちゃん! 大丈夫?」
「明日香ちゃん! うん、大丈夫。
あ、あの、助けて頂きありがとうございました。」
「なに、大したことはしてないさ。
それにしても、先ほどの会話からすると随分と待っていたように聞こえたんだが、どのくらい待っていたんだい?」
「あ、え、えっと、その…8時半からです…」
「えぇ! 遥ちゃん1時間近くも待っていたの!?
声掛けてくれたら良かったのにぃ~!!」
「私が早く来すぎただけだし、明日香ちゃんに迷惑掛けたくなかったから…」
「それでナンパに声掛けられたら意味無いでしょ?」
「ごもっともです。」
そりゃ遥ちゃんみたいな可愛い子が1時間も近く待って居たら声も掛けられると思う。
遥ちゃんを見てそう思ったんだが、何か違和感と言うか何かが引っかかるな…あっ!
「あれ? 遥ちゃん私服?」
「えっ?」
遥ちゃんが私の恰好を見て気が付いたみたいだ。
「あれ? 制服で行くんだっけ?」
「服装の説明はされてなかったけど、雑誌のコーナーを見ると、みんな制服だったから着たんだけど、どうなんだろう?」
「あっ…」
どうやら遥ちゃんも思い出したらしい。
「ごめん! 直ぐに戻って着替えて来る!!」
遥ちゃんが焦った顔で踵を返して走り出そうとしたので声を掛けた。
「待って! どうせなら一緒に遥ちゃん家に行こうよ!
ほら、佐藤さんも来てるし、車の方が絶対早いって! ほら乗って!!」
「うん! 明日香ちゃん、ありがとう!」
「遥ちゃんは助手席に乗ってね。」
「うん。」
私達親子は後ろに乗ることにした。
「それではお嬢様、出発致します。」
「佐藤さん、その前に遥ちゃんの家に寄って欲しいのですが、大丈夫ですか?」
「はい、もちろんです。遥様、道案内をお願い出来ますか?」
「は、はい!
えっとこの道を真っすぐ行って…」
・・・・
「ここで待ってて下さい!
直ぐに着替えて来ます!!」
そう言って遥ちゃんがマンションへと入って行った。
私の家から5kmほど離れた場所で、結構近かった。
10分程で遥ちゃんは戻ってきた。早い!
「お、お待たせしました! ぜぇぜぇ!」
「そんなに急がなくて良いのに。大丈夫?」
「な、何とか?」
「ほら、慌てたから髪型崩れてるよ?」
私がカバンからブラシと手鏡を遥ちゃんへと渡してあげた。
「あ、ありがとう。」
遥ちゃんを乗せた車は再び走り出したのだった。




