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寿命365日の最弱ウミウシに転生した元プロゲーマー〜今度こそ世界一位をハメ殺す〜  作者: 神城ラグ
『第二章:深海エリアへの進出と強敵との遭遇、ライバルとの実力差の測定』
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第二十五話 深淵の大口

 深海をネオン紫の軌跡が走る。

 深淵鮫との戦闘から数時間。

 ノアはさらに下層へ潜っていた。

 目的は一つ。

 フウセンウナギ。


 未来フレーム予測が捉えた次の攻略対象だ。

 視界の端にログが表示される。


【Lv68】

【残り寿命:24日】


 赤黒いノイズが静かに揺れる。

 また一日。

 消えた。

 ノアは特に気にしない。

 寿命は資源だ。

 減るのは当然。

 問題は残り日数で何を攻略できるかだった。

 進化後の寿命減少は痛い。


 だがレベルは順調に上がっている。

 このままなら予定通り進められる。

「問題は性能だな」

 ノアは思考する。

 深淵鮫から得た《捕食者の牙》。

 防御貫通。

 悪くないスキルだった。


 だが。

 アインには足りない。

 あのパリィを崩せない。

 もっと嫌らしい能力が必要だった。

 もっと攻略専用の能力が。


 その時。

 未来フレーム予測が反応した。


【高危険度個体を検知】

【前方二千メートル】


「いたか」

 ノアは速度を落とす。

 慎重に進む。


 そして。

 異変に気付いた。

「……生物がいない?」

 周囲を見渡す。

 深海生物はいる。


 だが少ない。

 異常なほど少ない。

 捕食者も。

 獲物も。


 まるで。

 何かに食い尽くされた後のようだった。

 さらに進む。


 すると。

 海底に巨大な骨が転がっていた。

 魚類。

 甲殻類。

 見たこともない深海生物。

 どれも原形を留めていない。

 綺麗に消えている。

「食われたのか」


 だが。

 妙だった。

 傷がない。

 噛み砕かれた形跡もない。


 まるで。

 丸ごと飲み込まれたみたいだった。


 その時。

 海流が揺れる。

 ノアは反射的に振り向いた。

 何もいない。

 暗闇だけ。


 だが。

 未来フレーム予測が警告を鳴らしていた。


【危険】

【危険】

【危険】


 紫色の予測線が乱れる。

 上。

 下。

 左右。

 位置が定まらない。

「なんだ?」


 次の瞬間だった。

 ゴボッ――

 暗闇が開いた。

「……は?」

 ノアの思考が止まる。


 違う。

 暗闇じゃない。

 口だ。

 巨大な口。

 海底の裂け目だと思っていたもの。

 それが全部口だった。


 ズォォォォォォォォッ!!

 猛烈な吸引。

 海流が飲み込まれる。

 岩が吸い込まれる。

 小魚が吸い込まれる。

 全部。

 全部。

 口の中へ消えていく。


「おいおいおい!」


《亜音速航行》


 海が爆ぜる。

 ノアは全力で後退した。

 だが吸引が強い。

 距離が離れない。

 未来フレーム予測が警告を連打する。


【危険】

【危険】

【危険】


 そして。

 ようやく全貌が見えた。

 細長い身体。

 異様なほど巨大な口。

 深海を漂う異形。


【個体名:深淵フウセンウナギ】

【Lv80】


 ノアは思わず笑った。

「デカすぎるだろ」

 深淵鮫とは別ベクトルの化け物だった。

 攻撃してくるわけじゃない。

 追い回してくるわけでもない。


 ただ。

 飲み込む。

 それだけ。

 それだけなのに。

 異常なほど危険だった。


 その時。

 ノアの脳裏に古い記憶が蘇る。

「確か……」

 昔遊んだ生物ゲーム。

 海洋生物図鑑。

 フウセンウナギ。


 確か。

 異常に大きな口で獲物を飲み込む深海魚だった。

「なるほど」

 ノアは目を細めた。

「つまり噛みつくんじゃない」

「飲み込むのか」

 攻撃じゃない。

 捕食。


 だから避けづらい。

 だから厄介。

 だから周囲の生物が消えている。

 理解した。


 だが。

 まだ攻略法は見えない。

 吸い込みの範囲が広すぎる。

 耐久も不明。

 弱点も不明。

 情報が足りない。


 ノアは静かに笑った。

 楽しんでいた。

 この深海という未知な世界を。


「いいな」

 ネオン紫の瞳が細く歪む。

「そういうの嫌いじゃない」

 フウセンウナギが再び口を開く。

 深海そのものが引き寄せられる。


 対するノアは加速した。

 まずは情報収集。

 まずは観察。

 攻略はその後だ。

 紫色の軌跡が深海を駆ける。

 深淵鮫よりも格上。

 レベル80。

 新たなボス戦が幕を開けた。

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